「True Colors」
青天霹靂

青天霹靂 10

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久しぶりに、メンバー全員でスタジオに集合。

俺の就活や昇平の研修なんかで、なかなかスケジュールが合わなかったんだよね。
最初は断ろうかと思ったんだけど。
過呼吸になるくらいストレス溜めてるのかって、自分でも驚いたからさ。

姉貴に心配かけるのもイヤだし、一番は、烈かな。
当番にしてるのに、自分は決まってるからって、先回りして家事やってくれたりして。

その烈から、ストレス発散した方がいいって言われると、そうだよなって。
単純に、その気になったんだ。


土曜の午後、思いっきり、何曲もタイコ叩いてると、やっぱスッキリするんだよね。
卒業したら、もうこいつらとは演れなくなるだろうから、目一杯に楽しんでおこうとも思ったし。




「みんなが大阪に残るんやったら、社会人になっても続けたいなぁ」


いつものファミレスで、昇平が提案してくる。
それは楽しいだろうけど、難しいんじゃないの?


「うちの会社は一応土日祝が休みになってる。
 ただ、障害者スポーツ大会のお手伝いや勉強会で、日曜が潰れることもあるらしい。
 それでも、みんなとは会いたいし、一月か二月に一度くらいなら、なんとかなるかも」


いつものように、穏やかに笑ってる要。

隣で笙が、ニヤッと笑う。


「私は来年の秋までは、参加できませんけどね。
 ヴォーカル以外なら、誰が抜けてもカバーできますよ。
 キーボードは、彩香に頼めばいいし」

「俺のとこは、締め切り前じゃなければ、休日出勤はないらしいよ。
 他に趣味もないし、続けられると嬉しい」


ああ、烈。
俺がいなくても、もう自分の意志だけで喋るようになってるんだな。


「あ、昇平が来られへんくっても、由人に頼めばええやん!
 レベルは同じくらいやし、癖も似てるし」

「リーダーは、俺ちゃうんかいっ!」


笙が、昇平をからかってる。
本気じゃないのは、みんなわかってるのに、昇平が焦るのが可笑しくって。


「ま、うちのアホよりは、ちゃんとリーダーしてるわ。
 あのアホ、「リーダーはあだ名や」とか、寝言言いだしたわ。
 元々、英兄が仕切ってんのに、今さら何を言うとんねんって、ツッコんでもうた」


笙は、軽く笑い飛ばして、ブラックコーヒーを飲み干した。

そんな仕草もいちいちが男前で、感心しちゃうんだよな。
動作は静かで、食べ方も綺麗、背筋が伸びてて、行儀はいいんだ。

男臭いわけでもないし、テレビで見た宝塚の男役みたいにわざとらしくもない。

それでも、こいつを形容しようとすると、「男前」って言葉がしっくりくるんだ。





「ああ、忘れてた。烈さん、SMSのチケットどうします?
 今年は、四枚もらえたんで、行くんなら回しますよ。」

「いいの?」


烈が大きな目を、さらに見開いて大きくして驚いてる。
一般発売と違って、笙がもらってるチケットは関係者の近くで、かなりいい席。



「いつもなら二枚だけ送ってくるんですけどね。
 なんしか、今年は、四枚なんですよ。彩香は都合が悪いて言うてるんですわ。
 一番のファンは、烈さんやし、まだ取れてないんなら、どうぞ」


ニッコリと優しい笑顔は、ギャップがすごくてさ。
さっきは「男前」だと思ってたのに、いきなり女の子なんだよなぁ。

そういうとこも、要には魅力だったんだろうなって、一人で納得。


「試験とはかぶってないけど、ナナは行ける?」

「ゴメン、一次抽選で外れた後、会社説明会に申し込んじゃった。
 少し遠いとこだから、開演時間には間に合わないんだ。
 残念だけど、昇平か由人についてってもらえば?」


