「True Colors」
黄道吉日

黄道吉日 4

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電話がかかってきたのが金曜だったから、通知は月曜だろって、暢気に構えてた。
そしたら、翌日の土曜、書留が配達されてきてさ。
インターホンで「は?」とか、間抜けな声出しちゃった。

慌てて印鑑探して、配達員のおにーさんにクスッと笑われて。
照れくさかったけど、あんまり嬉しかったから、「お疲れ様でした!」って大声で頭下げた。


そーっと、ペーパーナイフで封筒を開ける。

中には、Arixの「採用内定通知書」が入ってた。


夢じゃないんだ!

あの電話は幻聴じゃなかった!!


えーっと、やっぱり住民票は必要なんだな。
月曜に取りに行って、そのまんま会社へ行ってしまおうか。
火曜は必修があるから、大学行かなきゃだし。



......もう電話してもいいかな。


誓約書にサインしてからにしようと思ってたけど。

月曜まで誰にも報告できないのって、ジリジリするし。

兄貴と姉貴には、当然、報告するけどさ。
一番に、烈に報告したいんだよ、迷惑かけたおしたんだもん。


文書で通知もらったんだから、いいよね?



まだ寝てるかもしれないし、とりあえず、メールで「電話して」って送ってみた。
内定取れたのは、文字よりも声で伝えたかった。

かかってきたら、何て言おうかって、一生懸命に考える。

まずは、内定取れたよ。

次に、迷惑かけてゴメン。

いなくて淋しかった。

いつ、帰ってくる?

ちゃんと掃除してあるよ。

今まで、協力してくれて、ありがとな。



んー、最低限、これぐらいは言わなきゃいけないよね。
淋しかった、は、おかしいかもしれないけど、ほんとだし。

すぐに帰ってきて欲しいけど、烈にだって都合はあるよな。
バイト入ってるかもだし...昇平いないと荷物運べないだろうし。


出ていった時、俺がいない間に、ベースもパソも運んでったんだ。
烈の部屋見て、その二つがないのに気がついてさ。
すぐには帰ってこないのわかって、すっごく淋しくなったんだよな。




『ナナ、どうしたの?』


メールを送って五分もしないうちに、烈から着信。

声聞いたら、さっきまで、考えてたのが、どっか吹っ飛んで。
俺、あんなにひどいことしたのに、烈の声が心配してくれてて、ありがたくってさ。



「烈、俺ね...」


そこまで言ったら、泣きそうで声が詰まって。
烈が困ってる気配がして、頑張って、なんとか言葉を振り絞った。


「内定、もらえた」



俺、カッコ悪いなぁと思ったら、余計に泣けてきて。

涙声のまんま、しゃくりあげながら、さっき考えたことを言おうとするんだけど。

まともに言葉になってくれないの。


「ック、グスッ、淋し、かった。
 スン、エグッ、ごめん、ね」


幼稚園児かよ、俺。
情けないけど、後から後から、涙が出てきて、鼻水もで、顔がグシャグシャ。


『...よかったね。おめでとう。ほんとに、よかった』


烈が、泣いて喜んでくれてる。
あの烈が、他人のために、涙を流してる。

それも、俺のために!


しばらくは、二人とも泣きっぱなしで、何も話せなかった。

合間に、烈が何度も「よかったね」って言ってくれるのが、嬉しくて、余計に泣けてくるんだ。

それとさ、「俺も淋しかった」って、言ってくれたんだよ。




『淋しいとかって、よくわからない』


そう言ってた烈は、もうどこにもいない。

三年間の大学生活で、俺たちは、お互いに家族になれたんだと思う。
俺にとって、今の家族は、兄貴と姉貴と、烈なんだよな。

カッコつけて、ギブアンドテイクのドライな関係だとか思ってた。

でも、昇平や要、笙に由人。
俺たちより、ずっと大人で器の大きなヤツらと知り合って、自分たちがどれだけ子どもかを思い知った。

人間、一人じゃ生きていけない。
そんな当たり前のことを、あいつらに教えてもらったんだ。




『烈、どないしてん?』


昇平の焦ってる声が、聞こえてきた。
烈が説明しようとしてるけど、泣きすぎたのか、うまくいかないみたい。

携帯を昇平に渡して、「ナナから」って言ってる。


『七海、なんや?なんで烈は泣いてんねん?』

「ごめん、俺、内定もらって、電話して...。
 謝ってるうちに、お互いに泣いちゃった」


そう言うと、昇平が、いきなり大笑い。


『びびらすなよ、オオゴトでも起こったんかと思ったわ。
 まぁ、よかったやないか。んで、どこやねん?』

「Arix。一度落ちてるんだけど、再募集で連絡来た。
 昨日、電話で通知されたけど、幻覚かもしれないと思ってさ。
 でも、今日、書留で文書が来たんだ」

『おお、大逆転やんけ。中小まで回ってたとは思えん成果やな』


昇平は、何の気無しに言ったんだろう。
でも、これは訂正しないとダメだよな。


「ううん、そこまで必死に這いずり回ったから、採用になったんだと思う」


不思議そうに聞き返す昇平に、説明しようとしたら、烈が叫んでるのが聞こえた。


『お祝いしようよ!今夜、空いてるヤツだけでも声かけてさ』

『おお、今夜は空いてるで。要と笙、由人にも連絡するか。
 ああ、烈の荷物、そっちに運ばなあかんな。
 俺が暇な時で、ちょうどよかったわ』


お祝いって言葉も嬉しかったけど、烈が帰ってくるのが、何倍も嬉しくて。


「今まで、みんなに心配も迷惑もかけたから、今夜は俺がおごるからね。
 烈が行きたがってた寿司屋、予約取れるかな?」

『任しとけ。三人に来れるか確認してから、予約しといたるわ。
 お前、金は大丈夫なんか?』

「節約生活してから、ずっと貯金してるし、大丈夫だってば。
 じゃあ、予約頼んだよ」

『おう、まずは、烈を連れてくわ。帰りたぁて、ウズウズしとるしな』


昇平が、また大笑いして、携帯を烈に戻した。


『......ウズウズとかしてないからね』


恥ずかしそうな声で、烈が言うのが可笑しくて、でも、笑うと怒りそうで我慢。


「待ってるよ。ちゃんと掃除したからね」



電話を切ってから、烈が帰ってくるのが嬉しくて、ワクワクしてたんだけど。
「今まで協力してくれて、ありがとう」だけ、言い忘れてることに気がついた。
帰ってきてから、ちゃんと言わないとね。

それと、八つ当たりしたの、きちんと謝ろう。
泣きながら、途切れ途切れにしか言えなかったし。

あー、またカッコ悪いもいいとこだよな、俺。

でも、それが今の俺なんだよな。


昇平や笙が言ってたんだ。


『身の程知らずのええカッこしいは、嫌われるだけ』


厳しいなと思ったけど、男って、そういうのわからないヤツ多いんだよな。
俺も、言われないと、自分がそうなってるって、気づいてなかったしさ。


あ、もう一度、水回りの点検しよう。

烈が気持ちよく帰ってこれるように。 










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