「True Colors」
青天霹靂

青天霹靂 7

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そろそろ、公務員試験の申し込みも始まる。
政令指定都市と大阪府は、日程が同じたから、大阪府に決めた。
国家公務員もノンキャリならなんとかなるかも。

それぞれの願書取り寄せたり、必要書類を準備してる時、笙からメールが来た。


『公務員試験なんですけど、公安職と外務は受けませんよね?』


外務は受けるつもりなかったけど、府警の行政職は悩んでたから、返信してみた。
国家公務員だって、行政職の試験でも採用後に公安職になる可能性もあるよな。


「受験予定はないけど、国Ⅱは受験するから、可能性はあるかも」

『話したいことあるんですけど、メールや電話では厳しいんです。
 烈さんがOK出してくれるなら、お宅にお邪魔してもいいですか?』


すぐに、またメールが来たから、少し悩んだ。

このマンションには、お互いに誰も呼ばないってことで、三年間通してきた。
昇平と要でさえ、この部屋に呼んだことはない。
俺と烈がアルコールがダメなんで、飲み会には使えないって、二人とも納得してるし。

笙もそれを知ってるのに、ここまで言うって、よっぽど外では話しづらい内容なんだろうな。



烈の部屋をノックしたら、すぐにドアが開いた。


「笙をここに呼んでもいいか?」

「来たいって言ってるの?俺は、別にいいけど。
 誰にも喋らないと思うし」


信用絶大だな。烈が、あっさり許可してるって。

烈のOKが出たから、返信したら、「十五分で行きます」だって。





「いきなりですみません。言うとかなと、ずっと思ってましたけど、なかなか言う機会なくて」


メットを抱えてやってきた笙は、いつもの飄々とした雰囲気じゃなかった。
リビングに通して、好きなコーヒーを淹れてやると、それでもきちんと頭を下げてくる。


「で、どうしたんだ?メールの内容からすると、就活関連だろ?」


珍しく言いにくそうにしてるから、俺から切り出してみた。
烈は、気を利かせて、自分の部屋に戻ってった。


「選択肢狭めることになりますけど、外務と公安は、止めといた方がいいです。
 入れんことはないですけど、入ってから、めっちゃ苦労しますよ」

「お前が言うんだから、何か根拠があるんだよな?」


笙が、静かに頷いた。

そして、説明してくれた内容は......




公安職も外務も、ゲイやと、絶対に出世できません。

採用で落とすと差別やって叩かれるから、今は試験での不採用はしてませんけど。
入ってから、ジワジワと差別されて、退職するように持って行かれるんです。

出世も昇進もなしでいい、そう開き直れるんなら、留まることはできます。
ゲイやからって、クビにはできませんからね。

採用試験の時に、徹底的に身元調査されますから、隠し通すことは無理です。
由人ほどやないけど、七海さんも烈さんも、無理に隠してないから、すぐでしょう。

ゲイを避けたい理由は、単純です。
ゲイネットワークへの連帯感の方が、組織への忠誠心より強い人が多いからです。

公安職や外務職員って、機密事項を扱うでしょ?
そういう情報を欲しがるヤツらが、ネットワークを利用して近づいてくるのを防ぎたいんですよ。
日本だけちゃいますよ。外国やと、宗教上の禁忌もあるんで、さらに厳しいらしいです。

ネットワークに参加してると常識らしいですけど、七海さん、そっちにも参加してないみたいやし。





「お前、俺たちがゲイだって気づいてたんだ」

「はい、由人以外にも何人も友達にいてるんで、すぐに気づきました。
 ただ、オープンにはしてはらへんから、この話もするかどうか迷ったんですけど。
 就職、なかなか決まらへんみたいやし、言うといた方がええかなって。
 知らんと就職して、苦労するのは、アホらしいでしょ?」



笙が気づいてるのは、別にショックじゃなかった。
やっぱりな、って感じだったし。

でも、ゲイだとそんな制限があるんだって、知らなかったからさ。

就活で苦戦してるから、もし知らなくて採用されたら、喜んだろうし。
もちろん、採用されてからも、頑張ろうとしただろう。

なのに、ゲイだってバレてて、退職するように追い込まれるって、どんな罰ゲームだよ?!


しばらく呆然としてしまって、自分の中に入り込んでた。

その間、笙はじっと黙って、ソファに座ってた。

我に返って、笙を見ると、哀しそうな顔しててさ。

俺がショック受けるだろうって、わかってたんだよな。
それでも、自分が嫌われるかもしれないのに、わざわざ言いに来てくれた。




「由人も心配してましたよ。でも、七海さん、由人のこと苦手でしょ?
 素直に言うこと聞かれへんかもって、なんかグズグズしてたんで。
 時間もないし、思い切って、私が言うことにしたんです。
 昇平と要も気づいてるけど、ゲイネットワークのことまでは知らんし、よう説明せんかなって」

「え、要も?」


うわ、あいつ、そういうこと疎いんじゃないの?!
もしかして、俺がいいなと思ってたことも気づいてんの?


「ああ、七海さんが、要のこと、「お気に」やったんは、本人気づいてませんよ。
 それは、安心してください。
 女の子への態度とか見てて、なんとなくわかったみたいですわ。
 せやから、女の子が寄ってきた時は、昇平と要が、間に入って庇ってたでしょ?」



言われてみれば、そうかもしれない。

入学当初、鬱陶しくてしかたないと思ってたのが、いつの間にか寄ってこなくなってた。
ラッキーと思ってたけど、二人がガードしてくれてたのか。

要自身、最初は逃げ回ってたのに、よくそこまでやってくれたよな。




「要は、メンバーが大好きなんですよ。
 貧乏、田舎者、ダサいの三重苦なのに、一緒にバンド演ってくれたって。
 その上、いろんなこと助けてもくれたって、すっごく感謝してますよ。
 それこそ、ヤキモチ妬きたくなるぐらいに、嬉しそうに話しますもん」

「お前、女友達は平気なくせに、俺たちにヤキモチ妬いて、どーすんだよ!」


思わずツッコんで、大笑いしちゃった。
さっきまで、ショック受けてたのが、嘘みたいに。
笙も、珍しく、声を上げて笑ってる。

おかげで、暗さがどっかへ吹き飛んで、冷静になれた。



「公務員が第一志望じゃないから、就職決まったら言わずに済ますつもりだったんだろ?
 でも、俺がなかなか決まらないし、心配してくれたんだよな。
 ほんと、ありがと。マジで、助かった」


礼を言って頭を下げると、笙がいつものように、当然とばかりに言ってのけた。


「仲間ですやん」


お前、男前だよなぁ。
一生かかっても、追いつけない気がしてきたよ。


「第一印象は最悪だったのにな」

「それは、お互い様でしょ?」


顔を見合わせて、また笑えてくる。




「二人とも、どうしたの?」


笑い声が聞こえて安心したのか、烈が部屋から出てきた。
マグカップを覗き込んで、質問してくる。


「俺、コーヒー飲むけど、二人はおかわり飲む?」

「あ、私は、そろそろ帰りますわ。時間も時間やし」


時計を見れば、もう午後十時を回ってる。

いくら笙でも、女の子一人だ。
もう少し、気をつけてやればよかった。


「バイクで明るいとこしか走りませんから、心配いりませんよ。
 今夜のことは、烈さん以外には、お互いに内緒にしときましょね」


素早く表情を読んで、フォロー入れてきた。

さすがだよな、ほんとに。











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