「True Colors」
柳緑花紅

柳緑花紅 3

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「にーちゃん、エイチに、俺が阪大行ってるって喋った?」


兄貴から電話がかかってきたんで、ついでに笙のことを聞いてみた。
しばらく考えてるような間があって、兄貴が答える。


『あー、もしかしたら、喋ったかも。
 なんか、あいつの妹が今年入学したって話しててさ。
 後輩になると思ってたのにって、残念がってた気がする』


やっぱり、そうかぁ。
兄貴、酒弱い上に、記憶もあやふやになるんだよな。
それでも、だいぶ強くなったって自慢してたけど、まだまだヤバい気がする。


「正確には、エイチとは血が繋がってないらしいけどね。
 宗次郎さんの妹で、エイチと仲がいいっぽい。
 口止めしてくれてるみたいだけど、にーちゃんも気をつけてよ。
 俺はなんとかするけどさ。ねーちゃんのことまで喋るとヤバいよ?」

『ああ、妹みたいなヤツって言ってたか、そう言えば。
 でも、血は繋がってなくても、すごく可愛がってるみたいだぞ。
 よく話に出てくるしな。
 そんな話するってことは、会ったのか?』

「うん、サークルに入ってきた。
 うちのリーダーが誘って、バンドでキーボード弾くことになった」



俺は、文句半分だったのに、兄貴のヤツ、爆笑しててさ。

何が面白いんだか。



『見た目も中身もそっくりらしいけど、お前、大丈夫?
 エイチに性格似てるなら、敵には厳しいぞ』



それ、早く言ってくれてれば、あんなカッコ悪いことにはならなかったのになぁ。
思わずため息吐いたら、兄貴がクスクス笑いながら話してる。


『その調子なら、もうガツンとやられた後か?
 ため息で終わってるなら、まだマシだって。
 エイチが言ってたよ。その子が本気出したら、エイチでも怖いって。
 宗次郎なんか、ガンガン〆られてて、頭が上がらないらしいぞ』

「は?宗次郎さんって、兄貴と同い年だよな?
 七歳も下の妹に〆られてんの?!」

『そう聞いてる。新治が相手でも、呼び捨てでタメ口だってさ。
 頼りないからって、バッサリ。
 駿さんが、珍しく気に入ってて、褒めてたくらいだし。
 あの人、滅多に女は褒めないから、驚いたよ』



駿さんって、SMSのマネージャーで、すっごく仕事のできる人だよな。
ルイとも仲がいいって話じゃん。

そんな人とまで知り合いかよ、あいつ。


あいつのことは、そこで終わって、兄貴が本題に入ろうとした。



『ちぃがな』

「ああ、聞いてる。しばらくは、あのマンションに残るんだろ?」

『ああ、彼氏、神崎君だっけか。紹介されたよ。
 向こうの親にも挨拶に行ったらしい』



結婚するのは、まだ先だけど、きちんと挨拶したいって、筋を通した話は姉貴から聞いてる。
神崎さんもうちと同じで片親家庭だったから、親がいないことはハンデにはならないっぽい。

お袋さんが再婚して、自分は独立してるところまで同じ。
うちと違って、年の離れた弟とは仲良くやってるみたいだけど。


姉貴が、卒業後に、自分でアパートを借りようとしたら、兄貴が淋しがった。
結婚を前提にした彼氏がいるなら、嫁に行くまでは残って貯金しろって、説得したらしい。
姉貴は、予想以上に兄貴が淋しそうで、イヤとは言えなかったってさ。





