「True Colors」
無色透明

無色透明 4

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夕方、ボーっとリビングでテレビ見てた。
画面に兄貴が出てて、また誰かと噂になったのかと思ってた。


『ご結婚、おめでとうございます!』


レポーターの声で、思わず前のめる。


俺、聞いてないけど?!


相手は、坂井瞳って、売れっ子アイドル。
バラエティでもドラマでも、よく見る顔だ。

ドラマで共演してたっけ、確か。
番宣で、「ずっとファンだったので、感激です!」とか言ってたな。


今まで、いろんなネタで話題になってたけど、マジで結婚するわけ?

慌てて、携帯探して、姉貴にかけてみた。



『ああ、テレビ見たの?なんかね、できちゃったみたいよ』

「げ、そんなドジ踏むの、にーちゃんらしくなくない?」

『よくわからないけど、外堀埋められたって言ってた。
 相手には、私とあんたの面倒見てるのは、話してないらしい。
 マスコミにはバレてないし、今まで通りにしてなさい』

「いいけどさ。ねーちゃん、大丈夫?」
 
『うん、新居は別にマンション買うから、ここにいろって。
 私は、卒業したら、自分でアパート借りて住むつもり』

「ん、俺、帰省しない方がいい?」

『あんまり相手はしてあげられないけど、私の卒業まではここに帰れるよ。
 就活も始めたし、資格試験の勉強があるから、忙しいんだ。ゴメンね』

「ううん、ねーちゃんには、これ以上、面倒かけられないし。
 ......甥っ子か姪っ子かわかんないけど、俺たちは会えないんだよね?」

『そうね、おにーちゃんは、私たちがマスコミに出るのはイヤみたいだし。
 私たちも関わらない方がいいと思う。苗字違っててよかったかもね』




そう、俺たちと兄貴は、姓が違う。

それは、親が離婚した時に、兄貴は親父の元に残されたから。
跡継ぎがどーのって揉めたのと、お袋が三人育てるのは無理だって判断した。

その頃のことは、俺、チビだったから、よく覚えてないんだ。
いきなり、狭いアパートに、お袋と姉貴と三人暮らしになって驚いたのくらいかな。


すっごく貧乏だったよ、笑えるくらい。
それでも、お袋が必死に働いてくれた。
ずっと、専業主婦だったのに、いきなり追い出されて、仕事探すのも大変だったと思う。

贅沢はできなかったけど、ちゃんとメシは食べさせてもらってた。
小学生の姉貴が、頑張って、家事を覚えてさ。
俺も、「ねーちゃん手伝う」とか言っちゃって。

貧乏ながらも工夫して、誕生日にはホットケーキ重ねて、お祝いしてくれた。
暗い顔なんかしてなくて、いっつも笑ってたよ、三人で。


元の家では、あんまり笑った記憶がないんだよな。
お袋は教えてくれなかったけど、後から姉貴が教えてくれた。

親父の実家に同居して、ババァにいびり倒されてたらしい。
親父もろくでもないヤツで、知らん顔してたどころか、気に入らないと殴ってたって。
姉貴もババァにイヤミ言われてたって。子どもなのにさ。
お袋にそっくりの見た目だから、嫌いだったんじゃないかって、姉貴は言ってた。

親父が浮気して、そっちと結婚するからって、離婚。
お袋も、いい加減、我慢の限界だったみたいで、雀の涙の慰謝料で承諾した。


親権で揉めたけど、兄貴がさ、言ったんだって。
兄貴だって、小学四年とかだったのに。


『俺だって母さんと行きたいけど、三人もいたら無理だよね。
 俺は、我慢できるから、母さんは、千秋と七海を連れていってやって』


俺も姉貴も、「お兄ちゃん子」だったから、離れるのは淋しかった。
でも、俺はチビ過ぎて、わけわかってなかったし。
姉貴は、小学生だったけど、空気読んで、頷いたって。


