「True Colors」
青天霹靂

青天霹靂 11

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帰りは、由人も車で来てたから、二人の車に分かれて乗ることになった。

由人の車に乗せてもらえば、この前の礼が言えるんじゃないか。
そう思って、頼んでみたら、由人は快く助手席のドアを開けてくれた。

不自然な組み合わせだけど、他のみんなは阿吽の呼吸で、特にツッコまれずに解散。


同じボンボンの昇平と違って、由人の車は、バイトで買った中古の軽。
そこら辺も、よく見えてなかったなって、また反省。




「烈が一人で乗ってくれんねやったら、めっちゃ嬉しかったのに」


軽く言ってるけど、本気なんだよな。
そう思うと、ちょっと悪い気がしてきて、話が切り出しにくい。


ツッコまない俺に、何かを察したのか、由人の方から言い出した。


「笙から聞いてんねやろ?あいつなら、きちんと説明してるはずやし。
 俺からは、話すことはもうないと思うで」

「ん、心配してくれてたんだって?烈からも聞いたよ。
 ありがとな。笙やお前が気づいてくれてなかったら、ヤバかった」


素直に頭を下げたら、由人は面食らったのか、すぐには何も言わなかった。


少し走って、信号待ちの時、真っ直ぐ前を向いたまま、低い声で話し始める。


「お前も烈も、俺からしたら無防備に見えてな。
 要らんおせっかいやとは思うけど、心配になったんや」

「俺たち、ゲイネットワークどころか、地元にも馴染んでないしな。
 大阪にずっと住むつもりなら、それじゃマズいよな」

「笙や昇平がいてるし、自分でも気がついたんなら、もう大丈夫や。
 ただ、大阪は、いくら都会に見えても、やっぱ東京とはちゃうからな。
 便利な田舎やぐらいに考えとかな、足元掬われんねん。
 就活で苦戦してんのも、そこら辺がネックになってんちゃうか?」



ああ、こいつも賢いんだな。
ちゃんと、俺のことわかってて、考えてくれてたんだよな。

普段がチャラくて俺様なのは、キャラ作ってるってことか。
兄貴みたいに、何か理由があって、無理してるのかもしれない。



「昇平にも言われて、もっとがむしゃらに頑張ることにしたよ。
 まだまだガキで、自分のことよくわかってなかったんだよな。
 こんなに就活で苦労してるのって、客観性が足りなかった証拠だろ」

「まぁ、それだけ悩まんと済んでたってことやろ?
 それはそれで、幸せなことやと思うけどな。
 根が素直で明るいのんは、自分のええとこでもあるし」



笙と出会った頃、昇平に「甘ちゃん」って指摘されたことを思い出す。
あの頃の俺のまんまだったら、今の由人の言葉も、不満に思ってただろうな。


「俺は、親がいない分、兄貴と姉貴が頑張ってくれてたからさ。
 ゲイだってことがバレるのが怖かったけど、それももう話したし。
 恵まれてたんだって、今ならわかるよ」

