「True Colors」
黄道吉日

黄道吉日 3

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「えらい苦労してるみたいやなぁ」


面接が始まって、第一声がそれだった。

オジサン二人は、総務部長と人事課長って肩書の偉い人。
電話をかけてきた人は、係長だったらしくて、部屋へ案内するだけだった。

新規採用の面接、それも補充一人のために、こんな上の人が出て来るもんなの?
確か、最初の時は、最終面接の時にしか見なかったよ、この人たち。


「前回、履歴書見て、内定出しても他所に行くと思てたわ。
 阪大やし、もっと上狙うやろからな。
 筆記も資格も文句なしやってんけど、態度に真剣味が足りん気がしてな」


正直、どう返答していいか詰まった。

確かに、就活始めた頃って、なんとかなると思ってたんだし。
それに、最終面接でも大勢いたから、まさか覚えてるとは思わなかったんだ。



その後は、面接って言うより、世間話みたいになっちゃって。
就活を通して、どれだけ自分が甘かったかわかった、とか。
大阪が好きで残ろうと思ったけど、自分で思うほどは馴染んでなかった、とか。
本音で喋っちゃって、オジサン二人も笑って話してた。

なんか開き直ったと言うか、今さら、取り繕っても、この人たちには通用しない気がしたからさ。



「ほな、また連絡させてもらいます」

「はい。本日はありがとうございました」


最後だけ、なぜか丁寧語で〆られたのが、可笑しかった。



帰りながら、また不採用だろうとは思った。
いきなり詰まったりしてるし、オジサンたちも暇つぶしで喋ってる気がしたし。

でも、なんか毒が抜けてくような、爽快感が体を通り抜けてった。

最初の時と違って、向こうも大阪弁で喋ってて、落とした理由まで話してくれた。
俺が就活舐めてたの、簡単に見抜かれてたわけでさ。
大企業の人事担当してれば、そんなの当たり前だよなって、納得できた。

不採用だとしても、最後に、ここの面接受けられてよかったな。

そう思ったんだ。



ちょっと奮発して、途中、デパ地下で弁当と惣菜を買った。

明日から、また公務員試験の勉強で、ほか弁やコンビニばっかになるから。
試験に向けて気合を入れるのと、民間はこれで終わりって、区切りの卒業祝いみたいな感覚。

こういう時、酒が飲めると楽しいのかもな。
それだけは、ちょっと残念かな。

翌朝のために、パンと野菜ジュースも買って。



家に帰り着いて、烈がいないことを、また思い知って。


今日の面接のことを、烈に話したかったな。

昇平や笙なら普通のことでも、烈だと新鮮に感じると思うんだよ。
同じ立ち位置だから、烈はわかってくれるはず。


兄貴と姉貴がいてくれればいい。
他人なんかどうでもいいと思ってた。

でも、違った。

烈がいてくれて、わかってくれてたから、そう思えてたんだ。
兄貴と姉貴には話せないことも、烈には話してたもんな。


笙が、エイチや斎藤さんを、大事に思うように。

俺にとって、烈は一番近くて、一番大事な存在なんだよな。


いつか、烈に好きな人ができたら、すごく淋しいつらいけど。
大事だからこそ、目一杯、お祝いしてやるんだ。

姉貴の時みたいにさ。




翌日、朝九時。

朝御飯を終えて片付けてたら、家電が鳴った。
受話器を取って、応答する。


『こちら、Arixの小田ですが、七海さんですか?』


昨日の結果かな。
一人だし、電話だけで、簡単に済ませるんだろう。
期待せずに、「昨日はお世話になりました」と応えた。


『採用内定しましたので、契約書作成のために、来週中にいらしてください。
 必要書類などの案内を、通知文書と合わせて郵送しますので、持参願います』


俺、固まっちゃってさ。
すぐに返事しなきゃと思うのに、口が動かないの。


「......採用ですか!ありがとうございます!!」


やっとのことでそう言ったら、ちょっと笑ってるっぽい声で、電話が切れた。



「やったーーーーー!!!」


受話器置いて、何度もほっぺた叩いて、痛いの確かめて。
夢じゃないってわかったら、飛び上がって、大声で叫んでた。


すぐにでも、烈に連絡したくて、携帯探した。

でも、入力してるうちに、考えが変わった。


これ、もしかして、何かの間違いかもしれないよな。
あんな雑談ぽい面接で、内定ってさ。

俺、内定欲しくて、幻聴まで聞いちゃったのかもしれないじゃん。
そうじゃないって言いきれないくらい、弱ってたし。


うん、文書での通知が来てからにしよう。

必要書類って、たぶん、住民票や年金手帳とかだから、すぐに準備できるしさ。
契約書作って、自分でも確信できたら、堂々と連絡できるよな。



落ちまくったせいで、半信半疑な俺。
でも、勉強する気には、もうなれなかった。

明日には通知が来るだろうから、確認してからでもいいじゃん?

今日は、一日、就活のことは、一切考えずにいたいんだ。


夢だったとしたら、明日からは試験勉強だけを考えて、突っ走らなきゃいけない。

だから、久しぶりに、一日中、音楽流して、ダラダラしてさ。
体中の力を抜いてみたいんだ。


ああ、その前にやらなきゃいけないことがある。


烈がいなくなって、たった二週間でなんとなく散らかった部屋。
手抜きしてたもんなぁ、掃除。

烈が、いつ帰ってきてもいいように、一生懸命掃除する。
烈は、綺麗好きだから、水回りは、特に念入りにしないと。

掃除で汗かいたら、風呂に湯を張って、入浴剤もケチらずに。
ゆっくり浸かって、でも、掃除は忘れずに。



烈が帰ってきたら、背中流してやりたいな。

一緒に入ったことなんて、ほとんどないもんな。

ああ、烈の好きなポテトサラダも作ってやろう。
貧乏時代に、お袋が作ってくれたレシピ。

ハムやベーコンじゃなくて、魚肉ソーセージなんだよ。
体に悪そうなピンクのヤツ。
でも、大好きなんだよね。俺も烈も。


他人に何かしてやりたいって、ワクワクしたの、この時が初めてだった。
どうしてなのか理由なんて、考えてもなかったけど。


また烈に会える、一緒に過ごせる。
それだけで、嬉しくてしかたなかったんだ。



そこで気がつけよな、俺。
後になって、そんなこと思うなんて、想像もしてなかったから、無理なんだけどさ。

ほんと、イヤになるぐらい、ガキで鈍いの、俺。











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