四枚なら、当然、要は入ってるよな。
笙と要がいるなら、由人も無理に口説いたりはしないだろうし。


「すまん、俺は親父のお供で、取引先の接待や。
 せやから、今年は申込みもせんかってん。
 由人やったら、行けるんちゃうか」

「そっか、彩香ちゃんも昇平も行けないなら、由人に聞いてみる。
 確か、あいつも、抽選外れたって言ってたし」



由人も、本命だったアパレル大手に内定をもらってる。
大阪って、来るまではよく知らなかったけど、繊維の街でもあったんだよな。
安い中国製品が入ってくるようになって、関連商社が倒産する中、しぶとく生き残った会社らしい。

親父さんの会社とは違う業種を希望して、早め早めに動いてた。
一浪してるし、お袋さんを安心させたかったのもあるんだろう。

笙と烈から話を聞いて、由人のことも浅い見方しかしてなかったって、反省したんだよな。
俺だって、自覚はないけど「チャラく」見えてるんだ。
表面だけ見て判断されるって、なんか凹んだけど、俺自身がそうしてたんだから、キレてられない。


昇平にアドバイスされてからは、もっとガツガツしようって開き直った。
カッコ悪いとか言ってる余裕なんか、俺にはないんだから。



「お、揃ってるやんか」


噂をすれば影ってヤツで。
誰かが連絡してたのか、由人がやってきた。


「おお、来れたんか。メシは食ったか?」


まず声をかけたのは、昇平だった。
どうやら、学祭の話をしたくて呼んでたらしい。

もう幹事は交代してる。
ただ、今年は参加するバンドが少なくて、後輩が泣きついてきた。

内定もらってるヤツだけでも、なんとか参加できないか、参加は無理でもツテはないか。
笙も留学でいなくなるし、華のあるヤツがいないから、何とかならないかって、由人と話してる。


「内定もらってるヤツも、卒論や研修で忙しいやろ?
 学外のヤツでもいいんやったら、二組くらいは声かけるけど」


話を聞いた由人が、考え考え、昇平に答えてる。
そこで、笙が眉間に皺を寄せたから、何かあるのかって、ちょっと身構えた。


「由人、虎太郎んとこに声かけるつもりなん?」

「ああ、あかんか?」

「やめといた方がええて。由人が声かけたりしたら、また調子に乗るで?
 テクだけで、華もオリジナリティもないのに、まだプロになるとか言うてるやん。
 万が一、デビューできても長続きせんのは、わかってるやろ?」


虎太郎って...ああ、対バンやったことあるよな。
確か、笙の中学の同級生とかで、フリーターだったはず。

音が全然思い出せないっことは、笙の言ってるのは厳しいけど事実か。


「竜二にドラム覚えさせたりして、巻き込もうとしてるから、この前、説教したとこ。
 弟のんが、まだ中一やのに、よっぽど現実見てるわ」

「まぁ、まだ可能性はゼロやないし。そないに厳しいこと言うてやるな」

「散々、止めたのに、うちのアホみたいに高校中退してしもたし。
 対バンでもチケット捌かれへんくらいやのに、無駄やって」
 
「宗次郎さんが中退して成功してるからなぁ。
 なんとかなると思てるんやろ」

「SMSが成功したんは、英兄って司令塔がいてるからやん。
 虎太郎んとこは、そんなん、ようせんやろ」


聞いてる分には、すっごく厳しいこと言ってるんだけど......。
笙が、虎太郎ってヤツを心配してるのは、ひしひしと伝わってくる。


ほんと、こいつって、仲間だと認めたら、面倒見いいんだよな。
でも、下手に同級生だから、そいつも素直に聞けないんじゃないかな。

男って、プライドだけで、生きてるとこあるからさ。


「まぁ、頭打って、軌道修正するかもしらんし。
 虎太郎の人生やねんから、本人の好きなようにさせとけや」


昇平が、やんわりと笙を宥めて、今日は解散の流れになった。











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