「True Colors」
青天霹靂

青天霹靂 4

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ふと、兄貴が結婚した時のことを思い出した。


『あの人、おにーちゃんを脅迫したらしいし』


もしかして、このことをネタに脅してたのかな。

そう思いついた瞬間、頭に血が上るのを感じた。



「兄貴、奥さんにバレてる?」


あ、図星。

兄貴の眉間に、皺が寄った。


「ああ、女の勘って鋭いな。
 しつこいから、一度だけ乗って終わろうとしたら、コウセイの名前出してきた。
 そこからズルズル続いて、妊娠したって言われてさ。
 ......完全に詰んだ」



吐き捨てるように言うのを見てて、当時の兄貴がどれだけ悩んだか伝わってくる。

コウセイにバレたら、バンドは続けられなくなる。
元々、他の四人とは仲良くないんだから、完璧に亀裂が入るのは、俺にだって予想はつく。


「コウセイに迷惑がかかるのは、死んでもイヤだった。
 今となっては、さっさとバラして、脱退しとけばよかったと思ったりもするけどな」


兄貴は、自嘲気味に笑ってる。

あの人の執念とか執着が気持ち悪くて、吐き気がする。


そんなことしてまで、兄貴が欲しかったわけ?
俺がガキだから、理解できないのかもしれないけど。
いくら頑張っても振り向いてもらえないからって、惨め過ぎだろ。

今だって、避けまくってるじゃん?
春樹を溺愛してるのは、代替行為ってわけ?



兄貴が、奥さんや自分の現状を、淡々と説明する。
その中には、メンバーの話もあった。


「俺以外のメンバー四人は、家族ぐるみで仲がいい。
 子どもは、みんな同年代で、春樹と同い年が二人いてさ。
 そういうのもあって、不満タラタラなんだよね」

「は?意味わかんない。何が不満なのさ?」

「自分がちやほやされない状況が、我慢できないみたいだよ。
 四人とも、瞳より美人でスタイルもいいんだけど、トップアイドルのプライドなんだろうね。
 ユージとコウセイの嫁なんか、アメリカ人だから、日本のアイドルなんか知るわけないのにさ」


あー、自分が中心じゃないと、我慢できないタイプかぁ。
男でもそう言うのいるけど、アイドルなんかやってるんだから、強烈なんだろうな。

俺がノーマルだとしても、絶対に関わり合いになりたくないタイプ。
兄貴は、俺よりキャパが広い分、まだ我慢できてるんだろうな。



「まぁ、コウセイのことがなかったとしても、俺が迂闊だったのは間違いない。
 子どもがいる以上は、責任があるのは、理解はしてる。
 ちぃにも叱られるし、それは忘れてないからね。
 俺のことはいいから、就活、頑張れ。
 意地張らずに、どうしようもなくなったら、連絡してこいよ」


最後の方は、落ち着きを取り戻して、いつもの兄貴に戻ってた。






「おかえり」


マンションに戻ると、烈はリビングでビデオ見てた。
SMSのライブだ。

ちょうど、アンコールだったみたいで、エイチがシークレットトラックを歌ってる。

この曲、すっごく切なくて沁みるんだよな。
烈も俺も、大好きな曲だ。

要が歌ったら、どんな感じになるんだろう。
次の練習で、提案してみようかな。



「ただいま。みやげ、あるよ。兄貴が二人で食べろって」


持たせてくれたのは、ホテル特製焼き菓子の詰め合わせ。

俺も烈も、酒が飲めないからか、甘いモノが好きなんだよね。
笙は、女だけど甘いモノがダメらしいから、酒飲んだら強いのかも。



先のこと考えて、分不相応な買い物をしなくなってたから、こんなスイーツは、ものすごく贅沢。

烈が紅茶を淹れてくれて、二人で味わう。


「お兄さんに、お礼言っといてね」


烈は、俺の様子がおかしいのは気づいてる。
でも、俺が言わないから、何も聞かない。

それがありがたい時もあるけど、今夜はなんだか淋しかった。



兄貴の片想いは、いくら烈でも話せない。
信用してるんだけど、なんか言いづらくてさ。

ただ、ゲイだってカミングアウトしたことと、兄貴は勘づいてたってことは、話しておいた。
それと、仕事や家庭で息苦しくなって、弱ってるってことも。



「やっぱさ、仲がいいから気づいてたんだろうね。
 でも、気づいてない振りしてたのは、優しいからでしょ?
 ナナん家ってさ、ほんと、お互いのこと大事にしてるしさ」

「ん、そうかもな。お前や笙の話聞いて、よくわかったよ。
 昇平にも言われたけど、ほんと、俺って末っ子の甘ちゃんだった。
 だから、落ち込んでる兄貴見て、俺は大丈夫だって安心してもらいたかったんだ」



烈の綺麗な顔が、ふわっと笑ってて、すっごく優しい。

お前、そんな顔もできるようになったんだな。
頑なで無表情だったなんて、もう誰も信じないよ。



「ナナといると居心地がいいのは、干渉してこないからだと思ってたけど。
 家族と仲良くて、芯は素直で優しいからなのかもしれない。
 最近、そう思うようになった」

「そっか。ま、少しは、俺も成長したと思っていいのかもね。
 昇平や要、笙に影響されたってのも、かなりあると思うしさ」

「それは、俺も同じ」


顔を見合わせて、思わず笑っちゃった。


うん、俺たちのメンバーは、テクだけじゃない、人間としても最高の部類に入るよな。
一緒に演ってられるのは、ほんと、ラッキーだったんだ。


「下手くそとは演りたくないって、今考えたら、上からだったよね、俺。
 思い出したら、恥ずかしくなるよ」

「ああ、昇平から誘われた時のことか?
 俺も同じこと思ってたし、お前は気にしなくていいんじゃないか」



それから、二人で大学に入ってからの思い出話で盛り上がった。

希望の内定もらって、卒業までは単位を取るだけになった、烈。
まだ一つも内定取れずに、でも、兄貴にカミングアウトしたことで、一つ山を越えた、俺。

二人とも、いい感じで肩の力が抜けて、話してて、楽しくてさ。



「そっち行っていい?」


盛り上がった反動か、一人でこのまま寝るのがイヤで、ローテーブルを片付けてる烈に聞いてみた。

烈は、素直に頷いてくれた。


「ん、片付けとくから、先にシャワー浴びといて」




肌を合わせて、熱が引いた後、湧いてきた感情は「感謝」。

さっき、盛り上がって喋ってて、いつもいつも、烈がいてくれたって、気がついたんだ。
淋しくても、辛くても、こいつがいてくれたから、俺、どん底まで凹まずに済んでるんだって。



「ありがとな、烈」


疲れて、もう眠ってる烈に、小声で礼を言う。
いつもなら、自分の部屋へ戻るんだけど、今夜は、このままくっついて寝よう。

そんな気分なんだ。











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