「True Colors」
柳緑花紅

柳緑花紅 5

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俺一人、ガキなんだって、ずーんと凹んだ。
くよくよしない性格だと思ってたけど、今回だけは、すぐに立ち直れそうにない。


コミュ障かと思ってた烈の方が、よっぽど他人のことわかってた。
将来のこと考えて、少しずつでも社会に出る訓練を始めてる。

そんで、それを助けてるのは、年下の笙。
烈の性格と能力を見極めて、向いてるバイトを紹介したりなんかしてる。


つまり、姉貴からの受け売りを、上から目線で忠告してた俺なんかより、的確な行動取ってるってこと。


その上、要に対して「いいなぁ」程度だと思ってたのに、女がチラついたら、すっごく焦ってる。
焦るだけならまだしも、不機嫌になって、無自覚に出しちゃってるって、烈に指摘された。

本気で堕とす勇気もないくせに、要の恋路は邪魔したいって、どれだけワガママなんだよ。
それも、烈に言われるまで、邪魔してるつもりはなかったってさ。

どうやら、ゲイバレしてるらしいのに黙ってくれてるのも、敗北感が半端ない。





「俺、情けなさすぎ......」


思わず独り言が口をついて出た、昼休みの学食。

三年になってゼミが分かれたから、烈とはずっと一緒でもなくなった。
時間が合う時は学食で食べるけど、今日は別々。
要は午前中だけ講義で午後は研究会だとかで、学食に来たのは昇平だけ。



「どないしてん?珍しく落ち込んでるやないか」

「あー、いや、気にしなくていいよ。
 自分がガキだって思い知っただけだから」


昇平が、フフンと軽く笑った。


「笙やろ?」

「どうしてわかるんだよ?」


不意を突かれた形になって、隠すことができなかった。
とっさに言い返して、マズったと思ってたら、昇平が苦笑い。


「あんなぁ。あいつは並の人間ちゃうねんって。
 いくら年下でも、比べたらあかんで」

「お前でもそう思うわけ?」

「ああ。あいつは、俺やお前みたいな甘ちゃんやない。
 小学生の頃から、宗次郎さんのフォローしたりしてたんやで?
 とばっちりで、親父さんには無茶苦茶厳しくされてたしな」


甘ちゃんって言われて、俺、ムッとした。
お前みたいなお坊ちゃんと一緒にするなよって、思っちゃったんだ。


「貧乏してた時期があるくらいで、苦労してたんは、お兄さんやお姉さんやろ?
 お前は末っ子で、結局はぬくぬくしてただけやないかい。
 俺よりは苦労したかもしらんけどな」

「............」



詳しくは話してないけど、昇平も要も、俺ん家がちょっと複雑なのは知ってる。
すごく貧乏してたけど、兄貴が働いて成功して、今はそこそこの生活してるってことも。

悔しいけど、昇平の言うことは当たってる。

貧乏な時だって、お袋と三人、時には兄貴もいて四人で、いつも笑ってた。
お袋が死んでからは、兄貴と姉貴が頑張ってくれて、食べるのに困ったことはない。
俺自身は、家事やったりしただけで、高校受験だって、姉貴と違って塾に通ってた。



「あれだけのテクがあって、音大勧められても、舞い上がらへんかった。
 親父さんに言われて、好きなわけちゃうのに、ぶっ倒れるまで、マジメに剣道もやってた。
 バンドだけが息抜きで、親父さんにバレて、何度どつかれても、やめへんかった。
 楽器やスタジオ代はバイトして、自分で頑張ってたしな。
 能力だけやない。根性かって、並ちゃうで?
 それに、お前、矛盾してんの自覚してるか?」

「矛盾?」


考えてみたけど、俺の行動の何が矛盾してるのか、よくわからなかった。
昇平は、俺の顔をじっと見て、また口を開いた。


「お姉さんとは二つしか変わらんのやろ?
 そやのに、追いつかれへん、人間としての格が違う、そう言うてたやん。
 笙かって、二つしか変われへんやん。お姉さんと同じで女や。
 学力や家事能力は、お姉さんと同じくらいあると思う。
 せやのに、なんとか下に見ようとしてる」

「姉貴と一緒にすんなよ。姉貴は、すっげ美人で、あんな男みたいなわけじゃない!」

「ほな、見た目が彩香ちゃんみたいで、中身が笙やったら、納得できんのか?」


そう言われてしまって、途端に揺らいだ。
俺、なんとか笙の粗探しして、納得できないって言い訳してるような気がしたんだ。

よく考えたら、男みたいなのは、背の高さとファッションだけだよな。
顔は整ってるし、体型も華奢で、男らしくはない。
あれで、髪を伸ばして、それなりの服装したら、充分に「綺麗」な部類に入るだろう。


俺が考え込んだのを見て、昇平が小声で諭すように話してくる。



「要が可愛い言うてんのや、烈が仲良うしてんのが、気に入らんだけやろ?
 ガキやって自覚したんなら、まだマシやけどな。
 要とは、縁があるなら、くっつく時はくっつくし。
 烈がまともに喋るようになってるのは、笙やったら珍しいことちゃう。
 烈より気難しいおっさんでも、あいつにかかると魔法みたいに打ち解けるんや。
 弱み握られてるんを警戒するのもわかるけど、もう少し冷静に考えろや。
 仲良くせえとまでは言わん。せめて、顔には出すな。ええな?」


そこまで言うと、俺の返事も待たずに、さっさと立ち上がった。
普段、ヘラヘラしてるくせに、今日の昇平は、妙に迫力があって。

俺、さらに落ち込むしかなかった。





なんとなくさ。
昇平には、バレてるんじゃないかとは思ってたんだ。

俺がゲイで、要をいいなと思ってること。

さっきの言葉で、やっぱり気づいてたんだなって。

それでも黙ってくれてたのは、昇平はゲイに偏見持ってないってことだろう。
普通に、一緒にメシ食ったり、温泉入ったりしてたしな。


リーダーとして、メンバー同士がギクシャクしてるのは、困るよな。
俺を立てて、みんなの前では注意しないだけでさ。
向こうは、普通に馴染んでるし、烈が言う通りなら、俺が悪いんだし。





「どないしはったんですか?」


学食のテーブルに突っ伏してたら、聞き覚えのある声。
顔を上げたら、さっき名前が出た、彩香って子。


「具合悪いんですか?胃薬と鎮痛剤くらいなら持ってますけど」

「いや、体調が悪いわけじゃないから、気にしなくていいよ。
 今日は一人なんだね」

「学部違いますから、般教だけですよ、一緒なのは。
 毎日、会ってるわけでもないし」



ああ、そりゃそうだよな。

笙はうちに入ったから、この子は別の一年と組んだんだっけ。
練習で見かけないからわかるはずなのに、俺、思い込みで喋ってるなぁ。


「就活とか大変でしょうけど、体調には気をつけてくださいね」

「ありがと」


そう言うと、ニッコリ笑って会釈をしてから、学食から出ていった。
そばにいた野郎が何人か、「可愛い」ってコソコソ言ってるのが聞こえる。

俺もノーマルだったら、可愛いと思ってワクワクしたりするんだろうか。

あ、でも、あの子も只者じゃないんだよな。
見た目に左右されるのは、俺がガキって証拠かも。

もっと気をつけなきゃなぁ......はぁ。











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