「True Colors」
青天霹靂

青天霹靂 12

 ←青天霹靂 11 →黄道吉日 1

合同説明会は、来春卒業予定者・次年度・既卒者の三つのコーナーに分かれてた。

予想以上に人が大勢いて、志望してる会社のブースへ行くまでで、熱気で酔いそうになる。
女の子たちが、友達同士で来てるのか、一生懸命に情報交換したりしてて。

今時、女の子でも就職するのが当たり前だもんな。
面接で、腰掛けじゃありませんって、必死にアピールしてる子たちを思い出した。



『とっかかりは、中小でもええやんか。
 経験積んでから、もっとええとこへ転職って手段もある。
 終身雇用も崩れてきてんねんし、大手かって安泰やない』



昇平が言ってたのを思い出して、総務系の募集をしてる会社を順番に回る。
取れた資格を活かせるし、地味だからか、まだ希望者も少なそう。


中小だけあって、地元密着な感じ。
説明してる人事の担当者も、関西弁だったりするから、大学受験を思い出す。

由人が言ってたように、東京だと考えられないよな。

って言うかさ、地方でも学校では「標準語」だろ、普通は。
要や他の地方出身者に聞いたら、「授業中は標準語だった」って言ってたもんな。

標準語と東京弁は違うじゃんって思うけど、アクセントが違うだけで敵視されるって......。


ああ、今は余分なことは考えない方がいい。
大阪に残るって決めたのは、自分なんだし。

郷に入れば郷に従えってことだよな。
従わないまでも、反発するのだけはやめとこう。
じゃないと、どんどん状況が泥沼化しそうだ。





「滝沢」


移動してる途中、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
振り向くと、河内さんの店で出くわした、すっごい男前が立ってた!


どう考えても年上の人相手に、何か小声で喋って、さっさと立ち去っていった。
話しかけられた人は、最初、驚いてたけど、すぐに真剣な顔で相槌打ってた。

で、あの時とは違って、威圧するようなオーラが全くなかった。
それどころか、身長高くて目立つはずなのに、誰も振り向かないの。

......わざと、気配消してたってこと?


滝沢って人がいるブースは、アパレル業界用のパンフレット制作してる会社。
残念ながら、総務系じゃなくて、画像を扱う技術系のみ募集してる。
フォトショでも使えれば、まだ望みはあったのかもしれないけど、見送るしかないな。


いやいやいや...思い出せ、俺。

昇平が言ってたじゃん。


『あの店には、野上の幹部が出入りする』


他の客とかち合わないように、閉店後に来てたってことは、あの人は幹部かもしれなくて。
そんな人が偉い人な会社って...ヤクザのフロント企業ってこと?

建設業とかさ、芸能事務所とか、裏との繋がりが密接だとは聞いてるけど。
とりあえず、触らぬ神に祟りなし、だよな。

好奇心で、資料をもらうだけにして、目当ての会社へと急いだ。





とりあえず、五社分の面接アポを取りつけて、この日は終了。

クタクタになって部屋へ帰ると、烈がちょうど買い物から帰ったとこだった。


「おかえり。バイト代もらったから、今夜はすき焼き」

「やったね!肉食べたかったんだよなぁ。あ、材料費は半分出すよ」

「ううん、俺が食べたくなっただけだから、今夜の分は奢りでいい」



すき焼きは、俺の大好物で、思い出の料理でもある。

兄貴がスカウトされて、デビューするお祝いに、姉貴が用意したんだよ。
兄貴の大好物だけど、ずっと食べられなかったからって。

その時、俺、生まれて初めて、「ちゃんとしたすき焼き」を、食べたんだよね。
離婚して出ていく前に、食べたのかもしれないけど、記憶にないんだ。

兄貴がスカウトされるまでは、そんな贅沢はできなかった。
たまに、鶏肉や豚肉で作ってくれたことはあったけど。
たっぷり牛肉が入ってるのは、生まれて初めてで、感激したんだよな。

兄貴が成功してからは、どんどん贅沢になっちゃって、そんな感激も薄れてった。


一緒に暮らすようになった時に、好き嫌いの話したよな。
ちゃんと、覚えててくれたんだ。


疲れて帰ってくる俺に合わせて、烈が奢ってくれる、すき焼き。
じわっと涙が出そうになった。

俺、弱ってるなぁ。


昇平にも焼肉奢ってもらっちゃったし、内定取れたら、みんなに恩返ししなきゃ。





烈が準備してくれてる間、今日もらった資料の整理。
面接に行く会社のだけを選り分けて、残りをファイルしようとして思い出した。

好奇心でこっそりもらってきた、企業案内。

業務内容や資本金・従業員数なんかを読んでて、代表取締役社長のとこで目が釘付け。



『斎藤昌行』



この名前...あれ?あれ?!あれ!!


「烈、烈、れーつー!!」


案内持って、台所まで走った。
大声に驚いて、烈の目がまんまるになってる。


「どうしたの?」

「これ見て、これ!」


案内を見せると、不思議そうな顔で、質問してくる。


「えっと、よくある名前じゃない?サイトウもマサユキもさ」

「でもな、前に話したじゃん。河内さんとこで出くわした人なんだって!」


説明会でその人を見た状況を、詳しく説明する。

烈が、困った顔で考えだした。

驚いたから、つい話しちゃったけど...烈だし、いいよね?
烈が、どうして困ってるのかは、よくわからないけど。




「このことは、笙には黙っておこうよ。
 たぶん、知ってはいるんだろうけど」


あ、笙の心配してたのか。
それぐらいは、俺でもわかってるってば。


「笙のことだから、情報は持ってるだろうね。
 大丈夫だよ、話すつもりはないから。
 俺が会っちゃったって話したら、余計に会いたくなるかもしれないし。
 そんなの、笙が可哀想じゃん」


安心したのか、烈の表情が柔らかくなった。


「うん、そうしてあげて。
 親父さん絡みだけじゃなくて、その人にも迷惑がかかるかもって、前に言ってたんだ。
 でも、ずっと会いたいんだろうなってのは、感じるからさ。
 エイチと同じか、それ以上に、大好きで大事に思ってるんじゃないかな」

「宗次郎さんにキレてたのも、斎藤さんが関係してるっぽいもんな。
 あいつが淋しそうな顔するのは、俺もイヤだなぁ」


あと五年したら、親父さんが定年退職するって言ってた。
それまでは、会うのは絶対にNGってことだよな。

あー、あいつが公務員は避けたいって言ってたの、それが理由なのかぁ。
俺、鈍いなぁ、ほんとに。



「もう、食べられるよ。ご飯が炊けたら、始めよう」

「わーい!すき焼きっ!」

「ナナ、子どもみたい、それも昭和の」

「ひっどいなぁ。そりゃあ、昭和生まれだけどさ。
 すき焼きは、特別なんだってば」


言い返しながら、口調が完全に子どもだって、自分でも気がついた。

烈が吹き出して、俺も笑って。

そうしてる内に、炊飯器の電子音が響いて、楽しくて幸せな、すき焼きの時間が始まった。


アポもらった会社への対策は、食べ終わってからにしよう。
じゃないと、味がわからなくなりそうだしね。











にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ 3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ 3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ 3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ 3kaku_s_L.png True Colors
総もくじ 3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ  3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ  3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ  3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ  3kaku_s_L.png True Colors
総もくじ  3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【青天霹靂 11】へ
  • 【黄道吉日 1】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【青天霹靂 11】へ
  • 【黄道吉日 1】へ