「True Colors」
無色透明

無色透明 7

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あんなに凹んだ割には、簡単に浮上したのは、烈のおかげ。
それと、バンドの相性が良くて、練習が楽しかったからだろう。
ま、俺って、ズルズル落ち込むの、性に合わないしな。


昇平のオリジナルは、思ってたより、ずっと本格的でさ。
Quiet Life好きらしく、少しグラム入ってるけど、キーボードなしでも、充分って感じ。

講義に出て、レポート書いたりして、烈と二人でスタジオで練習して。
週に一度、四人で合わせて。



要の敬語も、いつの間にか消えてった。
烈が、昇平にも要にも、警戒を解いたんだ。


こんなこと初めてだったから、すっごく驚いた。

どうしても気になって、聞いてみたら、烈はあっさりと答えた。


「あいつら、二人とも下心がないじゃん。
 バンドで一緒に演ること以外、利用しようとか全く感じないし。
 無理に距離を詰めようともしないから、一緒にいて楽。
 ナナとは、また違った意味だけどね」



それで、納得。

こいつに近づくヤツらって、恋愛沙汰だけじゃなかったもんな。
金持ちなのがバレて、集ろうとするヤツもいたし。


「好きだとか言われてもさ。すぐに、俺の行動を制限しようとするだろ。
 女は最初から無理だし、男でも適度な位置をキープできそうにないヤツばっか。
 遠山先輩くらいだったんだよな、そういう人。
 先輩がいなくなってから、また寄って来だして、鬱陶しくて困ってた。
 ナナが声かけてきてくれて、助かったよ」


俺たちが卒業した高校は、中等部からあって、俺は高校からの編入組。
遠山先輩ってのは、親がリストラされて、引っ越してったらしい。

散々、ちょっかいかけられて、逃げ回るのに疲れた頃、俺が声かけた。
俺としては、烈なら、べったりにならずに楽そうだと思ったんだよな。
じっと観察してたらわかるじゃん、人との距離の取り方とかさ。






俺たちの初ステージは、大成功に終わった。

チケット割当もあったのに、昇平があっという間に捌いててさ。
他のバンドとの話し合いなんかも、うまいこと調整してんの。

サークル内でも、一年のくせに生意気とかって、文句言ってるヤツがいたけどさ。
幹事の小野田さんが、間に入って、宥めてたし。

代々、地元出身者が幹事やってるのって、こういう時に調整しやすいからかも。

俺たちより巧い組が、サークル内にいなかったのは、事実だけどね。


昇平が他の大学のサークルどころか、プロ目指してるフリーターバンド、果ては高校生まで顔が利く。
助っ人にも気軽に応じてて、イベントの話なんかも舞い込んでくる。
ただ、俺たちの性格も事情も把握してるから、絶対に無理はさせない。


