「True Colors」
黄道吉日

黄道吉日 6

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必要書類の提出、誓約書に署名捺印して、控えをもらった。
卒業までの案内も一緒にもらって、マンションで噛み締めて読んだ。

当たり前だけど、単位は取りこぼさないようにしなきゃね。

サークルの先輩にいたもんな。
せっかく、第一希望に一発で内定もらえたのに、四年次必修を落として卒業できなかった。
少しは下駄履かせてもらえるもんなんだけど、その先輩の学科は、すっごく厳しくて有名なとこ。
毎年、何人も留年者が出るんで、みんな気をつけてたのに。
内定取り消し食らって、二回目の就活は苦労してたよな。


もうあんな苦労はしたくない。
次に就活するとしたら、有利な資格を取って、経験積んでからだよな。
できれば、そんなことはない方がいいけど、いくら大手でもリストラされることあるし。


真面目に講義に出て、ゼミレポートも提出して、気がつけば、夏っぽい空気になってた。

そう言えば、もうすぐ笙がアメリカへ行くんだよな。






「笙の壮行会、どうしようか」


笙以外の五人で、俺ん家に集まった時、烈が話を切り出した。
要と昇平が、苦笑いしてる。


「やらなくていいって。かしこまったことされるのが、恥ずかしいらしいよ」

「要が説得しても聞かんのや。餞別は渡そうと思うけどな」



あいつらしくって、つい吹き出す。
他人を祝ったりするのは率先してやるくせに、自分のことになると、照れくさくて嫌がるんだよな。

笑ってる俺たちのことはよそに、烈が、何か考えこんでる。
餞別のことかな?一生懸命に考えてるのが、伝わってくる。



「ノートパソコンはどうかな?デスクトップは持っていけないしさ。
 五人で頭割りしたら、そこまで高くないよ」

「ああ、向こうは、こっちよりインターネット環境も進んでるしな。
 あいつなら使いこなすやろうから、ええんちゃうか。
 要、あいつ、買うとか話してたか?」

「ううん、予算が足りないって、諦めてた。
 俺が買ってあげたかったけど、一人じゃ無理だし。
 懐具合はバレてるから、逆に叱られるしね」


昇平が、ポンと膝を打った。
お前、どんどん、オジサン臭くなるよなぁ。


「それ、ええな。烈、一緒に日本橋行ってくれるか?
 お前が、一番詳しいし、値切るんは、俺に任せとけ」


烈が頷くと、要が感心してる。


「適材適所って、このことだね。
 俺には、どっちも無理だから、羨ましいよ」

「アホか。あんな凄いヤツとつきあえんのは、お前ぐらいやぞ。
 あいつが安心して甘えられるんは、英一さんと昌行さんだけやったのに。
 俺だけやない、周りはみーんな、どれだけ驚いたか」

「んー、俺、普通だよ?話が合うし、しっかりしてても、やっばり女の子だしさ」



どこが普通だよ?

あいつを「やっばり女の子」って言い切れるなんてさ。
お前があいつ以上に器が大きいから、言えるんだってば。
それだけで、充分凄いんだよ、相変わらず、自覚ないよなぁ。


俺が呆れてたら、みんなも同じだったみたいで、軽く笑ってた。
要って、天然かと思ってたけど、細かいとこまで、よく気がつくんだよな。
天然に見えるのは、冷静で動じないからでさ。


笙のスペックにビビらなくて済んでるって、相当だと思う。

要って、変なプライドがないんだよな。
九州出身て割に、男尊女卑なとこがないし。
他の男相手にも、俺が俺がって、マウンティングしようともしない。


誠実で真面目で優しい、でも、それだけじゃない。
頭の回転が早くて、冷静で、人間観察が得意。
そこら辺は、笙とよく似てる。

好奇心が強くて、面白いと思うとどんどん突き詰める。
そんなとこも、笙と似てるよな。

だって、こいつらのデートって、図書館とかなんだよ?!
あとは、タダ券が手に入った時に、博物館や美術館。

それも、自分が好きなように、それぞれで回って、最後に合流。
そして、晩御飯を安い定食屋や、笙ん家で食べて、その日の感想を言い合うんだって。

金はかかってないけど、別に笙が遠慮してるわけでもないらしい。
趣味が一致してるから、ちょうどよかったんだろうな。





あ、そう言えば、SMSのライブはどうだったんだろう。
俺、行けなかったから、感想だけでも聞きたいんだよな。


「すっかり忘れてたけど、今年のSMSはどうだった?」


何の気なしに聞いたのに、要が珍しく動揺してる。
何かあったのかと、烈の顔を見たら、クスクス笑いながら教えてくれた。


「楽屋まで入れてもらったんだよ。
 そしたら、笙がエイチに要を引き合わせて、交際宣言してた!」


烈の話に、頭を掻きながら、要が続く。


「何も言われてなかったから、焦ったけど。
 笙のお兄さんみたいな人だから、きちんと挨拶はしたよ。
 間近に見ると、ほんと似てて驚いたな。見ためや雰囲気がさ。
 最初は、じーっと観察されてる感じしたし、中身も似てるんだよね」


由人が、ニヤニヤしながらも、照れてる要のフォロー?


「英一さんが、めっちゃ嬉しそうにしてはったから、合格ってことやんか。
 笙のことは、ほんまの妹みたいに可愛がってはるからな」



笙の親にも、きちんと挨拶してるし、エイチにも認められた。
要のお母さんにも、笙は気に入られてる。
親戚の用事で、お母さんが大阪に来た時に、一緒に食事したらしい。

二人が、地に足つけて、お互いを尊重して交際してるのが、自分のことみたいに嬉しい。

俺みたいな甘ちゃんと違って、努力してきた二人だから、余計に。



「あ、ライブはね、また進化してた!
 ゴイチは、ギターは元から巧かったけど、ヴォーカルもまた巧くなってたし。
 逆に宗次郎は、ギターやベースが巧くなってた。
 新治のドラムも、パターンが増えて、パーカッションも効果的だった。
 演出も、会場に合わせて、すっごく工夫してて、楽しめたよ」

「英一さんが司令塔やからなぁ。
 あの人、ほんま、凄いとしか言いようがないわ」


烈と由人が、ライブの感想を話してくれた。
新譜のライブアレンジのことになった時、昇平が「あ」と声を上げる。


「壮行会は嫌がってるけど、スタジオで練習なら、やるんちゃうか?
 新譜の曲は、まだ一度も演ってへんやろ?」

「それ、いいかも。しばらくは、一緒にでけへんしな。
 帰ってきてからは、あいつが就活やろ?
 落ち着くまでは、全員揃うん難しいやんか」


昇平の提案に、由人まで乗ってる。

笙がいない間は、由人がキーボードで入ることに、知らないうちに決まってた。
由人は、ギターだけじゃなく、キーボードも巧いんだよ。

社会人になれば、全員揃うのが難しいだろうから、笙と由人が抜けたとこを埋める。
六人揃う時は、要はヴォーカルに専念する。
そういう風に、いつの間にか流れが決まったらしい。

俺は、もちろん大賛成。
最初は参加できなくても、こいつらとは繋がっていたいしさ。

なんだかんだ言って、バンドやるの、楽しいもん。


しみじみ、内定取れてよかったって、一人でこっそり思ってた。

だって、俺だけ参加できないの、淋しいじゃん?











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