「True Colors」
柳緑花紅

柳緑花紅 2

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ミーティングが終わって四人だけになった時、昇平が珍しく泣きついてきた。


「頼むから、笙だけは怒らさんといてくれ。
 あいつ、無茶苦茶、顔広いから、いろいろ困んねん」

「お前より顔広いって、どんなんだよ?
 つい、この前まで高校生だったんだろ?」


昇平がしょぼくれた声出すから、つい聞き返す。
隣では、烈が何か思い出したみたいだ。


「エイチって、大阪に住んでたんだよ。
 SMSの最初のベースは、エイチだったはず。
 インディーズの時だけ別の人で、メジャーデビューの時はまたエイチに戻ったんだ」

「ああ、そうや。ただ、そこら辺のことは、あいつに、絶対、聞いたらあかんぞ。
 英一さんの後に入った人が、インディーズの頃のベースな。
 その人が、メジャーデビュー直前に、事故に遭わはって。
 英一さんがピンチヒッターやったんやけど、戻れへんくて、そのまんまになったんや。
 交代前後のことは、あいつだけやない、俺らより上の人も火消ししとった。
 せやから、絶対にほじくり返したりすんな」



昇平が、必死になって釘刺してくるけど、もうツッコむ気力なんかないってば。
兄貴のこと知ってるってだけで、充分に取扱い注意だっての。




俺たちが頷いたのを確認して、昇平は、笙のことを説明し始めた。



あいつの兄貴が、SMSのリーダー、及川宗次郎。
でも、すごく仲が悪くて、どちらかと言うと、エイチ、ベースの川上英一と仲がいい。
六歳から十六歳まで剣道やってて、昇平とは警察がやってる剣道教室で一緒だった。
その教室では、あいつの父親が教えてるんだと。

四歳からピアノを習ってて、音大受験を勧められるくらいのテクがある。
本人は、兄貴みたいに浮き沈み激しい仕事はイヤだって、普通に就職するつもり。
昇平が行ってた私立じゃなくて、学区で一番の公立に通ってた。
学内でも成績優秀、生徒会長もやってて、模試では東大文ⅠのA判定連発。

中学からバンド組んでて、俺は覚えてなかったけど、何度か対バン演ってる。
メインはベースだけど、ギターも弾けば、ドラムも叩く、器用なプレイヤー。

頭が良くて、人の性格を掴むのが早いからか、人間関係を構築するのが巧い。
だから、年上には可愛がられるし、同い年や年下からは頼られてる。

そして、それを活かして、情報収集は大の得意。
さらに、実行力が半端ない。



「......ライブハウスのマスターや、ここらのバンド関係者。
 英一さん絡みでプロモーターさんまで、あいつのこと可愛がってんねん。
 あいつが本気でキレると、俺ら、ライブ演るとこなくなんねんって。
 それに、バンド関係だけやない。
 俺とこの親父みたいな、地域のおっさん連中のアイドルでもある。
 滅多にキレへんけど、自分の仲間が傷つけられたら、倍返しは確実や。
 今日は、俺と英一さんの顔を立てて、あれで終わってるけどな。
 次にあんなことしたら、マジでヤバいぞ」

「アイドル?あんな男みたいなのに?」


烈が不思議そうに聞き返す。


「ああ、礼儀正しいし、よう気が回る。
 見た目からは想像できんやろけど、料理や菓子作りも得意やしな。
 世話になったら、できる範囲で、精一杯に返そうとするんや。
 ちびの頃から知ってんねんし、そりゃ、可愛いてしゃあないて」

「わかる気がするなぁ。すごく印象が強かったんだよね。
 対バンの時、他のバンドやイベント主催の人に、きちんと挨拶してたしさ。
 周りに迷惑かけないように、メンバーにはビシっと注意して。
 あの子と彩香ちゃんだっけ、その他は男の子だったけど、仕切ってる感じだった」
 


え、え、え?


要が、女の話するなんて、初めてじゃないか?!

お前、あんなの好みなわけ?



「それにさ、クールに見えるけど、ふわっと笑ったら、すごく可愛かったよね」

「あの落差に、おっさんはやられんねんて。
 同世代の野郎は、どうしたって勝負になれへんから、腰引けてまうけどな」

「へー、そうなんだ」

「ああ、はずかしいけどな。俺かって、一度も試合で勝ったことないんや。
 心臓が弱なかったら、インターハイやら楽勝やったんちゃうかな。
 その上、東大文Ⅰ楽勝の学力やろ?普通は、びびるって」

「俺より、背が高かった」


要と昇平の会話に、烈がボソッと割り込んだ。


「そうだね、俺より少し低いくらいだったから、172cmはあるんじゃない?」

「高校入った時に172cmになってしもたって、愚痴ってたわ。
 すぐに開き直ってたけどな。
 ちびの頃から、スカートは制服しか見たことない。
 金かけずに、似合うもん、見つけてきよんねん。
 実際、カッコよかったやろ?」


スカート?!
想像したくても、全く頭に映像が浮かばないっての。

で、昇平の言う通り、センスはいいと思う、悔しいけど。




「心臓弱いのに、剣道やってたの?」


要が、心持ち楽しそうに、昇平に質問し続ける。
いや、マジで、あんな強烈な女がいいのかよ?


お前、趣味悪くないか?!



「あー、なんか体が弱いのは弱かってん。
 そんで、鍛えたらええんちゃうかって、親父さんが剣道教えててんけどな。
 練習中に、ぶっ倒れて意識戻らんくなって、病院行き。
 詳しく検査して、ちょっとした欠陥がわかったんやと。
 医者に、親父さん、めっちゃ怒られたらしいで。
 それでも、二段までは取った後やったな。
 瞬発力と動体視力が、物凄ぉええねん。
 竹刀持ってなくても、ケンカしたら、俺、負けると思う。
 彩香ちゃんもいてるしな」

「あの子も、武道かなにかやってるの?お人形みたいなのに?」

「ん、あの子、可愛らしいから騙されるけどな。ご両親とも合気道の師範やねん。
 お袋さんが道場継いで、親父さんは、笙の親父さんと同業者。
 せやから、あの子も合気道の有段者で、笙も教えてもろてるんや。
 二人とも、不良に絡まれても、五人までなら本気出さんでも大丈夫らしいで」

「ああ、過剰防衛になるの、気をつけてるのか。
 二人とも慎重で冷静だね」


要は、素直に感心してるけど、俺は背中がゾクッとした。


学力だけじゃなく、体力的にも並じゃないって、あいつ、何なんだよ?
同年代の男はビビるって、当然だろ、そんなんじゃ。


なのに、関心持ってるのが丸わかりってさ。


昇平ほどじゃなくても、ずっと可愛い子から告られてたじゃん、お前。
もっと選択肢はあるだろが!

あんな怖いのは、止めとけっての!!



「要、珍しいね。女の子の話なんか、興味ないのかと思ってた」


烈も不思議に思ったんだろう、直球で聞いてる。


「あー、うん。対バンやった時に、きっちりした子だなぁと思ってたんだ。
 ベースも、烈ほどじゃないけど、巧くて、すっごく楽しそうに弾いてたのが印象深くてね。
 まさか、昇平が連れてくるとは思わなかったけど」



......ボソボソと答えてるけどさぁ。

顔が赤いのは、気のせいか?











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