特に、要と烈には気を遣ってる。


要がいなかったら、俺たちのバンドは成り立たない。
それくらい、こいつのヴォーカルは飛び抜けて巧い。
こいつと組んでしまったら、他に誰が来ても、物足りないと思う。

烈は烈で、ベースの腕だけじゃなく、見た目でも人を惹きつける。
ただ、取扱いを間違うと、それで終わり。
俺に遠慮して我慢するなんて、考えられないし。

すぐに気づいたってことは、昇平の観察眼も大したもんだ。
外見だけなら、おとなしくて人見知りにしか見えないからな。


親父さんの後を継いで、中規模の不動産会社の社長さんになるんだよな。
こいつなら、社長業もこなせるんじゃないのか。
地元密着型なら、大阪出身の方が有利そうだしさ。




イベントが終わって、帰省しようとしたら、兄貴から電話があった。
帰ったらマズいのかなと思ってたら、催促の電話だった。


『もうすぐ、お前の誕生日じゃん!ちぃに頼んで、好きなもの作ってもらうからな』

「二人とも忙しいんじゃないの?」

『お前の誕生日ぐらい、休んでもバチは当たらないだろ?
 俺、ずっと休みなしで働いてるんだぞ、ここんとこ』

「いや、子どもが生まれるじゃん?!」

『ん、そうらしいけどな。セレブ御用達だかのとこに入院してるし。
 俺が、何ができるわけでもないしな』


ああ、予想通り。
やっぱり、兄貴は、相手も子どもも、どうでもいいっぽい。
生まれたら変わるかもしれないけど、それもあんまり期待しない方がいい。


「前日には帰るよ。ねーちゃんにもメールしとく」

『欲しいモノがあったら、メールしとけよ。
 じゃ、待ってるからな』


忙しいのに、わざわざ電話してくる兄貴も、相当なブラコンだよな。
嬉しいけど、会うのも怖くて、なんか複雑。



「れーつー、二十七日には帰る。飛行機、二人分予約してもいいか?」

「ん、ここからなら、飛行機のが楽だもんね。
 お願いしていいかな」



俺ん家も烈ん家も、羽田からは遠くない。
羽田より品川のが少し近いけど、ここからは、新大阪行くより伊丹のが楽で早い。
タク使って十五分かからないんだもんな。

受験の時、新幹線使って、失敗したと思ったもん。



昇平にメールして、要にも伝言頼んだ。
学生で携帯持ってるヤツは、まだ少ない。

要なんか、寮に一台、公衆電話があるだけだ。
だから、直接行って、ドアにメモ貼る方が早かったりするんだよ。

たまに、遊びに行くけど、すっごく狭くて、烈がイライラしてしまう。
六畳一間に、スチールの机とシングルベッド、後は本棚二つ。

さすがに学者志望だけあって、棚にも机にも、ぎっしり本が詰まっててさ。
地震でも起きたら、こいつ、死ぬんじゃねぇの?って、変に心配になった。

そういうとこも、俺らしくないって、烈に笑われたっけ。




初めての帰省。


烈と別れて、マンションに到着。
いつもの癖で、周りを見回してから、エントランスに入る。

兄貴と鉢合わせしても、他人の振りができるように、気合を入れる。


部屋と入ると、夕方、まだ日が落ちてないのに、姉貴だけじゃなく、兄貴も帰っててさ。
二人とも、ニコニコ待っててくれた。

情けないけど、それだけで、すっごく嬉しくて、泣きそうになった。
こういうとこ、俺、甘ったれなんだよな。
全然、自立できてないの。

経済的にどころか、精神的にも自立できてない。

同い年なのに、要とは大違い。



「おかえり。おにーちゃん、そわそわしてずっと待ってたよ」

「俺の誕生日は明日だよ?」

「明日は明日で、また別みたい」


姉貴がクスクス笑いながら出迎えてくれて、兄貴は少し照れくさそう。
それでも、俺が四ヶ月もいなかったのは淋しかったのか、すぐに話しかけてきた。


「早く、荷物置いてこい。ちゃんと、手も洗うんだぞ
 ちぃの料理だけじゃなく、お前の好きな店のデリバリーも頼んでおいたからな」


えーっと、もしかして、あの超豪華な中華料理店にデリ頼んだわけ?!
あんなとこ、デリやってくれるの?


「おにーちゃん、ななが帰ってくるって、無理言ったみたい。
 もうすぐ来るみたいだから、着替えておいで」



帰ってきたなーって安心と、二人にバレないようにしなきゃって心配と。
どっちもあるけど、とりあえずは、やっぱり嬉しくてさ。

部屋に荷物置いて、着替えてから、ダイニングに戻った。


ちょうど、デリが来たところで、姉貴がテーブルセッティング。
兄貴も、いそいそとやってたら、携帯が鳴ってる。


途端に険しい顔になって、兄貴が携帯に出た。


「ああ、そう。うん、わかった。行かないから、俺。
 そういう約束だしね。じゃあ、後はよろしく」


電話を切った兄貴が舌打ちしてて、そんなの初めて見たからさ。

なんか、少し怖くて、何があったのか聞けなかった。











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