「True Colors」
無色透明

無色透明 9

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誕生日は、ゆっくり朝寝坊して、三人でブランチ。
姉貴が、ホットケーキ焼いてくれたんだ。

パンケーキじゃないよ。ホットケーキ。
お袋が、誕生日に焼いてくれたみたいにさ。

あの頃は、高いから、メイプルシロップじゃなくて、蜂蜜。
生クリームをホイップして、缶詰の桃とか飾ってくれてさ。


「メイプルシロップもあるけど、どうする?」

「ん、蜂蜜がいい。母さんが作ってくれたのとおんなじの!」


兄貴も起きてきて、ホットケーキ見て笑ってる。
すぐに、姉貴がコーヒー出して、サラダやベーコンエッグと一緒に食べた。




食べ終わったら、リビングでダラダラ。
大好きなアニメや見てみたかった映画、そしてお喋り。

お袋が生きてた時も、たまに兄貴が来て、こうやって喋ってたよな。
俺と姉貴が喋るのを、嬉しそうにお袋と兄貴が聞いててさ。



完全に気を抜いてて、リラックスしまくってたら、兄貴の携帯が鳴った。
仕事用のは、昨夜、電源落としてたから、プライベート用のヤツ。

俺たちと、何人かの友達しか教えてないって言ってた。
マネージャーさんにもメンバーにも、奥さんにも知らせてない。



「ああ、悪い。でも、俺は関わらないって約束だったんだし。
 向こうが勝手に生んだだけじゃん。
 え、ルイさんが?マジで?
 .........わかったよ、一応、顔だけは見に行く」



電話が終わったと思ったら、兄貴が大きくため息を吐いてる。

ルイさんって、あのルイ?
確か、兄貴たちのバンドのプロデュースやってたよな。



「おにーちゃん、呼び出し?」

「ん、ルイさんがキレてるって、エイチから連絡があった。
 いくらハメられたとは言え、自分の子どもなんだから、一度は顔出せって。
 ユージとコウセイんとこだって、もうすぐ生まれるのに、なんで俺だけ...」

「エイチって、あのエイチ?!」


俺、驚いて、思わず聞いちゃった。
考えたら、同じ事務所なんだし、Quiet Lifeのレンの息子なんだから、繋がっててもおかしくないよな。


「ああ、ルイさんがすごく可愛がってて、その縁で仲良くさせてもらってる。
 ただ、ユージとの方が馬が合うっぽいけどな」

「それで、おにーちゃん、行くことにしたの?
 それなら、支度しなきゃ。それと、晩御飯はどうする?」


姉貴は冷静でさ。
ずっと、こっちで兄貴の面倒見てたから、半分、お袋みたいになっちゃってるの。


「さっさと行って帰ってくるよ。
 明日から、またしばらく休みはないしな。
 せっかく、ななが帰ってきてるのに、休みの日くらい、そっとしといてほしいよ」


ブツブツ言いながらも、髭を剃りに洗面所へ移動した。
その間に、目立たないような外出着を、姉貴が準備して。


「ごめんな、なな。絶対に戻ってくるから、ちぃと待っててくれ」


すごく淋しそうに出ていく姿は、テレビで見る「TOY」とは別人。
あれ、かなり無理してるから、しかたないんだけどさ。




「喜ばなきゃいけないんだろうけど...。
 おにーちゃん見てると、どうしても素直にお祝いする気にはなれないのよね。
 弱みを握って、子どもを武器にしても、心はどうにもならないのに。
 可哀想な人だと思う、相手の人も」

