「True Colors」
無色透明

無色透明 6

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日曜、要が加入しての初練習。

昼食済ませて、指定されたスタジオに行った。
俺も烈も、昇平のそばに寄るまで、要がいることに気づかなかった。

この前見た時と全然違ってて、要だってわからなかったんだ。


髪の毛は、こざっぱり短くなってて、流行りとまではいかないけど、ダサくはなくなってた。
着込んで味が出てるダンガリーシャツに、やっぱり履き込んだスリムのブラックジーンズ。
足は、コンバースのハイカット。


昇平がニヤニヤと自慢気に笑ってる。


「どうしたんだよ、急に。別人じゃん!」

「えっと、昇平に、午前中連れ回されました」


恥ずかしそうに返事してるけど、よくわかんないってば。


「知り合いのカットモデルやらせて、フリマで服買わせたんや。
 金なくても、なんとかなるもんやろ?」

「ああ、俺、梅田に連れて行こうかと思ってたよ。
 フリーマーケットは、思いつかなかったなぁ」


俺が感心してると、要がニコニコと嬉しそうに報告し始めた。


「ただでさえ安いのに、昇平が値切ってくれて、すごく助かりました。
 髪の毛も、そろそろ切ろうと思ってたのに、タダでいいなんて、申し訳ないです」

「いや、カットモデルやねんから、遠慮せんでええねんって。
 何度も説明したやろ?」


さすが、地元民。
中学からバンドやってて、知り合いが多いだけあるよな。

それに、金ないからって、俺が買ってやろうとしても、こいつなら断るか。
俺だって、ド貧乏な時があったのに、もう忘れてる。

兄貴のお古は平気だったけど、姉貴やお袋目当ての野郎からの「買ってやる」は、全部、断ってた。



『心まで貧乏になってはダメ。乞食みたいな真似はしないの』



それが、お袋の口癖。死んでからは、兄弟三人の合言葉になってた。


いつの間にか、上から目線で、俺、何様?
こいつだって男だ。ただのメンバーや友達に、服買ってもらう理由なんかない。


その点、昇平は巧いよな。
要の負担にならない方法で、並み程度のファッションまで引き上げてる。

フリマで値切るなんて、面倒くさがりの俺や人見知りの烈には、逆立ちしたってできやしない。


「ま、あとは金に余裕ができたら、メガネのフレーム変えようや。
 せっかく、顔は整ってんねんから、ちょっと弄ればステージ映えするやろ」

「昇平、もうライブのことまで考えてるわけ?気が早くないか?」

「このメンツなら、コピーは何度も練習せんかってええやろ?
 俺のオリジナルでええんやったら、ニ十曲くらいはあるで」


はぁ、こいつ、プロになる気はないのに、そこまで考えてんの?
オリジナルが二十曲って、伊達に中学から組んでたわけじゃないんだ。


「これ、オリジナルのスコアとカセットテープな。
 夏休み入ってすぐ、友達が主催でイベントやるから、頼まれてるんや。
 それが俺らの初ステージでええよな?」

「もう決めてきてるんじゃん。今さら、ダメって言えないだろ」


ツッコミながら、思わず笑ってしまった。
なんか、強引なんだけど、憎めないんだよな、こいつ。

烈は、納得してるな。いつもの無表情だし。
イヤだったら、即座に断ってるはず。

要は......穏やかに笑ってるけど、大丈夫なのか?
昇平に世話になってるからって、無理してないか?


