「True Colors」
柳緑花紅

柳緑花紅 8

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「ヤクザ?!マジ?」

「だから、噂だって。インディーズ時代って短かったしさ。
 こっち来たらわかるかもと思ってたけど。
 由人にも昇平にも、そこら辺は聞いてもはぐらかされてたんだ。
 笙が入学した時に忠告されたろ。んで、やっぱりそうなのかもしれないって...」



SMSのインディーズ盤は、もう廃盤になってる。
烈みたいな熱心なファンでも持ってない。


メジャー1stと2ndでは、ガラッと音が変わったよな。
主導権が、宗次郎さんからエイチに移って、ごちゃごちゃ揉めたらしい。
話し合って解決した後、三枚目からは全員で音作りするようになったって、兄貴から聞いた。

確か、HAKONIWAがデビューした直後のイベント、事務所全体のヤツ。
それまで公開してなかったのに、エイチがレンの息子だって、宗次郎さんがMCで言ってたよな。
姉貴とテレビで見てて、すごく驚いたの覚えてる。

あの時、エイチはアップになっても、無表情のまんまだった。
それまでと同じように、淡々と弾いてただけだった。

そのイベントの後から、SMSの音は変わったんだ。
単純なノリのパンクっぽい音だったのに、急にポップになって、CMにも使われてた。

烈も1stは好きじゃないらしい。
2ndで気になって聴き始めて、それ以降、どんどん進化していくのにハマったって。





「笙がメールだけって言ってただろ?
 会うのはマズいんだよ、たぶん」

「なんでだよ?別に会うくらいはいいだろ?」


烈が軽く首を傾げて、小さく横に振る。
わかってないなぁって、心の声が聞こえてくる。


「笙の親父さん、警察官じゃん」

「あ......」


さすがの俺でも、その意味はわかる。

そして、笙自身だけじゃなく、SMSにとってもマズいってことだよな。
ほんと、鈍いな、俺。



「インディーズ時代のことは、雑誌にもほとんど載らないんだ。
 今は、公式サイトもやってるけど、同じように載せてない。
 アルバム出したことだけかな。
 だから、SMSのスキャンダルには、なってないんだよね。
 まぁ、事務所の力が強いから、揉み消しも可能でしょ」

「事故に遭った後の消息は不明ってことにしないと、SMSにとっても不利だよね」

「うん、SMSは、大売れしてるわけじゃないけどさ。
 Quiet Lifeに、とばっちりが来ると、事務所も困るんじゃないの? 
 一番売れてるし、レンとルイはプロデューサーとしても売れっ子じゃん」


昇平や由人は、いろいろ考えて、俺たちに釘を差したってことか。
隠し通そうと頑張ったのは、さすがに影響がデカすぎると判断したんだな。

ほんとにヤクザだとしたら、スキャンダルだけじゃない、俺たちがヤバい目に遭う可能性だってある。

とっさにそう思ったけど、それはすぐに頭から消した。
笙が信用してる人なら、そんなことはしないだろうって、素直に思えたから。




「今日、笙が名前を出したってことはさ。
 俺とナナのこと、信用してくれたからだと思う。
 それに、ナナにとってもヤバいネタだろ?
 他には喋らないって、自信があるんじゃないかな」

「そうだよな。忘れそうになるくらい、知らん顔してくれてるけど。
 兄貴のこと、笙は知ってるんだもんな。
 HAKONIWAのプロデューサーはルイだし、兄貴に影響が出るのはマズい」



話してて、笙の顔が浮かんだ。
嬉しそうに喋ってたけど、「メールだけ」って時は苦笑いっぽかった。

会いたいけど会えない、でも、メールだけでも繋がってるのは嬉しい。

そんな感じなのかもしれない。


「可愛いとこ、あるよな。凄いとこばかり見せつけられて、びびってたけどさ」

「うん、あいつさ、冷静だけど冷めてるわけじゃないんだよね。
 興味を持ったことや、仲間に対しては、すごく一生懸命になるし。
 体弱いのに、いろいろ頑張ってるだろ。俺、自分が恥ずかしくなったもん」


