「True Colors」
黄道吉日

黄道吉日 8

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笙が渡米した日、見送りは、お袋さんと要だけだった。
親父さんは仕事で、仲間内には「来なくていい」と遠慮してた。

っつーか、要にしか出発日を教えてなくて、さらに口止めしてたんだよな。


「元気に出発していったよ。みんなによろしくって」


昇平ん家に集合して、晩御飯をご馳走になった時、要から報告があった。

俺たちだけでなく、親父さんとお袋さんまでが、「はぁ?」って、聞き返した。


「笙らしいっちゃ、笙らしいけど...要、呼んだだけ、まだマシか」


昇平が呆れたように言うと、要以外、全員が笑いながら頷いてる。
うん、確かにね。笙らしいよ。


「水くさいわぁ、笙ちゃん。餞別でも渡そう思てたのに」


お袋さんも親父さんも、とても残念がってて。
子どもの頃から、すっごく可愛がってたんだろうなって、わかる気がした。

笙は、オジサンだけじゃなく、オバサンにも可愛がられるんだよ。
ああ見えて、家事が得意で気が回るから、ご馳走になる時は、率先して手伝う。
それも、最後まで、きちんと片付けて帰る。
礼儀正しいし、言葉遣いも綺麗だから、評判が高い。

作ってきたお菓子を持参したり、旅行に行けば土産も欠かさない。
まぁ、それは昇平ん家みたいに、本当に親しい人だけみたいだけど。
あれだけ人気者で、全ての人にそれやってたら、キリがないし。



「あいつのことや、夢中になって勉強しよるやろ。
 楽しなって、向こうに残るとか、言い出すんちゃうか」


昇平が要をからかってるけど、要は余裕の笑顔。


「先のことはわからないからね。笙がそう結論を出したなら、尊重するよ。
 お金貯めて会いに行けばいいし」

「アホ、一年ですぐ帰ってくるわ。その約束で、親父さんもお袋さんも許可してんし。
 あんな食べモンにうるさいヤツが、ずーっと向こうにおれるかいや」


要が大人な発言をして、由人が昇平にツッコんで、さらに言葉を続けた。


「それに、あいつは早う就職して、堂々と昌行さんと会いたいねんって。
 親父さんの定年までの辛抱やって、じっとガマンしてんねんで?」

「いや、そこは、要も理由にしようよ。立場なくない?」


今度は、烈が由人にツッコんで、また笑いが起きる。
当の要まで笑っちゃってるのが、器の大きさだよな。



俺だったら、どうだろう。

たった二週間、烈と離れてるだけで、すっごく淋しくなってたよな。
ほんと、どんだけメンタル弱いんだって、思い知らされたし。


笙に、懇々と、説教されたんだ。

全て、ごもっともって、うなだれるしかなかったよ。




最初、七海さんがゲイやって気づいた時、びっくりしたんですよね。
ゲイやのに、自分のこと、ぜんっぜん、わかってはらへんくって。

普通の男より、ゲイのんが、客観性が高いもんやと思いこんでましたからね。
由人もそうやし、他のゲイの友達も、みんな、そうやったし。

なんでかって、理由は簡単ですやん。
相手を選ぶ時、男って見た目が重要でしょ?
女相手にするノーマルの男と違て、能力や権力は通用せえへん。
せやから、自分が他人からどう見られてるか、めっちゃ敏感になるんですわ。

まぁ、七海さんは、スペック高いから、コンプレックス持つ必要がなかったんでしょうけど。
背ぇも偏差値も高いし、スタイルも顔も、そこそこいいし。
今は、お金にも不自由してはらへんでしょ?


せやからって、自分を客観的に見ることを、忘れてたらあきません。


共感性も低いから、コミュニケーション能力も低いし。
それやと、関西では、生きづらいのは、就活で身に沁みたでしょ?
東京弁喋ってるんだけが、弾かれる理由ちゃいますよ。

日常生活で、ボケツッコミが、当たり前の環境です。
コミュニケーション能力が低いと、ついていかれへんようになる。
学生の時と違て、社会人になれば、嫌いな人間とも仕事せなあかんし。


烈さんかって、ちょっとコミュニケーション能力に難ありでしたけど。
自覚してたし、少しずつ世界広げて、自分なりに修正してはる。
しんどかったと思いますよ。元の性格が性格やし。
めっちゃ努力しはったから、内定、サックリ取れたんやと思いますよ。

そんで、先に取ってもうたからて、七海さんのこと心配して、気ぃ遣てはった。

それだけ大事にされてんのに、八つ当たりするて、マジで呆れてまいましたわ。
どんだけ、精神年齢低いんですか? 




これだけ言われたらさ、もう凹むしかなかったよ。
それでも、俺と烈を心配して言ってくれてるのは、さすがにわかったし。

嫌いなヤツどころか、仲間と認めてないヤツ相手だと、完璧スルーで注意もしない。
傷つけられた仲間のフォローは、一生懸命にやるけどね。

俺は、まだ見たことないけど、敵だとロックオンされたら、酷い目に遭うらしい。
最初に、昇平や由人から聞いた時は、半信半疑だったけどさ。

彩花ちゃんに、高校時代の話を聞いたんだ。


セクハラ体育教師を、笙が友達と計画して、退職まで追い込んだんだって。

こっそり録音や録画をして、ガッチリと証拠を集めた。
学校内だと握りつぶされるから、教育委員会まで訴えた。

笙の行ってた学校は、府立の進学校で、教育委員会にOBが多い。
直接は無理でも、笙を可愛がってる地元のオジサン連中に根回しして、つなぎをつけたらしい。

教育委員会でもなぁなぁにされないように、マスコミにリークするって脅しもした。
最終的に、その教師は、諭旨免職処分は受けなかったけど、依願退職した。
結婚してて子どももいたから、あまり追い詰めるのも良くないって判断したらしい。

でも、同じようなことを転職先でやったら、容赦なくマスコミにバラすって、釘を差したって。


この話聞いた時、心底、驚いたよ。

高校生が、そこまで行動できるもんなの?
っつーか、そんな計画、思いつくか、女子高生で?!

囮役を彩花ちゃんが志願して、放送部から録音や録画の機器を借りてきたり。
笙が指揮して、男子も巻き込んでの、完璧な作戦だったってさ。




「一年かぁ、淋しくなるよね」


マンションで、烈とコーヒー飲んでた。
烈が、しみじみと言う。

俺もそう思うけど、あいつが活き活きと勉強してる姿が浮かんでさ。


「うん、でも、あっという間だと思うよ。
 あいつのことだから、友達たくさん作って、さらにパワーアップするだろうし。
 俺たちも負けてられないよ?
 あいつが帰ってくる頃には、「社会人」って胸張って言えるように、頑張らなきゃ」


あれ、俺、変なこと言った?
烈が、ポカンとしてるんだけど。


「ナナが、そんな前向きなこと言うとは、思ってもみなかった!
 ほんっと、大人になったよね!!」


.........迷惑も心配も、どっさりかけたから、何も言えない。

喜んでくれてるみたいだから、まぁ、いいか。











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