「True Colors」
青天霹靂

青天霹靂 3

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兄貴が、ずっと片想いしてる。
それも、相手は、男で、バンドのメンバーで、ノーマル。

表面だけ見たら、俺だって同じ立ち位置じゃん?
でも、その時は思いつかなくて、兄貴が弱ってるのがたまんなくてさ。


「にーちゃんが気持ち悪かったら、俺なんかどーすりゃいいんだよ?!
 どうせ、気づいてんだろっ、にーちゃんもねーちゃんも」



ああ、言っちゃった。
もう少し後のつもりだったのに。


せめて、俺が就職して、一人前の社会人だって、胸張れるようになってから。
その時は、はっきり言うつもりだったんだよ。
期待させるのも、秘密持ち続けるのも、どっちもつらかったし。

それにさ、二人とも、薄々は気づいてるんじゃないかって、思うようになってた。
きちんと言おうって決めてから、あれこれ考えてるうちに、なんとなくそんな気がしてさ。


兄貴は、俺のことを気持ち悪いとは、絶対に思わない。
それは、兄貴がバイじゃなくても、きっとそうだったと思う。

だって、兄貴優しいもん。
ずっと、俺たちの一番の味方だったもん。


ガキだったから、バレたら気持ち悪がられるとしか考えられなくて、すっごくびびってた。
でも、こっち来て、冷静になってから、自分でヤる方法教えてくれた時のこと、思い出したんだ。
女の裸にピンと来ないのは、ガキだったからじゃなくて、俺がゲイだったからなんだ。
兄貴は、それに気がついてたから、哀しそうだったのかもしれないって。

俺が生きづらくなるだろうって、兄貴はわかってたってことだよな。


んでさ、姉貴もさ、「彼女できたのか」とか、一度も聞いてきたことないの。
小学生の時は、バレンタインにチョコもらって帰ったら、からかってきたりしてたのに。

俺、なーんにも考えずに、部屋の掃除とか手伝ってもらってた。
普通なら、エロ本だのエロビデオだの、こっそり隠すらしいんだよな。
ゲイ雑誌なんか、怖くて買えなかったから、隠すモノはない。
いわゆるHなテレビ番組を、見たがったりもしない。


あの、マジメそのものの要だって、お袋さんに見つかって恥ずかしかった話をネタにしてる。
そう考えたら、俺、バレバレだったんじゃないかなって。




兄貴が、失敗したって顔になってる。

やっぱり、俺がゲイだって気づいてたんだ。


「なな、ゴメン」

「謝らないでよ。にーちゃんが、バイだったのは驚いたけどさ。
 俺がゲイだって気づいてたなら、気持ち悪いとか思うわけないってわかるよね?
 それとも、男しかダメってのは、やっぱり気持ち悪い?」

「そんなわけないだろ!」


うん、兄貴ならそう言うよね。
この場に姉貴がいたら、同じように言ってくれるはず。

筋金入りのブラコンシスコンなんだ。
二人がどう思うかなんて、自信ありまくり。


「だったら、変なこと聞かないでよ」

「うん、ゴメン」

「また謝る...もういいってば」



兄貴が椅子にもたれかかって、目を閉じた。

目の端からは、涙が溢れてくる。



「俺、何やってるんだろうな。
 お前たちにだけは、カッコよくて強い兄貴だと思われたかった。
 情けない恋愛話なんか、絶対に、聞かせたくなかったのに」


何も言えなくて、しばらく、兄貴の顔を見てた。
俺にはどうしてやることもできない、それが悔しくて、すっごく切なくてさ。

そっと立ち上がって、兄貴の後ろに立つ。
前に腕を伸ばして、肩から抱きしめて、頭にほっぺたくっつけた。
ガキの頃、こんな感じで、よく甘えてたな。

でも、今は違う。



「気が抜けちゃったからでしょ。
 姉貴は、いいとこに就職して、いい人と結婚した。
 俺は俺で、もう少しで社会人だしさ。
 今は、まだ偉そうなこと言えないけど、もう無理しなくていいんだよ。
 向いてない芸能人やるのも、好きでもない相手と結婚してるのも。
 兄貴が無職になっても、俺と姉貴で面倒見るって決めてるんだから」



