「True Colors」
青天霹靂

青天霹靂 9

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「もしもし、姉貴?」


家から電話をかけたら、出るのは姉貴のはずなのに、ちょっと無言が続いた。
番号間違ったかと思って、ちょい焦る。


『なな、大丈夫なの?』

「へ?何が?」

『体調でも悪い?声がなんだか暗いよ』


うっわ、相変わらず、鋭いよな。

昔から、兄貴は誤魔化せても、姉貴には通用しなかったもんな。

クラスで貧乏だからってイジメられた時も、姉貴だけにはバレてたし。


お袋が哀しそうな顔するから、黙ってたんだよね。
でも、姉貴は、すぐに気がついて、庇ってくれた。
学年が違うのに、休み時間になったら、俺のクラスまで来て、見張っててくれたんだ。

担任に言いつけたり、やり返したりすると、エスカレートする。
だから、なるべく一緒にいて、イジメる隙を与えないように考えてくれた。
姉貴が卒業する頃には、体がデカくなったし、言い返せるようになってたから、イジメられることもなくなってた。




「ん、ちょっとね。公務員試験の勉強で、寝不足なだけ」


嘘はついてない。

でも、全部じゃない。



『焦る気持ちはわかるけどね。無理しても効率悪いだけよ』

「うん、試験前には、きちんと寝るようにするから、心配しないで。
 で、用事は何だったの?」

『えっとね、安定期に入ったから、おにーちゃんとななには、話しておこうと思って』


安定期って...え?


「子どもできたの?いつ生まれるの?!
 ねーちゃんこそ、体、大丈夫??」


俺、嬉しくって、早口で聞いちゃって。
いきなりテンション上がっちゃってさ。

携帯の向こうから、姉貴の笑ってる声が聞こえてくる。


『予定日は、十月二日。つわりも収まったし、順調よ。
 急に元気になったわね。喜んでくれて嬉しい』

「あったりまえじゃん!」

『神崎のお母さんも、すごく喜んでくださってね。
 一時期より病状が安定したの。検査の数値も良くなってる』

「良かったね。孫の顔見たら、ガンなんか吹っ飛んじゃうんじゃない?
 俺でさえ、こんなに嬉しいんだからさ。
 あ、俺のことなんか心配してる場合じゃないよ!
 大事にして、絶対に無理しないでね!」

『うん、無理はしない。約束する。
 だから、ななもだよ?生まれたら、元気な顔で会いにきてやってね』




電話を切ってしばらくは、胸がほかほかしてた。


男の子か女の子かは、医者に聞かないらしい。
どっちでも、どっちに似ても、絶対に可愛いよな。

祝いは何がいいんだろう?
現金が一番役に立つんだろうけど、それだけじゃ味気ないし。


そんなこと考えてるのが楽しくて、昼間の暗い気分はどっかに行ったんだけど...。

ふっと、兄貴と春樹のことを、思い出した。


向こうの親族のことは、俺、何も知らないんだよね。

春樹には、可愛がってくれる親戚とかっているのかな。

もうすぐ三歳になるけど、兄貴はあまり話したがらない。
奥さんがバラエティ番組なんかで、一緒に撮った写真とかを公開してるのを見るだけ。
顔バラしてたら、誘拐されたりするんじゃないかって、心配になる。

そして、二言目には「トーイにそっくり」って言うんだよね。
それくらい普通だと思いたいけど、言い方とか表情がなんか変なんだ。
春樹の成長を喜ぶってより、兄貴に似てくる方がより嬉しいみたいな。
兄貴を脅迫してたって聞いた時と同じ、気持ち悪さを感じるんだ。

