「True Colors」
柳緑花紅

柳緑花紅 4

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笙が加入して、初めてのスタジオ練習。

バリバリにクラッシックをやってただけあって、スコアは当然読める。
どころか、初見でスラスラと弾いてみせやがった。

一応、昇平にいくつか質問してたけど、自分なりにアレンジしててさ。
要のヴォーカルを邪魔しない程度に、昇平とアドリブまでやってやがんの。


こういう時、ドラムって地味でつまんないんだよなぁ。

いや、好きだよ?好きだから、始めたんだしさ。
目立ちたいってわけでもないから、今まで、何の不満もなかった。


四人で二年組んで、楽しくやってたところに、女が来たのがなぁ。
ガキって言われても仕方ないけど、すごくイヤでさ。

それも、弱み握られてるわけじゃん?
俺としては、もう地雷って言うか、「近寄るな危険」状態なの。



なーのーにー。

他の三人は、すんなり受け入れてるんだよ。


昇平はわかる。幼馴染ってヤツで、自分から頼んだんだから。

でも、要と烈は、馴染むの早すぎるだろ?!

要なんか、今までの女子部員とは、全く違う扱いだしさ。
烈なんか、あれだけ他人嫌い、特に女嫌いだったのに、あっという間に仲良くなってさ。






「どうしたんだよ、一体?あれでも女だぞ?
 楽しそうに話してるのなんか、初めて見た気がするけど」


つい、烈に不満をぶつけたら、眉間に皺を寄せてる。
マズい、俺、また地雷踏んだか?!


「女でも、きちんと相手しろって言ったの、ナナじゃん。
 それに、笙は女って感じしないよ。
 話してて、すごく面白いし。パソコン詳しいから、情報交換してるんだ」

「え、あいつ、パソまでできるの?」

「うん、エイチの影響らしいけどね。
 普通のワープロソフトや表計算ソフトだけじゃなくて、音楽ソフトも使えるんだって。
 俺、VBAのわかんないとこ教えてやる代わりに、音楽ソフト教えてもらってる」


うー、どこまで白旗揚げりゃいいんだ?
VBAは、俺も烈に教えてもらってるけどさ。
大学入ったとこなのに、もうそこまでやってるって、何に必要なんだよ?


「パソ関連で、バイトも誘ってくれたよ。
 地元の商店街で頼まれてる、売上計算の表作成とかさ。
 パワポでPR用資料作成とかやると、結構、いいバイト代になるんだよね」

「は?烈、バイトしてんの?」

「うん、就活の合間にできることないかなって、要と話してたんだ。
 もう二着くらい、就活用スーツ欲しいしさ。
 バイトくらいしないと、いきなり働くの厳しそうじゃん、俺は」



......烈は烈なりに、きちんと将来のこと考えてるんだ。
もう少し、人と話すようにしろって、上から目線で注意したの、ちゃんと実行してるってわけか。


確かに、あいつなら女っぽくないから、烈には話しやすいし、いい練習相手だろう。
いきなり接客や販売のバイトは、烈は厳しいのわかって、自分のツテを紹介したのかも。
そこまで考えられるってことは、マジで実年齢よりかなり大人だってことだ。



昇平と由人が言ってたのは、本当だったな。

要はともかく、人嫌いで難しい烈まで、こんなに仲良くなれるって、相当だ。



そんでさぁ......烈の方が、よっぽど先に進んでるんじゃん。


俺は、誰とでも表面的に喋ることはできてた。あくまでも、上辺だけど。
ただ、姉貴に言われたのもあって、きちんと他人と向き合おうと努力してきたつもり。
だから、まずは烈、次に昇平と要って順に、相手をよく見て、考えて行動するようにした。


だけど、そこで終わってたんだよな。


そこで終わっちゃってるから、バンドが居心地がいいのは当たり前。
無意識にしろ、他の人間が入ってくるのが面倒だと思ってたんだろう。
笙のこと、最初からいい感情持ってなかったのは、それがあるんだと思う。

ガツンとやられて、プライド傷ついたのもデカい。
まぁ、要が興味持ったのも、面白くないのは、正直なところ。

手は出せないにしろ、女を寄せつけないから、嬉しかったんだよな。
誰のものでもないなら、こっそりいいなって想うくらいは、バレなきゃいいと思ってたし。

なのに、その要が、初めて女に興味を持った。
それも、あんな強烈な女。
どこがいいんだか、さっぱりわかんないだけど?!