初めて「兄貴」って、本人の前で言葉にした。
にーちゃん、ねーちゃんって呼び続けてたら、いつまでも子ども扱いされそうで。


兄貴は、俺の腕を軽く叩きながら、何度も頷いてた。
結婚してから、困った顔は何度も見てきたけど、こんなに弱ってる兄貴は初めてだ。



「兄貴は、やりたいことないの?
 まだ二十六じゃん。バンドだって、つらいなら抜けちゃえよ。
 俺よか頭いいんだから、今からだって大学行ったっていいじゃん。
 それか、海外にでも留学しちゃうとかさ。俺、遊びに行くよ」


言いながら、兄貴が、絶対に逃げ出したりしないのは、わかってた。
そんなことができるくらいなら、俺たちの面倒見たりしてないもんね。


社長さんには、恩がある。
バンドには、迷惑かけたくない。
その板挟みで、悩んで悩んで、結局はメンバーに嫌われて。

まさか、その中に好きなヤツがいるとは思ってもみなかったけど。
だったら、余計に悩んできたのは、間違いない。





「ありがとな。俺には、お前やちぃがいる。
 別々に暮らしてたって、兄弟なのは変わらない。
 いい加減、妹離れ弟離れして、お前たちのこと、大人だって認めなきゃな」



しばらくして、兄貴がやっと口を開いた。

さっきまでの弱々しさは、だいぶ薄れて、明るさが少し戻ってる。


「いつまでも、兄貴に頼ってちゃ、情けないでしょ。
 俺みたいな甘ちゃんでも、そのくらいは考えるよ。
 ...俺は兄貴みたいに、女は抱けないから、子どもは見せてやれない。
 知ってると思うけど、ゲイのつきあいって長続きしないからさ。
 俺の方が、一生、一人ぼっちの可能性が高いんだよ?」

「その時は、俺と一緒に住むか。老後は二人で海外移住とかな」


兄貴がクスッと笑って、からかうように返事した。
体を離して、正面の椅子に戻る。


「いいね。兄貴も俺も暑がりだから、涼しいとこにしようよ」



そんな日は、来ないだろうと思いながら、話を続けた。
俺には無理でも、兄貴にはもう家族がいる。

春樹が一人前になるまで、あと何年かかるだろう。
姉貴が言ってたように、責任だけは取るつもりだろうし。


もしかしたら、今の奥さんが諦めることもあるかもしれない。
コウセイに想いが通じることはなくても、吹っ切れて、他に好きな人ができるかもしれない。

可能性は低くても、ゼロじゃないんだ。


だけど、今は、兄貴にそんなこと言えない。

ずっと頑張って張りつめてたのが、少しずつ緩んできてるんだろう。
俺と姉貴のためって目標が消えて、自分のためには、何をしていいかもわからなくなって。


今の好きな相手には、絶対に想われることはないんだろう。
でも、顔を合わせなきゃならないから、なかなか諦めがつかない。

確か、公表してないけど、他のメンバーも、全員が結婚してて子どもがいるんだよな。

コウセイって、兄貴みたいにバイってわけでもなさそうだし。
見た目は、兄貴といい勝負で美形で中性的って言うヤツ?だけど。

以前、ユージとできてるんじゃないかって、噂になったこともある。
好奇心で聞いたら、大笑いして教えてくれたよな。


『絶対にないよ、二人とも女の子大好きだからさ』


あの時、普通に笑ってると思ったのは、兄貴の演技に騙されてたってことか。
俺と姉貴の前では、素でいるんだと思ってたけど。


まぁ、俺だって、必死で隠してたんだから、おあいこかな。




「淋しいなら、いつでも電話してよ。
 遊んでばっかじゃ、体保たないよ」

「今さら、キャラ崩せなくてなぁ......」


ほんと、不器用なんだよね、うちの兄貴って。











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