「弱みって何なんだよ?ねーちゃんは、何か知ってるの?」


姉貴は首を横に振って、悲しそうな顔をした。


「絶対に、私たちにも知られたくないらしいのよね。
 ホストクラブにいたことなら、知ってるから平気だよって言ったんだけど。
 どうも、そうじゃないらしいの」

「あー、それ言っちゃったの?俺も黙ってたのに」

「薄々、バレてるのは感じてたみたい。
 だから、私が知ってるのも驚いてなかったよ」


それじゃないとすると、他に何があるんだろう。
俺たちのことがバレてるにしても、公開されたって、痛くも痒くもないよな。

まぁ、姉貴は東大で俺が阪大って、学校でうるさいかもしれないけどさ。
もしバレても、素人なんでよくわかりません、で通すって、三人で話し合ってたし。



「何かわかるかな」


テレビを地上波にして、ワイドショーをザッピング。


『話題のビッグカップル。坂井瞳さんとTOYさんに、ご長男が誕生!』



平日昼間で、他に話題がないのか、デカデカとテロップの嵐。
向こうの事務所が発表したらしいFAXが、画面に映し出される。


「男の子かぁ。甥っ子だね」


姉貴の呟きは、抑揚もなく、まるっきり他人事のようだ。
俺にとっても、そうなんだけど。



兄貴が断固拒否して、結婚式とか披露宴はやらなかった。
それだけはイヤだって、頑張った。

相手としては、派手に宣伝したかったみたいだけど。
バンドのイメージダウンになるからって、事務所の社長さんも後押ししてくれた。

ほんとは、堕ろさせて終わりにしたかったんだろう。
でも、向こうの方が事務所が大きかったし、堕ろすのが無理な時期まで黙ってた。

全部、昨日、姉貴から聞いて、知った事実。




「女としては、堕ろすのがイヤなのは理解できる。
 でも、利用して、相手を縛って、余計に嫌われるって悲しくないのかな」


姉貴が、ボソボソと小声で喋ってる。
俺は、女じゃないから、よくわからないけど、相手の女が必死なのだけは感じる。


「にーちゃんってさぁ。特別な人間にだけ優しいよね。
 それ以外とは、上辺だけのつきあいしかしないじゃん?
 あの王子様キャラは、頑張って無理して作ってるのに、勘違いしたんじゃない?
 勘違いだって気づいた時には、もう引き返せなかったとかさ」

「そうかもしれないね。
 素のおにーちゃんを知ってる人って、私とあんた、事務所の社長さんだけみたいだし」

「え、メンバーは?さすがに、ずっと一緒にいるんだから、バレてるんじゃないの?」

「ううん、あのまんまなんだって。きっかけなくしちゃったらしいよ。
 だから、ここに帰るとほっとするって、よく言ってる」




それは......きついよ、兄貴。


元の性格が性格なのにさ。
あんな、ナルシスト入った、みんなの王子様ってキャラは、無理がありすぎるだろ。

せめて、メンバーくらいには、素の顔を見せといた方がいいんじゃない?
そしたら、少しは蟠りもなくなるよ?


物静かで穏やかで、優しくて、争いごとが嫌いでさ。
頭が良くて、我慢強くて、俺たちのことには一生懸命で。


俺も姉貴も、兄貴が大好きだから、テレビで叩かれてるのは見たくない。
ほんとの兄貴は、全然違うのにって、叫びそうになる時もあったけど。

当の兄貴が「それも仕事のうちだから、言わせとけ」って、気にしないんだよね。

デビューして、たった四年。

それでも、ヒットを飛ばして、ドラマもバラエティも、社長に言われるままに頑張って。
自分では、言うほど贅沢してないんだよ、兄貴。

俺と姉貴にばっか、金使おうとしてさ。




「俺、にーちゃんに心配かけないように、頑張る。
 ちゃんとしたとこに就職して、にーちゃんが安心できたら、無理しなくていいよね?」

「うん、私も頑張るからね。でも......」

「でも、何?」

「私たちが頼らなくなったら、おにーちゃん、がっくりしそうじゃない?」


姉貴の言うのは、その通りだろう。
俺たちのためだけに、今まで無理して頑張ってきたんだし。


「その時は、芸能界引退してもいいじゃん。
 甥っ子だって、母親が売れっ子なら大丈夫でしょ?
 にーちゃんが売れなくなっても、面倒見るくらいの覚悟があるから結婚したんだよね?
 それで、愛想尽かされたら、俺とねーちゃんで面倒見たらいいじゃん!」



俺、その時は、本気でそう思ってたんだよね。

兄貴は、「俺たちに面倒見られる」なんて、絶対にイヤだろう。
それでも、どうにか説得しようと考えてた。

だって、あんなにつらそうな兄貴見てるの、俺がキツかったもん。











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