「True Colors」
青天霹靂

青天霹靂 1

 ←柳緑花紅 12 →青天霹靂 2

姉貴の結婚式から三週間後、社労士試験の合格通知が来た。
これで実務経験を二年積めば、社労士の登録ができる。

学科試験の合格だけでも、就活には有利になるはずだから、合格できてホッとした。


そう、情けないけど、まだ就職決まってないんだ。
先輩からのアドバイスで、公務員試験の勉強も始めたところ。
社労士とかぶってる部分も多いし、一般教養試験は大学受験科目とあんまり変わらない。

倍率が高いのはわかってる。
でも、来年の試験を受けるまでに、内定もらえなかったらって考えるとさ。
公務員試験もありかもしれないって、思ったんだよ。
どんな機会でも、必死で掴まなきゃ。

その先輩は、元々、公務員志望で、地元の「地方上級試験」に合格した。
話を聞いてて、今時は、公務員も楽じゃないって知ったけど、逆に面白いかもって思ったし。




そんな話を昇平と学食でしてるところに、烈と要がやってきた。
二人ともスーツ姿で、烈はわかるけど、どうして要までって、昇平と二人でポカンとした。


「先生のお供でもしてたんか?」


昇平の質問に、要は頷かなかった。


「俺も、就活始めたんだ」


驚いて、俺も昇平も、たっぷり十秒は固まったと思う。





「は?お前、院試受けるんちゃうんか?」

「学者になるんじゃなかったのかよ?夢だったんだろ?」


固まった後、二人とも矢継ぎ早に聞いちゃって、要は困った顔になった。

烈が、苦い顔して、俺たちに注意してくる。


「事情があるに決まってるじゃん。ちょっと考えたらわかるだろ?
 要が可哀想だから、こんなとこで責めるのやめなよ」


事情......あ、お母さんが乳ガンの手術したんだっけ。
いくら応援してくれてても、医療費とか考えたら、好き勝手できないよな。

要は優しいし、母子家庭の一人っ子長男なら、お母さんを安心させたいだろうし。


「ああ、ごめんな。あんまり驚いたんで、つい聞いちゃって。
 業種なんかは決めたのか?」

「うん、できれば、義肢の会社に行きたいと思う。
 今は過渡期だから、就職してからの実務経験でも、義肢装具士の資格は取れるし」


ギシソウグシ???


「笙に誘われて、障害者スポーツイベントのお手伝いに行ったんだ。
 そこで、足や手が動かなくても頑張ってる人たちを見て、応援したいと思った。
 俺、元々、医療社会学専攻だろ?データとして、従事者が不足してるのは知ってたからさ」

「つまり、ギシってのは、義足とか義手って意味?」

「そうだよ。日本だと、小さな会社が多いけど、最大手の会社が大阪にあるんだ」

「地元には帰らんでええんか?」

「帰っても、この不景気だからね。大阪より、もっと就職は厳しいんだ。
 うち、ほんっと田舎だから、結局は実家からは通えないしさ。
 だったら、希望してる会社もあるし、大阪で就活しようと思ってね。
 母にも、それは相談して、納得してもらってる」



神崎さんのお母さんを思い出した。
何度も何度も「安心よね」っておっしゃってたよな。

夢を応援したくても、自分がガンなんかになっちゃったら、不安にもなるだろう。


「お袋さん、仕事復帰したんちゃうんか?」

「一度は復帰したんだけどね。やっぱりきつかったみたいでさ。
 途中までしか腕は上がらないし、すぐ疲れてしまうしね。
 祖父の遺産と父の遺族年金で、母一人の生活はなんとかなるから、仕事は諦めたみたい」

