「True Colors」
青天霹靂

青天霹靂 5

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まともに内定もらえないまま、大阪も四年め突入。

俺と烈は卒論がないから、大学に行くのは、四年次必修の一コマだけ。
それ以外は、全部、三年までで取り終えてある。

でも、就職相談センターに行くために、毎日のように大学行ってるんだよ。
一年下のヤツらもスタート切ってるから、肩身が狭い。


息抜きは、月二回に減ったスタジオでの練習。
タイコ叩いてる時だけは、就活も兄貴のことも忘れて、夢中になれるんだ。




「あ、そうや。私、夏からアメリカ行きますわ」


練習終わって、ファミレスで晩御飯食べてる時、笙が言った。
あまりにも軽く言うもんだから、うっかり「へー」で流しそうになった。


「お、合格したんか、特別講座。ま、お前やったら楽勝やろけどな」

「うん、本講座は九月からやけど、その前に一ヶ月、学内の英語学校行く予定。
 奨学金も取れたし、貯金も目標額達成したから、なんとかなると思う」


おい、要。お前、いいのかよ?
一年ちょっと、いなくなるってのに、何、ニコニコしてるんだ?

お前、笙のこと、好きなんだろ?
遠くに行っちゃったら、どんどんチャンスは減ってくぞ?

まぁ、俺は目の前でくっつかれるのは、ちょっと悔しいからいいけどさ。



「ずっと頑張ってたから、合格できてよかったよね。
 あの講座なら、笙の研究したいことは、思いっきりできるんじゃないかな」



......自分が進学を諦めた分、笙には好きなことさせたいってわけか。
お前らしいけど、向こうの男に盗られる心配はしなくていいのか?


日本だと、同年代の男は、笙には行かない。
身長とか、そんな問題じゃなく、いろんな意味で負けるから。
でも、向こうなら、そんなこと関係なく、モテそうじゃん。

多少、胸と尻は足りないかもだけど......。

笙にバレたら、説教されそうなことを考えてたら、またサラッと笙が言う。



「ってことで、要が浮気せんように、みんなで見張っててね」



?????

は?え?何?



「自分ら、いつからつきおうてんねん?!」


昇平が叫ぶ横で、要が困った顔になった。

烈は烈で、俺と同じ。驚いて、固まってる。


「ん、今年入ってすぐやけど、みんな知らんかったん?」

「「「聞いてない!!」」」



笙が、要をじっと見てる。

要の困り顔が、どんどんひどくなってる。


「自分で言うて言い張ったから、私からは何も言わんかったのに。
 みんな知ってて、そっとしてくれてんのかと思ってた」

「ごめん。照れくさくて、どうしても言えなくて。
 みんな、気づいてると思ってたし」



あーあ、もう。完全に尻に敷かれてるじゃん...。

ここは、助け舟出すしかないか。


「要の性格考えたら、言いにくいのわかるよ。
 そういう話題、苦手だしね。俺たちは怒らないから、笙も叱らないでやって。
 まぁ、ダブルで「おめでとう」かな」

「ん、俺も、全く気づいてなかった。二人とも、態度変わらなかったし。
 要のこと呼び捨てにしたのも、さっきが初めてじゃない?」


烈が乗ってくれて、昇平も続く。


「心配せんかて、浮気なんかでけへんって。
 そんな男やったら、お前、つきおうてへんやろ?」

「うん......」

「きちんと報告して、筋通したかったんは、わかるけどな。
 それはそれやんか。
 要も初めての彼女で、勝手がわからんのや。
 許したれ、な?」



さすが、幼馴染だけあるよ。
笙が何に対して怒ってるのか、すぐに気づいてる。

そして、大阪人特有なのかもしれないけどさ。
「それはそれ」って、普通は説得にならないような言葉で、笙もなんとなく収まってる感じ。



プッと軽く吹き出す音が聞こえた。
烈が笑うの我慢できなくなったみたいで、手で顔を隠して肩を震わせてる。


「それはそれって...何がどうなってんのか...」


やっぱり、そう思うんだ。
四年目に入っても、俺たちは、まだまだ大阪ノリに、完全には馴染めてない。


俺も、可笑しくなって、でも、笑うと笙がキレそうで、必死で我慢。
ただ、笑っちゃいけないと思うと、余計に笑いたくなるのって、人間の生理かな。



「もう、いいですよ。キレたりしませんから、好きなだけ笑てください」


笙が、いつもの冷静なトーンで、譲ってくれた。

途端に、俺も烈も、声出して笑っちゃった。

昇平も、自分で言ったのに、冷静に考えて可笑しくなったみたい。
一緒になって笑っちゃってる。




「報告、遅くなって、ゴメン」


俺たちの笑いが引いてから、要が改めて頭を下げた。



「くっつくだろうな、とは思ってたし、報告義務なんかないんだから」


ニコニコと烈が返事する。


「そーそー、謝らんでええって」


昇平が、すかさず続く。


「うんうん、要くらい大人じゃないと、笙の相手は無理でしょ」


俺も二人を祝福しようと、言葉を続けた。



なんでかはわからないけど。

さっきまで、要を好きで、くっつかれたら悔しいとか、思ってたはずなのにさ。
心が痛くならなかったんだよね。

それどころか、ほんとによかったな、そう思ったんだ。


これ以上に似合いのカップルって、そうそういないよな、とかさ。
お互いを認めあって、助け合って、高めあってって、最高じゃん?、とか。

素直にそう思えて、嬉しいとさえ思ったんだよね。
自分でも、すっごく不思議なんだけどさ。






「思ってたより、落ち込んでないみたい」


マンションに帰ってから、烈が顔を覗き込んできた。
俺が要のこと好みだって知ってたから、無理ないか。


「うん、自分でも驚いた。でも、素直に「よかった」と思ったんだよ」

「落ち込むほどじゃなかったってこと?」

「ノーマルだし、友達だしね。思ってたより、本気じゃなかったってことかな」

「相手が笙なのは、納得できた?」


ああ、笙が入ってきた頃、ボロクソに言ってたもんな。
要が褒めてるのも、気に食わなかったしさ。


「最初の頃だけじゃん、文句言ってたの。
 もう認めてるのは、わかってるだろ?」


烈が、ニッコリ笑って頷いた。


こいつが、他人、それも女のことを心配するなんて、想像もつかなかったよなぁ。

笙から始まって、彩花ちゃん、サークル、学科、バイト先の先輩や同期に後輩と、喋れる範囲が広がってった。
中には勘違いするバカもいたけど、笙が注意したり、烈も対処法を覚えて、かわすようになった。

そうこうするうちに、社会性が身について、きっちり就活も成功させた。


兄貴の気持ちが、少しわかる。

烈が成長するのは嬉しい、だけど、頼ってくれなくなるのは淋しい。
矛盾するようだけど、同時に湧いてくるもんなんだな。


「れーつー、俺のこと、置いてかないでー」


本音がバレないように、冗談ぽく、烈に抱きついて。
烈は、「はいはい」って、頭撫でてきて。


撫でられながら、つい、先のことを考えたら、怖くなってきてさ。


残り、一年。

就職浪人するのだけは、イヤだなぁ。











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