「要、お前は帰省とか大丈夫なわけ?」

「休みに入ってすぐだから、大丈夫です。
 バイトも長期間は休めないから、びっちり帰省するわけじゃないですよ」


ああ、そっか。
昇平とは学科も同じで、ほぼ一日一緒だもんな。
まずは、要に確認してから申し込んだか。


もう、この頃には、昇平の表面からはわからない、几帳面さや計画性、気の遣い方がわかってきてた。
大阪人だからって、いきなり距離を縮めたりもしないんだよな。

俺、勝手に大阪のイメージ作りすぎてたかも。



練習が終わって、近くのコインパーキングへ移動する。
昇平が車で来てるから、順番に送ってくれるらしい。

歩きながら、しみじみ嬉しそうに、昇平が言う。


「俺、ラッキーやなぁ。プロ目指してるわけやないのに、いいメンツ揃ったわ」

「うん、プロ志望って言われてたら、絶対に断ったよ。
 俺は、祖父みたいな学者になりたいんだ」


要が、キッパリと言い切ってて、俺と烈は、ポカンとした。

まだ大学入ったばっかじゃん。
もう、将来のこと決めてるんだ、こいつ。


「お祖父さんが、うちの大学出身の学者で、親父さんが京大卒の技術系やったよな。
 親父さんみたいにはならんでええんか?」

「うん、子供の頃から、ずっと祖父みたいになりたかったんだ。もう亡くなったけどね。
 経済的には厳しいけど、学費免除と奨学金、バイトでなんとかなるし。
 現役で受かったのも、大きいかな。
 母も、後悔しないように頑張りなさいって、言ってくれてる」




要の話を聞いて、最初に会った時の感想は、間違ってなかったんだと思った。

同じように貧乏してても、俺とは違うんだよな。
素直で素朴、だけど、バカでもない。
いろんなことを考えて、自分の目標立てて、お袋さんにも納得してもらってさ。

唯一の贅沢が音楽で、でも、アルバムは友達に落としてもらったり、中古買ったりしてたらしいし。
予備校も行かずにバイトして、それでも現役で合格してる。
地頭もいいんだろうし、コツコツ努力するマジメさもある。

俺なんか、余裕ができたら、途端に夜遊びしてたし。
もっと頑張れば、東大か京大行けたかもだけど、さっさと逃げ出したくて、うちの大学だしさ。
それも、一人じゃつまんないからって、烈まで巻き込んだし。


うっわ、俺って情けない卑怯者......。


わかってたつもりだったけど、正反対の要が目の前にいると、なんか、つきつけられるって言うか。



顔には出さないようにしてたけど、晩メシ食って家に帰り着いたら、烈が俺の顔見てる。


「部屋、行こうか?」


こいつ、俺が凹んでるのに気づいたのかな。
自分から言うことなんか、滅多にないのに。

まぁ、俺が誘ってばかりだから、言い出す暇ないか。


「来てくれたら嬉しい」

「ん、じゃあ、先にシャワー浴びて。
 俺も終わったら、部屋に行く」


ポンとバスタオル渡されて、風呂場へ促された。
烈は、キッチンに向かってるから、コーヒー淹れるつもりなんだろう。





頭洗ってて、なんでこんなに凹むのか、もっとはっきりした。


あいつ、姉貴に似てるんだよ。

俺と違って、金に余裕ができても、地に足つけて、贅沢しないでさ。
兄貴が買ってくれるものは、喜んで受け取るけど、欲しいものはバイトして買うし。
俺なんか、すぐに兄貴にねだってて、それを注意はしてくるけどさ。

兄貴が嬉しそうだから、本気で叱りもできないって感じで、笑ってるの。

人間としての格が違う、そんな気になるんだよな。

姉貴にそう言ったら、「あんたより年上なんだから、当たり前でしょ」って言ってるけど。
たった二歳しか変わらないのに、俺はいつまでも姉貴には追いつけない気がしてる。

当然、兄貴には、もっと追いつけないと思う。


いくら居心地悪かろうと、高校卒業まではあの家にいた方が、絶対に有利。
俺たちのことなんか、知らん顔しようと思えばできたはずじゃん。

何度も考えたもんな。俺なら、そんなことできるかなって。

お調子者の俺と違って、人前で何かやるとか大嫌いだったのに。
本読むのが好きでさ。
後から知ったけど、兄貴だって、偏差値高い高校行ってたから、大学だって行けたんだよ。

姉貴は、それがわかってたから、何度も説得してたらしい。
俺には心配かけまいとして、見せなかったけどね。


いつまで経っても、末っ子の甘ったれ。

それが俺なんだって、要の存在が突きつけてくるんだ。

俺が悪いのは、わかってるんだけどさ。











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