「研究者で定職に就くのって、時間かかるもんね。
 要が決めたんなら、応援するよ。
 ま、まだ決まってない俺が言うのもおかしいけどな」



その時、烈が何か言おうとして、途中で止めた。



んと、この雰囲気で遠慮したってことは......。


「内定、もらった?」


烈が、申し訳なさそうに、頷いた。

でも、俺は、僻む気にも羨む気にもならなかった。
素直に、よかったなって、そう思えたんだ。



「おめでとう!よかったじゃん!!」

「よかったなぁ。希望してたとこか?」

「烈、おめでとう。よかったね」


三人で大喜びしてると、烈がすごく恥ずかしそうで。
それでも、小声で「ありがと」って、返事した。


「子会社だけどね。システム関連の資格が役に立った。
 データ流出を防ぐために、親会社のデータ管理とかするんだ。
 外注してたけどトラブルが多いからって、ちょうど立ち上げたとこ。
 タイミングよかったと思う。ラッキーだったよ」

「会社のデカさより、業種にこだわったんか。烈らしいなぁ」


昇平の言い方が、なんだかオジサン臭くて、笑っちゃった。
不思議そうな顔するけど、お前、自覚ないの?


「見た目、すっごくチャラいのに、たまにオジサン臭いよね」


烈もそう言って笑って、要もうんうんと頷いてる。


「やかましいわ。俺なんか、もう親父の会社で修行中やねんぞ。
 地元のおっちゃん連中相手にしてんねんから、しゃあないやんけ」


それがオジサン臭いんだってからかってたら、笙と彩香ちゃんが近づいてきた。




「誰が騒いでんのかと思ったら」


笙は呆れた口調だけど、顔は笑ってる。


「笙、ありがとね。ほんと、助かった」

「私は情報持ってただけですやん。内定取ったんは、烈さんの実力」


え?どういうこと?


「子会社立ち上げる話は、笙から教えてもらったんだ。
 俺に向いてるかもって、メールくれたから、すぐに申し込んだんだよ」


まただよ。
こいつには、何回、驚かされたらいいんだ?!

たかだか大学一年、十八歳で、どんな情報網持ってんだっての!


「ああ、お前やったら、なんかわかるわ」


昇平が納得してるけど、俺は、まだ驚いたまんま。


「要さんは、もう業種絞ってるし、あそこの会社なら大丈夫でしょ。
 七海さん、何か希望職種とか業種とかあれば、探しましょか?
 プライド傷つくようなら、止めときますけど」




ここで、意地を張るのは、ガキっぽいとは思う。

それでも、ずっと頼りっぱなしは情けない。
今までも、結構、こいつに頼んだりしてるもんな。



「ありがと。でも、ギリギリまで自分の力で頑張ってみる。
 どうしてもダメな時は、お願いするかも」

「やっぱり、七海さんや。そんな気があれば、とっくに言うてきてはりますよね。
 情報以外でも、何か私で役に立つことがあれば、遠慮なしに連絡ください」


あー、こいつ、やっぱり、よくわかってるなぁ。



コネとかに頼るつもりなら、さっさと兄貴に頼ってる。
頼らないでいるのは、俺が自立しようと頑張ってるって意味に取ったんだ。


笙、それ、正解だ。
わかってくれて、ありがとな。


もう、兄貴にも姉貴にも頼らずに、一人で生きてく覚悟を決めたんだ。

姉貴が結婚した時、お袋にも誓ったんだし。
神崎さん一家にも、迷惑かけないって、頭下げたんだよ。



んー、でも...お前、頼られてばっかで、つらくないか?
もしさ、俺にできることがあったら、いつでも言えよな。


お前にできなくて、俺にできることがあるとは思えないけどさ。











にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ 3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ 3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ 3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ 3kaku_s_L.png True Colors
総もくじ 3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ
総もくじ  3kaku_s_L.png SOLD OUT
総もくじ  3kaku_s_L.png Double Fantasy
総もくじ  3kaku_s_L.png Blue Sky,True Mind
総もくじ  3kaku_s_L.png Happiness!
総もくじ  3kaku_s_L.png True Colors
総もくじ  3kaku_s_L.png Crossroad
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【柳緑花紅 12】へ
  • 【青天霹靂 2】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【柳緑花紅 12】へ
  • 【青天霹靂 2】へ