「True Colors」
柳緑花紅

柳緑花紅 1

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「失礼します」


新年度が始まって、最初のミーティングの日。

腹の底からハッキリと響く声で、部室に入ってきたヤツがいた。
全員の視線を浴びても、平然と受け流してる野郎と、その隣には背の低いニコニコした女。

おいおい、カップルで入部かよ、と呆れていたら、昇平が立ち上がった。



「笙!こっちや!よう来たな。彩香ちゃんも!」

「来いて言うたん、昇平やんか」


ん?声からして、こいつ、女か?でも、名前はショウだしな。
男だと思ったけど、微妙で悩むな。

近づいてきて、やっとわかった。

こいつ、女じゃん。骨格が、野郎じゃない。
そこら辺の野郎より、よっぽどカッコいいけどさ。


着古したGジャンにストレートのダメージジーンズ。
シンプルなスリッポンタイプの紺色デッキシューズ。
茶色がかった髪は、ツーブロックショートで緩くウェーブがかってる。

男なら華奢だけど、女ならモデルにでもなれそうな、腰高脚長で顔も小さい。

何より、新入生とは思えないくらい、落ち着いてて冷静な態度。
普通なら、少しは緊張したりするもんだろ?



「うちのバンドでキーボード演ってもらいたぁて、呼んだんや。
 学科は、俺や要と同じ。
 小学生の頃からの知り合いやから、俺には呼び捨てタメ口やけど、気にせんといてくれ」

「はじめまして、及川笙です」

「笙と同じ高校から来ました、佐藤彩香です」


二人がきちんと頭を下げてて、みんなは、好感を持ったらしい。
口々に挨拶を返してて、俺も合わせることにした。



「キーボード入れるなんて聞いてない」


烈がボソッと文句を言うと、昇平が頭を掻き掻き、言い訳を始めた。


「いやぁ、こいつがうちの大学に来るて知ったんが、つい先週やってん。
 絶対に東大行くと思てたから、慌てて頼んだんや。
 事後報告になったんは悪いと思てる。
 ただ、キーボードの腕は保証するで」

「でもさ」


それまで黙ってた要が、口を開いた。


「及川さんって、ベース弾きたいんじゃないの?
 対バンではベースだったよね?」

「え、お前、覚えてたんか?」

「うん、高校生ばかりのバンドで、ベース弾いてたでしょ。
 で、佐藤さんがキーボードだった覚えがあるんだけど、違う?」


そこで、初めて笙が笑った。
さっきまでの冷静で動じない顔からは、想像もできないくらい、柔らかく嬉しそうに。


「折島さんて、ヴォーカルが男前なだけじゃなくて、中身も男前やわ。
 気ぃ遣てもろて、ありがとうございます。
 うちとこも週一やから、掛け持ちさせてもらうことで、昇平とは話ついてます。
 それが気に入らんようなら、向こうに絞るだけですわ。
 村尾さんと江藤さんは、どないです?」



いきなり振られて、俺と烈は戸惑った。

昇平が、掛け持ちさせてまで欲しいキーボーディストなら、確かにバンドにはプラスだろう。
見た目もいいし、ステージ映えするのは間違いない。


烈はと見れば、じーっと笙を観察するように見てる。


「エイチに似てる...」

「よう言われます。でも、血は繋がってませんよ。
 繋がってるのは、ヴォーカルのアホとです」

「?!」


昇平を見ると、すごく驚いた顔してる。
お前、知らなかったのかよ?

って、俺も驚いてるんだけどさ。



「それ、バラしてええんか?高校までは、必死で隠してたやんか」

「ん、高校はうるさいやん。目つけられるん、かなんかったし。
 今は、英兄がチケット送ってくれてるし、どうせすぐバレるやろ?
 せやから、最初から言うといた方がマシちゃう?」

「英一さんには、了解取ってんのか?」

「うん、好きにしろって」

「お前、信用されてるもんなぁ」



?????

は?