たまに、兄貴が会いに来てくれた。
親父や継母がキレるから、内緒だったみたいだけどさ。

自分の小遣いでお菓子買ってきてくれたり、シャーペンとか消しゴムとかくれたり。
それもあったから、俺たち、貧乏でも、暗くならずに笑ってられたんじゃないかな。

そのうち、再婚相手に子どもができて、兄貴は家に居づらくなった。
だからって、俺たちのところに入り浸りだと、またお袋がイヤミ言われる。
兄貴、よく我慢してたよな。



明るく笑ってても、やっぱり、お袋は無理してたみたいでさ。

俺が中学の時、職場で倒れた。
病院に運ばれて、そのまま死んじゃった。

姉貴と二人で、ICUで待ってたら、血相変えた兄貴が走ってきた。
三人で、「大丈夫」「大丈夫」って、言い合ってたけど、怖くて顔色は真っ青。

呼ばれて、中に入ったら、もうダメなんだって空気が漂ってた。
医者が何か言ってたけど、頭、真っ白になって、聞こえてない。

だって、管とか外されたお袋は、ただ眠ってるようにしか見えなくて。
すぐにでも起き上がって、一緒に帰ろうって、言いそうだったんだ。



葬式は、近所の人が手伝ってくれて、兄貴が頑張った。
お袋の方のじーちゃんは死んでて、ばーちゃんは施設に入ってたし。
お袋には弟が一人いたけど、連絡取れなかった。

親父は、電話しても「そうか」って言っただけ。
後片付けとかも、兄貴と姉貴が、周りの人に聞いて、全部やってた。

そして、俺と姉貴は、施設に行くことになってた。
親父が引取拒否したからさ。

それ聞いて、兄貴がブチ切れた。

もう十八になってたから、俺が働くって、高校辞めてきた。

アパートの大家さんがいい人でさぁ。
お袋がいなくなっても、兄貴が働くなら、そのまま住んでいいって。

よくおかずくれたりして、お袋のこと同情してたし、俺たちのことも気にかけてくれてたから。
兄貴も、遊びに来ては、きちんと挨拶してたから、信用してくれたんだと思う。


最初は、コンビニとかだったのに、すぐに夜の仕事に変えた。
時給がいいとこに変えないと、姉貴が高校行けないからって。

姉貴は、高校諦めてたんだ。
兄貴だって、中退しちゃったしさ。
そしたら、兄貴が言ったんだ。


『俺と違って、千秋と七海は頭いいんだからさ。
 高校も大学もちゃんと卒業して、いい就職口探せよ。
 俺は、どうせ大学も無理っぽかったし、頭使うような仕事は無理』


あっけらかんと、お袋みたいに笑って言うんだ。
悲劇のヒーローぶってるわけじゃなく、はっちゃけてるわけでもない。


『それに、あの家にいるよりは、お前たちと苦労する方が、千倍はマシ』


母親違いの弟が二人いるんだよ、俺たち。
だから、跡取り問題も解消してて、兄貴が家を出るのも、厄介払いできるって喜ばれた。
兄貴に固執してたババァは、年食って体が弱ったせいか、もう意見は通せなくなってた。
兄貴も、ババァが嫌いで、懐いてなかったのもある。

幸い、お袋は生命保険に入ってくれてたから、姉貴の高校入試には間に合った。
受験勉強しながら、家事もやっててさ。
高校入ったら、即バイトも始めてた。


そして、俺が受験の中三の時、兄貴が浮かれて帰ってきた。


『引っ越すぞ!俺、芸能人になるからな!』


最初は、冗談だと思ってたんだよね。
兄貴は内緒にしてたけど、ホストクラブで働いてたの知ってたしさ。

そしたら、次の週に、マジで引っ越し。
すっごく綺麗なマンションで、三部屋もあるの!
エントランスもエレベータも、オートロック!!

俺がポカーンとしてる間に、姉貴はせっせと引っ越し荷物整理しててさ。

真新しい家具と家電に、ニコニコニコニコしてんの。
鍋とかの調理器具も揃ってて、兄貴はすっごく自慢気。


『俺、バンドのヴォーカルとしてデビューするんだ。
 スカウトされて、社長にすごく気に入られてさ。
 お前たちのことがあるから、断ろうとしたら、ここ用意してくれた!』


そして、俺は、志望校を変えた。
歩きかチャリ通の都立じゃなくてもよくなった。

余裕ができたんなら、期待に応えたい。
そう思って、超がつく進学校を受験したんだよ。



兄貴が「TOY」になって、「HAKONIWA」ってバンドでデビューして。
あっという間に、ヒット曲連発してさ。



俺たちの勉強の邪魔になるからって、別の部屋を借りて、遅くなる時なんかは、そっちで過ごしてくれた。
苗字が違うおかげで、俺たちが兄弟だってのもバレてなかった。

兄貴と姉貴は、結構、顔が似てるんだ。
でも、男と女だったからか、気づかれにくいらしい。
俺だけ、親父にもお袋にも似てないんだよね。
お袋が言うには、叔父さんに似てるらしいんだけど。



生活に余裕ができるとさ、それまで見なくて済んでたモノを見なきゃならなくなった。

それだけは、哀しかったな。











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