「気持ち悪がられるとか、縁切られるとかなら、まだマシやってんけどな」


由人の顔が曇った。
お袋さんのこと、思い出させたかな。


「悪い。烈から聞いてたのに」

「いや、謝らんでええよ。オカンも、立ち直ってるしな。
 いろいろ本とか読んで、納得できたみたいやねん。
 最初の内は、病院の世話になったりしてたけど」



マンションが見えてきて、そこで話は終わった。

車から降りた時、もう一度「ありがとな」って言ったら、軽く頷いただけ。



普段のこいつは、明るく騒いで、いつも人の中心にいる。

烈から聞いた時は、半信半疑なとこがあったんだけど。
実際に見ちゃうと、ほんとだったんだって、少し心が痛くなった。


お袋さんのことが、ほんとに大事なんだなって、ひしひしと伝わってきたからさ。



順路を考えれば、俺の方が先に到着するはずなのに、烈のが先に帰ってた。

俺、話さなきゃってばかり思ってたから、外見てなかったんだよね。
由人のヤツ、俺の様子で気づいて、ちょっと遠回りしてくれたんだ。

あのファミレスから、最短ルートで来ると、五分もかからない。
五分だと、まともに話すのは難しいもんな。

そういうことも、あいつの細かい気遣い。

で、俺には足りてないモノなんだよな。





「ただいま」

「おかえり。シャワーどうする?」


烈が、聞いてくるってことは、バスタブに湯を張るか迷ってるんだろうな。
自分一人だともったいない、そんな感覚も、いつの間にか身につけてる。


「あー、ゆっくり浸かりたい気分かな。
 ほら、昇平から土産にもらった入浴剤、あれ使ってみないか?」

「ん、じゃあ、溜めるね。俺も浸かりたいと思ってたとこなんだ」



コーヒー飲みたいけど、一度、自分の部屋へ戻らなきゃ。

チューニングキーやスティックの入ったバッグを片付けて、明日の準備。
明日は、関西の中小企業が集まった、合同説明会に行く。

去年の今頃には、考えてもなかったような、知らない名前の会社ばかり。
思えば、贅沢なこと言ってたよな。


部屋着兼パジャマ代わりの、ジャージと長袖Tシャツに着替えて、深呼吸。


焦ってもから回るだけ。
公務員試験だってあるんだ。


兄貴と姉貴の顔や声を思い出して、気合を入れてると、ノックの音がした。


「ナナ、お風呂溜まったから、先に入って。
 俺は、明日の午前中は、予定ないから、ゆっくり入る」

「お、ありがと。んじゃ、先に入る」




浴室は、木の匂いが充満してて、深く吸い込むとなんとなく気分が良くなった。
こんな些細なことでも、俺って影響受けるんだと思うと、笑えてきた。


ぐちゃぐちゃ考えてもしかたない。
俺って、自分が思ってたよりも、ずっと単純だってことだよな。


兄貴を見てきたんだから、わかるはずなのにさ。
自分が見える範囲でしか、まだ他人を理解しようとしてないんだ。

考えたら、笙だって、仲間にしか見せない部分があるもんな。
あいつを敵に回すのは、絶対にイヤだと思ってたけど、あいつだって、無闇に敵を作ったりはしない。
嫌いなヤツ相手でも、普通に接してる。
見えない線を、仲間と他のヤツとの間に、キッチリと引いてるだけ。

昇平だって、一見、図々しくてガサツなヤツだと思われる。
でも、よく細かい所に気がつくし、先を読むのが巧い。
計画的で几帳面でもある。


距離が近づいて、つきあいが長くなって、やっと気づいた。

前にも思ったけど、そこで終わってちゃダメなんだよな。
余裕なくして、すっかり忘れてた。




「ナナ、起きてる?」


烈の心配そうな声で、我に返った。

湯に浸かって考え込んでたら、結構な時間になってたみたい。


「あ、ゴメンな。もう上がるから」


たし湯のボタンを押して、少し入浴剤を足しておいた。
こんなことしかできないけど、いつも気を遣ってくれる烈に、快適に過ごして欲しいと思う。


タオルで頭をガシガシと乾かしながらリビングへ行く。
テーブルには、冷えすぎてないミネラルウォーター。
烈が、また気を遣ってくれてる。


明日は、来年度だけじゃなく、再来年度に採用の対象者もやってくる。
就活慣れして、フレッシュさがなくなってる気がするから、気をつけないとな。


テーブルのメモ帳に、「水、ありがと。おやすみ」って書いた。
烈が気づかなくても、別に構わない。

自己満足でも、きちんと伝えようとすること、それが大事だと思うから。











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Re: NoTitle

七海の就活時期は、私よりは何年か後で、より厳しくなってた頃ですが...。

男ってだけで、何倍も下駄履かせてもらってるんだから、頑張らんかいっ!と思ったりもします(笑)



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