昇平って、エイチと繋がってるわけ?
そりゃ、SMSが大阪で活動してたのは知ってるどさ。
確か、エイチって、東京生まれで東大卒じゃなかったっけ?



「昇平、俺たち聞いてない」


烈が、かなりムッとしてる。

それは、俺も同じように感じた。
知り合った時から、烈が熱心なSMSファンなの知ってたくせに、内緒にされてたのは気分悪い。


「いや、俺は、直接の知り合いちゃうねんって。
 笙が英一さんにもらったチケットで、ライブ行ったことがあるぐらいやで?
 そんな程度やのに、知り合いとか言えるわけないやん」

「烈、昇平が困ってるよ?
 有名人と知り合いだからって、昇平のプライバシーじゃないか。
 それも薄い繋がりなら、話さなくても問題ないだろ」



昇平の説明に、要が正論で擁護してる。

それ聞いても、なんとなくムカついたのは消えなくてさ。
黙り込んでたら、部屋の空気が重くなった。


少しして、笙が、俺と烈の顔を交互に眺めて、すっと目を細めた。


うわ、こいつ怒ってる?迫力、凄いんだけど......。



んでさ、ほんっと、俺、うっかりしてたんだよな。
笙の次の言葉を聞くまでは、すっかり忘れてたんだよ。



「そんなん、村尾さんかって同じでしょ?
 英兄に口止めされてるから、私は喋りませんけどね」



烈が詰まった。
俺も、頭から冷水を浴びせられた気分になった。


そうだよ、俺だって内緒にしてるんじゃん。
烈にしか話してないもんな、兄貴のこと。

バカとしか言いようがないよ、俺。



兄貴はエイチと仲がいい。
プライベート用の携帯を教えてるぐらいだ。
メンバーにさえ教えてないのに。
よく飲みに行くって話もしてた。


そして、エイチとこいつは仲がいい。

英兄なんて呼んでるんだから、こいつとエイチの関係は、かなり親密なはず。

同じ大学に進学するんだったら、飲みながら、兄貴が喋ってる可能性は高い。
それでも、エイチは口止めしてくれてた。


だけど、烈と俺が、昇平に不満を持ったら、すかさず、反撃の材料に使ってきた。
幼馴染を攻撃したんだ。敵と思われても仕方ない。
全部を話さないのは、エイチに義理立てしてるか、俺に逃げ道を与えたつもりか。


冷静で、頭の回転が早くて、他人の感情を読むのも得意。
昇平が、「東大に行くと思ってた」って言ってたってことは、それだけの学力があるってこと。
つまり、進学校落ちこぼれ組じゃなく、要と同じで「やりたいことがある」ケース。


二歳も年下の、それも女に、俺は、完全に圧倒されてた。

その上......


「自分のこと棚に上げて、他人を責めんのは、みっともいいもんちゃいますよ。
 これ以上、泥試合やるのんは、先のこともあるし、やめませんか?」


サラッと、説教で話を締めて、昇平にバトンを返しやがった。


俺、完敗。


笙との初対面は、最初から最後まで、敗けっぱなし。
情けなくて悔しいけど、一言も言い返せなかったんだよな。 











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~ Comment ~

腰高脚長で顔も小さい。 ーーーっ!?!

と・隣に立ちたくない! (座ってなら大丈夫か?
笙さんの腰って、地上何メートルなの!?
5cmでいいから分けてー (結構本気

( ゚д゚)ハッ!  いかんいかん。
せっかくの、’笙さんと要さんの初めての会話’ 編だったのに。
お互いを認め合う、ステキな展開ー。

笙さん、この頃にはもう、「及川 笙」 だったんですね。 
お友だちになりたいけど、十把一絡げに分類されそう。 頼れるものは、割り箸でも頼るからなあ、私。


さて、七海(烈くんも?)、これからどうする? (って、1行かいっ

Re: 腰高脚長で顔も小さい。 ーーーっ!?!

> 笙さん、この頃にはもう、「及川 笙」 だったんですね。 

小学生で宗次郎に説教してましたから(笑)
昌行のフォローや捜索など、中学でも走り回ってたような...。

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