烈にここまで言わせるって、相当だよなぁ。
ずっとそばにいたのに、俺にはできなかったことを、笙は、サラッとやってのけたんだ。


「話してくれたからって、こっちからは聞かない方がいいよ。
 調子に乗って、地雷踏むのは怖いしさ。
 それに、せっかく信用してくれたんだから、応えたいと思うんだ」

「ああ、わかってるって」


烈が、俺以外の他人を気遣ってる。
少し淋しい気がしたけど、そうしろって言ったのは、俺。



なんだろ、子離れできない親みたいなもんかな。

烈は、俺の方が社交的で大人だと思ってる。
高校の時からの立ち位置や習慣が、そのままになってるからなんだけど。

笙のことがなかったら、俺自身、そう思い込んだままだったろう。

実際は、烈の方が先に進んでて、俺はすごくガキのまんまなんだよな。



「一人は気楽でいいと思ってたし、特に淋しいとも思ったことなかったけどさ。
 あいつ見てると、楽に逃げてるだけなんじゃないか、そう思うようになった。
 だからって、大人数で騒ぐのとかは、やっぱ苦手だけどね」

「それは、仕方ないんじゃない?性格や、向き不向きもあるんだしさ。
 バンドメンバーと飲み会やったり、バイトやってるだけでも、かなりの進歩じゃん!」


俺は、正直に思ったことを言っただけなんだけど。
烈は、嬉しそうに笑ってる。


「そう思う?俺も、実はそう思った」

「ああ、俺の背中に隠れてたのが、嘘みたいだよ。
 同じ高校のヤツが見たら、絶対にびっくりするって」


烈が嬉しそうなの見てると、俺まで嬉しくなって、もっと喜ばせたいって話し続けた。
自覚なかったけど、俺も影響受けてるんだろうな。

他人が嬉しそうだと自分も嬉しいとか、他人を喜ばせたいとか、考えたこともなかったんだよ。


兄貴と姉貴しかいなかった、小さな小さな俺の世界。
表面だけのつきあいでも、なんとかなるって、ずっと思ってた。

でも、あの兄貴ですら、エイチみたいな友達がいる。
飲みに行って、俺のこと喋るって、相当、信用してるってことだよな。


烈だけは特別だったけど、干渉してこないから楽でいいって思ってた。

その烈が、少しずつだけど、変わってきた。
だからって、烈が鬱陶しいとは思わない。

ってことは、俺だって、少しは成長したって思ってもいいよね?



「ナナだって、変わってきたよね。
 以前なら、俺が注意めいたこと言うと、不機嫌になってスルーしてたのに」

「え、俺って、そんなだった?」


焦って聞き返すと、烈は黙って頷いた。

自覚ないって、恥ずかしすぎ。
守ってやってる意識が強くて、注意されてプライド傷ついたのが顔に出てたのかぁ。


「お互いさ、冷めた顔してても、ガキだったんだよね。
 それじゃマズいって、社会に出る前に気づいてよかったんじゃない?」


今度は、俺が頷く番。

ほんと、俺って客観性に欠けてたんだなって、しみじみ身に沁みた。


「昇平と要が大人だったから、バンドが上手く回ってたんだよなぁ。
 笙が加入したことで、やっと気づいたってところか」



またまた、反省リピート。











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~ Comment ~

NoTitle

いやいや七海くん。
その年で気付けたことはラッキーだったと思うよ。
気付かせてくれる人が周囲にいたことも含めて、ね。

私は、今でも自分の性格を自分で掴み切れてないのよ。。

それにして・・、いえ、それにつけても。 笙さん!
後ろをついて歩いて、ちょっとでもスキル吸収したい~~~っ!!
学生になるにはちょっとトウが立ってるけど、大丈夫(エヘン)。


こちらはもう秋の気配。虫の鳴き声が蝉のほかコオロギも加わって朝晩涼しくなってきています。。

Re: NoTitle

一般論として、男の人って客観性に欠けるところがある気がするんですよ。
外見だけじゃなく、能力にも、無意識に自分で下駄を履かせてる人が多い...。
友人のゲイの子たちは、結構、シビアに自分のことをわかってるんですけどね。

七海の場合、若いし、世間が狭いしで、やっとラッキーチャンスが回ってきたということで(笑)

自分が思ってる性格と、他人から見た自分。
大なり小なり、ズレは生じてくるものです。

私自身、歳を取って、どんどん変わってきてますしね。
神経質で几帳面と呼ばれていたのが嘘のように、ゆるーく適当になってます(笑)
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