「True Colors」
青天霹靂

青天霹靂 8

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「笙との話は、俺が聞いても大丈夫なわけ?」


笙が帰った後、烈に、俺の分もコーヒー淹れてもらって、二人で飲む。

さっき、「烈以外」って、わざわざ言ったのは、話した方がいいって判断だろう。
烈も、俺と同様、ゲイネットワークからは外れてるからな。





「......そんなこともあるんだ」

「ああ、俺も驚いた」



内容を詳しく話した後、烈は、ポソッと呟いてため息を吐いた。
そして、何か思い出したみたいで、一旦、部屋へ戻ってった。


すぐにリビングへ戻ってきて、片手には携帯。
チェックしながら歩いてきた。



「ここんとこ、由人が言いたかったのって、それだったみたい。
 俺、また口説かれると思って、スルーしまくってた。
 メールで、ナナのことって書いてたのに、口実だと思って。
 ごめんね、ナナ」

「なんだ、由人から烈に連絡あったわけ?
 笙も、俺が苦手にしてるから、言うこと聞かないかもとか言ってたけどさ。
 別に、直接言ってくれてもよかったのに」

「あいつ、ああ見えて、他人のことになると、繊細でヘタレだからさ。
 ナナが、目の前で凹むの、見たくなかったんじゃないかな」


へ?あいつ、そんなに繊細なの?

俺様なヤツだと思ってたから、すっごく意外。



「あいつがカミングアウトした時、お母さん、落ち込んで体調崩したんだって。
 あいつん家、俺ん家と同じで、親父さんはお兄さんしか見えてなかったけどさ。
 お母さんは、どっちも大事にしてくれたから、すごく悪いことしたって後悔したらしい。
 浪人したのも、お母さんの看病してたからなんだよね。
 それ以来、親しい人間が落ち込んだりするの、ものすごく苦手になったって」

「そう言えば、いっつも盛り上げ役やってくれるよな。
 ミスって失敗したヤツのこと、注意はするけど、すぐにフォローしてるし。
 お気楽そうに見えたけど、トラウマ抱えてんのかぁ」



親にゲイだって話すこと自体、俺には信じられなかったけど。
兄貴に話した今なら、言っといた方がいいって思った気持ちもわかる。
変に期待させたくなかったとか、理由は色々あるよな。

姉貴も気がついてるっぽいし、お袋は死んでるから、俺は深刻にはならずに済んだ。
でも、受験に響くほど、お袋さんが体調崩すなんて、本人も相当なショックだったろうな。
言うタイミングとか、考える余裕がないくらい、切羽詰ってたのかもな。




「なんだかんだ言って、あいつもいいヤツなんだよな」

「うん、挨拶みたいに口説いてくるのさえなければね」


烈は、困った顔してるけど、本気で嫌ってるわけじゃないのもわかる。
本気で嫌いだったら、一切、相手はしてなかったはずだし。

それに、由人の口説き方って、断られるの前提で楽しんでる感じがするんだよな。
だから、重くて暗い雰囲気にはならないっぽい。


「それにしても、三年も口説き続けてるって、よっぽど烈のこと好みなんだな。
 ほだされそうになったりしないわけ?」


何の気なしに言ってみた。

烈が、一瞬だけ顔を歪めて、すぐに首を横に振った。


「いいヤツなのはわかってるけどね。
 軽く言ってても、本気なの感じるから......」


ああ、言われてる本人には、本気が伝わってるのか。
端から見てると、楽しんでるように見えたけどな。


「そっか。烈にとっては、重いよな」


ん、と軽く返事をして、部屋へ戻っていった。

後には、なんだか微妙な空気が残る。




自分で言ったくせに、烈が由人とくっついたらって考えたら、すっごく淋しくなってさ。
烈が受け入れないのに、ほっとしてる自分がいるんだ。


ワガママだとは思うけど、もう少しだけ、待ってくれよ。

せめて、就職が決まるまでは、離れていかないでくれ。

今、ぼっちになったら、俺、どん底までめり込んで、立ち直れそうにないんだ。



『淋しいとかって、よくわからない』


そう言ってた、烈。

でも、今は違うよな?
他人といる楽しさや、助け合うありがたさ、そんなのが理解できるようになった。

俺もだけど、お前もだろ?

どうして、わかるかって言うとさ。
烈、昔より、ずっと優しくなってるんだよ、気づいてるか。

甘えちゃってるなぁって、申し訳なくなることもあるけど。
お前が優しくしてくれるの、すっごく嬉しいんだ。

つきあい長い分、適度な距離で、ぴったりな言葉をくれたりするじゃん?
そんなの、お前くらいしかできないんだよ、今は。


烈に「本気で好きなれるヤツ」が、現れた時はさ。
俺、ちゃんと「よかったな、おめでとう」って、言うから。

要と笙の時みたいに、心から祝福するから。


祈るような想いを、そっと頭の隅に置いて、その夜は眠りについた。




翌朝、候補に考えてた中で、笙の話に該当する試験は除いて、願書を郵送した。

俺が逆ギレする可能性も、あいつなら考えただろう。
それでも、忠告してくれたんだ。
素直に聞いておこうと思う。


どの公務員試験も、専門職でない限り、基本的に試験分野はかぶってる。
受験先が変わったからって、特に試験勉強には影響がない。
語学力勝負の外務Ⅱ種は、最初から考えてなかったのは、よかったのかもしれない。



郵便局の帰りに、また大学へ行く。

就職相談センターの職員が、またかって顔して、俺を見てる。


よく考えたら、この人も、公務員試験受けたんだよな。
まだ二十代っぽいけど、就職氷河期前なのかな。
だったら、倍率もそんなに高くなかったはずだよな。


なんて、考えてもしかたないことを、つい考える。


求人票を見ながら、足元が崩れていくような感覚に襲われた。
息をしてるのに、酸素が足りないような気がして、深呼吸するのに、どんどん苦しくなる。
求人票の文字がぐるぐる回転して、きちんと読めない。

このままじゃヤバいと思って、慌てて、部屋の外に出る。


階段に座り込んで、呼吸が落ち着くのを待った。

これ、過呼吸ってヤツだよな。
サークルの同期が、真っ青な顔してるのを、由人が介抱してたのを思い出した。

背中をさすってやりながら、「息すんのは、ゆっくり浅くや」って言ってた。
後で教えてくれたけど、ストレスや寝不足、過労が原因だったりするらしい。
血中の酸素濃度が上がってるのに、息苦しく感じてしまう。
だから、焦って何度も深く呼吸して、余計に二酸化炭素が足りなくなる悪循環なんだって。


よく知ってるなって感心したら、適当に笑って誤魔化してたけどさ。
もしかしたら、お袋さんの看病してて覚えたのかな。


最近、焦ってるせいか、眠りが浅い。
夜中に目が覚めることもあるし。

食欲も落ちてきてるけど、烈が作ってくれるから、なんとか食べてる。
一人だと、作る気も起きないし、食欲もなくなってくるんだよな。


甘ちゃんなのが、ほんと身に染みる。
打たれ弱いにも、程があるだろ。




マナーモードにしてた携帯が、デイパックのポケットで震えてる。

もしかしたら、落ちた会社からの、欠員補充試験の通知かもしれない。
慌てて取り出すと、メールが一通来てた。

姉貴からで、ちょっとがっかりしたけど、それは内緒。
今晩にでも、空いた時間に電話してこいって連絡のメールだった。











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