「True Colors」
黄道吉日

黄道吉日 2

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烈がいなくなって、毎日、どれだけ気を遣ってもらってたのか、わかる度に反省。
朝食から、掃除、夕食まで、当番制にしてても、先回りしてやってくれた。

そして、一番は、つらくなって弱音吐いても、愚痴っても、ただ聞いてくれてたんだよな。
これって、普通の友達なら、ウザがられて、FOされても文句言えないじゃん。

兄貴や姉貴に頼らないようにとか、偉そうなこと言ってて、それ以上に烈に頼ってた。
ほんと、バカでガキなんだ、俺。


んでさ、淋しいの。

何日も一人で家にいるのって、よく考えたら、初めてでさ。
帰って、つい「ただいま」って言っちゃって、烈がいないの思い出して。

電話かメールで連絡取りたくても、「内定取れたら」って言われてるし。

誰かに愚痴りたくても、俺が一方的に悪いのはわかってるから、それもできない。

第一、昇平と笙は、俺にキレてるしさ。

要は、心配してくれたけど、卒論と義肢装具の基礎を自学してて、まだバイト生活。
そんな大変なヤツに愚痴るなんか、非常識だし、できない。




とにかく、これ以上、他人に迷惑かけてる場合じゃない。
烈が言ってたように、公務員試験に専念して、一旦、民間周りは休止することにした。

高校受験と同じくらい、真剣に勉強したよ。
あの時より、必死かもしれない。

社労士と被ってるのが多くて助かったけど、公務員試験特有の科目は、コツが必要なんだよな。
なんかパズルみたいなひっかけのヤツがあるんだ。数的処理とか言うんだけど。

参考書見ながら、過去問やってみて、なんとか癖を掴む。
知能テストみたいな感じなんだけど、もっとめんどくさい。
ただ、配点が多いから、ここを取りこぼすのは、かなり痛いと思う。



四年次必修の講義以外は、ほとんど家で勉強。

食事は、ほぼ近くのほか弁かファーストフード。
どうしても野菜が足りなくなるから、惣菜買ったりしてる。

それを一人で食べて、また淋しくなって。
考えると落ち込むだけだから、さっさと食べ終わる。



烈が出ていって、二週間経つ。

ちょっと休憩と、コーヒーを飲んでたら、電話が鳴った。
慌てて受話器を取る。
友達は、ほとんど携帯にかけてくるから、家電が鳴るなら、就活関連。


「はい、村尾です」

『こちら、Arix大阪本社人事部の小田と申します。
 七海さんはご在宅でしょうか』


Arix!俺が落ちた電気機器メーカーじゃん!

ドキドキして、声が震えそうになるのを抑えて、返事をする。

電話の内容は、「募集人員枠が増えたから、また面接に来い」だって!!



「はい、喜んで伺います。よろしくお願いします」


浮かれそうになったけど、面接受けるだけなんだし、ぬか喜びになるのはイヤだ。
ハキハキと返事して、電話を切った後、ちょっと考えた。



人員枠が増えたって言ってるけど、辞退するヤツが増えたのかも。
キャリアは、一次の合格発表が終わってるから、保険でキープしてた内定蹴ったりとかさ。
もっといいとこの内定もらってたら、それはありだよな。

それか、業績悪化でヤバくなったから、みんな逃げ始めたとか。
ここんとこ、きちんと経済ニュース読んでないから、俺が知らないだけかもしれない。


あー、ぐちゃぐちゃ考えるの、ヤメ!
とにかく、目の前にぶら下がってきたんだから、食いつくしかないじゃんね。


すぐに処分する気にならなくて、落ちたとこの資料もファイルに入れたままだった。
Arixのを引っ張り出して、何度も読み返す。


CIとかだかで、名前を「木下電器」から「Arix」へ変えてから、十年ちょっと。
本社も東京に移したけど、大阪本社って形で、機能を残してる。
企業グループとしては、日本で有数の規模だ。
メインは白物家電だったのを、徐々にコンピュータ関連に軸足を変えつつある。

ああ、ここのパソのCMに兄貴が出てたな。


業種では、総合職枠って、大きなくくりしかなかった。
もし、配属されるのが、総務系じゃなくても、こうなったら何でもやってやるよ。
営業が苦手だとか、そんなワガママ言ってる場合じゃない。




指定された日、クリーニングに出しておいたスーツでビシっと決めて、面接へ向かった。


でっかい本社ビルの受付で、名前と用件を告げる。

最初に受けた時は、別のビルだったんだ。
大勢の希望者がいて、筆記試験と面接を一度にやったからさ。

すぐに担当の人がやってきて、小さな会議室に案内された。

俺以外にも、何人も呼ばれてるのかと思ってたけど、他には誰もいない。
こんな大きな会社で、たった一人で面接を待つのは、初めてだ。


緊張してきたけど、どこかで開き直ってる部分もある。
何十社も面接受けたおかげで、場馴れしちゃったんだよな。
それが可愛げがないとか思われてるんじゃないかって、悩んだこともあったけど。


俺は、この会社で働きたい。
雇ってもらえたら、精一杯、働くつもり。

昨日、資料を読み込んでてさ、感動したんだよな。
この会社が、不況の中、生き残りをかけて、古い体質を改善して足掻いてる。
そのことにすごく感動して、今の自分に重なった気がしたんだ。

今まで、そんな風に感じたことなかった。

名前や業種、給与や休日なんかの労働条件。
そんなんばっか、気にしてて、マニュアル通りに面接こなしてた気がする。


必死だったけど、それは「内定をもらうため」に、必死だっただけ。
別にどこの会社でも良かった。
贅沢は言ってられないとか、上から目線で中小企業説明会も行ってたし。


もう、民間はここだけでいい。
今日の面接でダメだったら、公務員試験だけに集中する。

それでもダメだったら、アルバイトしながら、就職浪人になる。
資格をもっと取って、派遣に登録して、実務経験を積む。

留年は、考えてない。
兄貴に、これ以上の負担はかけたくないしさ。

就職浪人になったら、兄貴も姉貴も心配するだろうけど。
それが、俺の実力なんだから、しかたない。


烈がいなくなってから、ずっと考えてた。
既卒者が不利なのはわかってるけどさ。


カッコ悪いことはしたくない、兄貴のコネは使いたくない、昇平の会社には入りたくない。
他のヤツからしたら、ワガママもいいとこだ。

カッコ悪いことには、もう慣れた。
散々、最終面接までしか行けなくて、不採用食らって、挙句に烈に八つ当たりしたし。
それを昇平や笙に知られて、心配かけた。

こんなカッコ悪いことないよな。

ただ、残りの二つは、何度考えても譲れないんだ。

昇平の会社に入るにしたって、必要な資格も持ってないしさ。
入る時は、堂々と入りたいじゃん。

だから、資格取ったり、派遣で経験積んでから、正社員採用を狙うつもり。



ノックの音がする。

ドアが開く前に、立ち上がって、入ってきたオジサン二人に頭を下げる。

四十代と五十代かな。

若い方のオジサンに、座るよう言われて、また頭を下げて、椅子に腰を下ろした。











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