『お前は就職どうするんだ?』

「まだ、はっきりとは決めてないよ。就職難だし、頑張るしかないよね。
 姉貴ほどじゃないけど、資格は取ろうと思ってる」


東京に戻らないのは、まだ言わない方がいいな。
姉貴のこともあって、かなり淋しがってるのが伝わってくる。


『そっか、頑張れよ。いざとなったら、探してやるからな』

「大丈夫だって、何とかするから。
 あ、でも、本当にヤバかったら、お願い!」


頼らないようにするつもりだけど、宣言すると、兄貴はがっくり来るかも。
それが心配で、軽く、できるだけ軽く、話す。


『ん、じゃあ、また電話する。体には気をつけろよ』

「兄貴もね。忙しすぎて、体壊さないでよ」


兄貴の笑い声で、電話は終わった。



リビングに行くと、烈がボーっとテレビ見てた。
出てきた俺に気がついて、すぐに聞いてくる。


「晩メシ、できてるけど、食べる?」

「ああ、頼む。手伝わなくてゴメンな」

「いや、今日は出かける前に下ごしらえしてあったから、手間はかかってない」


ダイニングに並べてくれたのは、ハンバーグにトマトとキュウリの和え物、ほうれん草のおひたし。
和え物は、調味料代わりに、昆布の佃煮を細く刻んだのを混ぜた、烈のオリジナル。


「美味そう。烈、ほんとに器用だよな」

「料理って、結構、面白いよ」


いつものつまんなそうな顔で食べてるけど、機嫌がいいのは、なんとなくわかる。
それくらいは、俺も学習した。


「ゴメンな」


烈が、ボソッと謝ってくる。


「お前が悪いんじゃないって。俺が、うっかりしてただけ。
 気をつけてれば、お前が何言っても、空気読んでフォローできたはず。
 隠し事してるのは俺なんだから、お前は何も悪くないよ」

「ん。でも、あいつ、要注意だよな...。
 昇平が言ってたの、ほんとみたいだし」

「え、お前、何か知ってるの?」

「由人にメールしたら、電話で教えてくれた」


由人...ああ、昇平のバンド友達で、ゲイのヤツか。
って、烈、どうしたんだよ?!


「あれ?お前、口説かれて鬱陶しいって、怒ってなかった?」

「昇平の友達だし、口説きだけスルーしてる。
 笙のこと知ってるかと思ってメールしたら、すぐに電話くれた」


ああ、こいつなりに心配して、苦手なヤツからでも聞き出そうとしてくれたんだ。
人嫌いの烈が、行動起こしたのが、なんか、胸にジーンと来る。



烈が聞き出した情報には、昇平が話さなかったこともあった。


受験が終わって、すぐに免許を取ったらしい。
普通だけじゃなくて、自動二輪も、それも大型。

地元ネットワークを使って、中古で安く手に入れて、ツーリングサークルに入ってる。
大型だから、オッサンが多いけど馴染んでて、みんなに可愛がられてる。

中学の頃から、施設や病院で、子供や老人相手にボランティアやってて、彩香って子も一緒。
それが原因で、「いい子ちゃんぶってる」と、いじめられたり絡まれたりしても、返り討ちにしてきた。

とにかく、口も手も達者な上に、顔が広いから味方も多いんで、まず負けないらしい。



「由人にも忠告された。
 
 滅多にキレないけど、キレたらどんな手段使っても潰しにかかる。
 ただの優等生じゃないから、不良にも一目も二目も置かれてる。
 まず、同年代で勝てるヤツはいないから、敵にだけは回すな。
 じゃないと、ここらへんでは生活しにくくなる。

 だってさ」

「うへ...兄貴が思ってるより、かなり上かもな」



ああ、あれだけで済んで、ラッキーだったのか、俺。

俺たちが昇平に不満を持ったことに、腹を立てただけじゃない。
エイチに迷惑がかかるのを、避けたかったんだろう。
だから、自分はオープンにしても、俺たちに釘を刺しておこうってことか。

俺たち以外の部員も、あいつの迫力に飲まれてたし。
少なくとも、只者じゃないってのだけは、伝わったもんな。


あれ...由人とも知り合いってことは......。
すっごくイヤな予感するけど、今は考えないでおく。


女特有の感情的な性格でもなさそうだし、情報を総合すると対策は立てられるな。

非常識なことや無神経なことをしない、あいつの仲間を傷つけない。
それさえ守れば、敵認定されることはなさそうじゃん?


「気をつけような、烈」

「ん、俺より、コミュニケーション能力高そうだしな、あいつ。
 年下で女だからって、舐めてるとマズいな」











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