春樹自身は、まだ意味がわからないだろうけどさ。


子どものうちは、まだいい。
でも、大きくなってきて、自分って意識ができてきた時、春樹はイヤじゃないのかな。

母親にとって、自分は「父親の代わり」でしかないんだもんな。
それも、兄貴に相手してもらえない分、言うことを聞くように育てるんだろうしさ。


俺だったら、そんなの、絶対にイヤだ。
俺は俺だし、誰かの身代わりなんて、やりたくもない。


俺と姉貴を遠ざけておきたい、兄貴の気持ちはわかる。
奥さんとは、仲良くはなれないとも思う。

それでも、そばにいてやることができたら、少しは助けになれたりするんだろうか。



......考えてもしかたないよな。

兄貴がああなんだから、俺が春樹と会うのさえ無理だし。

第一、まともに就職もできてない俺が、何ができるって言うんだよ。
我ながら、情けないけどさ。


姉貴の知らせがきっかけで、春樹が生まれた時のことを思い出すと、罪悪感が湧いてきたんだ。
同じように、大事な兄貴の子どもなのに、ただ無関心だったよなって。

姉貴が呟いた、「甥っ子かぁ」って言葉は、俺の中を素通りしていった。
あの時は、今よりも子どもだったから、姉貴も同じ気持ちだと思いこんでたけど。

もしかしたら、違ってたのかもしれないと、なんとなく思う。
だって、「愛してやることは無理でも、責任だけは果たせ」、そう諭してた。
姉貴がマジメだからだと思ってたけど、自分が生む立場なら、何か考えることもあったのかも。




「どうしたの、考え込んじゃって?」


部屋に篭ってた烈が、いつの間にかリビングに来てて、声をかけてきた。

帰ってきた時、顔色悪かったから、心配させちゃったかな。


「ん、心配かけてゴメン。今の電話は、いい話だったから、大丈夫。
 姉貴んとこ、十月に生まれるんだって」

「え、よかったじゃん!おめでとう、だね。
 お祝いするんだろ?俺も乗せてよ。
 お姉さんには、たくさん世話になったしさ」


ああ、うちに遊びに来た時、ご飯食べたりしてるもんな。
兄貴とは会ったことないけど、姉貴とは普通に話せるようになってたし。


「うん、そうしてくれたら、姉貴も喜ぶと思う。
 何買っていいのかって、全然、わかんないけどさ」

「昇平か笙に聞く?あいつらなら、こういうこと詳しそう」


冠婚葬祭のマナーとか、妙に詳しいよな、二人とも。
つきあいが広いと、自然とそうなってくんだろうな。


「ちょっと先の話だけど、なんかやる気出た。
 試験もすぐだし、まだ民間だって諦めてないし。
 甥っ子か姪っ子に会う時には、さすがに決めとかないとさ」

「焦るとから回るしね。ナナには、落ち込んだ顔は似合わないよ。
 態度だけでも明るくしてないと、運気が落ちるって、昇平が言ってたよ」

「えー、あいつ、ほんとオジサン臭いこと言うよなぁ」


烈が、昇平の喋り方を真似して、自分で笑っちゃってる。
それ見て、俺も吹き出して、リビングがふわっとした明るい空気になっていく。



「男の子かなぁ。女の子かなぁ。うちの兄貴んとこは、男二人なんだよね。
 楽しみだね、ナナ」

「お前は甥っ子たちに会ったりしないの?」

「俺が会うと、ばばぁがうるさいんだ。
 だから、なるべく俺からは接触しないようにしてる。
 じゃないと、お義姉さんにイヤミ言ったりするんだよね」

「それって、嫁姑問題ってヤツ?」

「うん、兄貴は全面的にお義姉さんの味方してるから、なんとかなってるっぽい。
 浮気ばっかしてた親父にも問題はあると思うけどさ。
 だからって、俺や兄貴は代わりになんかなんないのに」



ああ、烈は、「春樹の未来の姿」なのかもしれない。

そう思うと、そんなに心配しなくても、なんとかなるんじゃないか。
なんて、楽観的な気分になった。

親とうまくいかなくても、友達に恵まれれば、きちんと成長することができる。
烈が、それを証明してみせた。


メンバーの子どもたちが、同年代にいるって言ってたもんな。

春樹、頑張れ。

何もしてやれない、不甲斐ない叔父さんでゴメンな。 











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