俺がノーマルでも敬遠するっての。





考えてるうちに、自分の世界に入り込んだみたいで、烈のため息で我に返った。


「要はさ、俺たちより、ずっと大人だから、笙のこと、素直に可愛いと思うんじゃないの?
 気に入らないからって、邪魔するのは止めた方がいいよ」

「邪魔するつもりなんかないって。
 ただ、あんなのより、ずっと可愛い子とかいたじゃん?
 なんで、よりによって、あの女なんだって、思っただけだ」

「そう思ってること自体、邪魔になるんじゃないの?
 出してないようで、表情に出るから、ナナは。
 余計なお世話どころか、邪魔でしかないよ、要にとって」

「............」

「ナナだって、フィルター外して見れば、笙のこと気に入ると思うけどね。
 音楽の好みとか似てるし、すごくブラコンなとこも同じじゃん」

「ありえない!兄貴のこと知ってるってだけで、完全に地雷じゃん!
 向こうだって、俺にいい感情持ってないんじゃないの?」


烈が、またため息を吐いて、軽く首を横に振る。

こんなに大人っぽかったっけ、こいつ。


「何もなかったことにしてるじゃん、笙は。
 初対面の時は、俺たちが悪かったんだし、あの時も最後まで追い詰めずに流したろ?
 練習でだって普通にしてるのに、ナナが寄るなオーラ出してるから、笙は近づかないだけ。
 あいつ、空気読むのも、距離測るのも、すごく巧いもん」


俺、黙るしかなかった。

だって、思い返すと、烈の言う通りだったから。


「お兄さんのことだって、喋ってないのは、周りの態度でわかるよね?
 何かあるって、みんなは勘づいたと思う。
 それでも、俺たちに聞いてこないのは、笙が根回ししてるからだよ。
 そのことに気づいてた?」

「はぁ?」


無口な烈が、ここまで喋るのにも驚いたけど、状況分析までしてたなんてさ。
俺一人、ガキ丸出しで不機嫌になってただけってこと?


あの時は「ヤバい」って思ったけど、周りの人間の態度まで気にしてなかった。
正確には、気にする余裕がなかった。

でも、あの後、誰も聞いてこないどころか、裏で詮索されてる気配もない。

......ってことは?



「昇平や笙に、質問してくるヤツらはいたみたい。
 昇平は知らないし、笙は「いくら聞かれても、一切喋らない」宣言したんだ。
 由人も笙のこと可愛がってるから、援護射撃したってさ。
 あいつも顔が広いから、サークルには逆らうヤツいないじゃん?」

「大学違うのに、影響力強いよな、あいつ。
 バンド関係だけじゃなくて、ゲイネットワークも使えるってことか」

「うん、俺たちは近寄らないようにしてきたけどさ。
 ゲイのネットワークって、すごいらしいよ。
 有名人も多いし、大阪だけに限ったことじゃないって」


それは、俺も聞いたことがある。

大阪に来てからは、あんまり「そーゆーとこ」には行ってなかった。
俺だけじゃない。店やハッテン場に行かない人も多くいる。
なのに、ゲイの繋がりは強いって聞いた。

パソコン通信の時代から、全国的なネットワークが構築されてるらしいんだよな。
何かミスると、あっという間に話は広がるし、逆に助けてもらえることもあるんだって。

インターネットが普及してきて、それは加速したって話。
二丁目に行かなくても、情報を集めようと思えば、ネットワークに参加すれば可能なんだ。



「エイチもゲイらしいしね。ファンの間では有名だけど、誰も騒がないだけ。
 笙は言わないけど、知ってるんじゃないかな」


ああ、やっぱり。


「ってことは、あいつ、俺たちのことも気づいてる可能性大かぁ」

「だろうね。だけど、笙は、興味本位で喋ったりしないよ。
 そうだったら、もう喋ってるでしょ?」











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