「True Colors」
無色透明

無色透明 2

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「はじめまして、折島要といいます」


頭を下げたヤツは、はっきり言ってダサかった。

ストレートのジーンズ、それどこのだよ?
ボタンダウンのシャツ、それもノーブランドで、わけわかんないチェック。

髪型も、坊主がやっと伸びましたって感じ。
メガネも細い銀縁で、近視がきつそう。


でも、なーんか気になってさ。

同い年のはずなのに、穏やかで大人っぽいんだ。
声がちょい低めで、落ち着いた喋り方のせいかもな。

で、同時に、俺や昇平みたいに擦れてない。
烈みたいに、どっか病んだりもしてない。

綺麗に透き通って、静かに流れてくる湧き水、それが要のイメージだった。




「出身は九州って聞いてたのに、訛ってないのな」

「あ、はい。父の仕事で、亡くなるまでは、全国あちこちに住んでました。
 中学の時に、母の実家に引っ越したので、方言は未だに喋れません」


ああ、父親いないのか。
だから、奨学金とバイト頼みってことね。


「で、どんな音楽演ってたわけ?あんましチャラいのは困るんだけど」

「好きなのは、クリムゾンとかUKです。
 新しいのや日本のロックは、あまり知りません。
 ただ、高校でもそうでしたが、楽譜は読めますので、合わせます」


烈が、さっさと本題に入れとばかりに質問して、即座に返り討ち。
プログレ好きでスコア読めるって、予想外の返事だったのは、顔見てればわかる。

耳コピとタブ譜で始めて、やっとこの前スコア読めるようになったとこだもん、俺たち。
テクはあっても、音楽理論なんて、まーったく知らない。

高校でバンド始めたらしいけど、そうそうプログレ演りたいってヤツはいない。
声の大きなヤツが、曲決めてたんだろうな。

こいつ、前に出る感じじゃないし。



俺と烈は、ドラムとベースだから、数が少ない。
みんな、ギターやヴォーカル演りたがるからさ。

その分、誘いは多いから、選び放題してきた。
イヤな曲は演らなかったし、自分たちの意見はガンガン言ってた。

今は、昇平が、対外的なこととかヴォーカル探しとか、全部やってくれるから楽。
昇平自身も、俺たちとは演りやすいらしくて、烈がワガママなのも気にしてない。




「とりあえず、歌ってみせてよ。
 持ってきたってことは、ギター弾けるってことだよね?」


烈が促して、空いてる練習室へ移動。
完全防音じゃないから、音は絞らなきゃだけど、軽く合わせるには充分。


要がギターをケースから出した。
見たこともないメーカーで、弾き込んでボロボロ。
構えた姿を見て、つい吹き出した。


「お前、左利きなのに、普通のギター?弦は?」

「左利き用は高いですからね。とてもじゃないけど、買えません。
 中学の時に、小遣いと新聞配達で、なんとか手に入れました。
 弦を逆に張って使ってますけど、なんとかなりますよ」


別に卑屈になってるわけでもなく、穏やかに微笑んでる。


あれ、こいつ......。
メガネやダサいファッションで隠れてるけど、顔もスタイルもそこそこ良くね?

背は俺より少し低い。姿勢が良くて、バランスがいい体型してんのな。
顔も、鼻筋は通ってる。口元は締まってて、歯並びもきれいだしさ。
メガネ越しでも、くっきり二重で整ったアーモンド型の目なのがわかる。

顎も細すぎず、ごつすぎず、髭も薄い。
一番は、きれいな形の唇。烈ほどは紅くないけど、男にしちゃ色っぽい。

あ、やべ...好みかも。




「早く演ろうってば!」


烈がキレて、我に返った。


「れーつー、キレんの早すぎ。
 んじゃ、Zeppelinの"Communication Breakdown"でも演るか」


先週、スタジオで練習したよな。
この前振りだったわけか。

さすがだよな、昇平。お前の気の回し方には、頭が下がるよ。

しっかし、原曲のキーのまんまで、こいつ歌えるのかよ?

昇平が構わず弾き始めたから、俺も合わせて叩いてみる。
烈も、淡々と弦を弾いてる。


そして、要の歌が始まった。


喋ってる時からは想像もできないくらいの高音を、難なく歌いこなして。
音を外さないし、英語の発音も、俺なんかが言うのもおかしいけど、すごく正確。
細っこく見えるけど、声量が半端ない。


烈も驚いたみたいで、こっちをチラチラと見てる。
昇平は、満足気にニヤニヤしてるしさ。




「これで文句ないよな?」


演り終わって、すぐに、昇平が聞いてくる。
俺は、もちろん、大歓迎。

これだけ歌えるヤツは、そうそういないしさ。
手を出す気はなくても、好みのタイプがいると、やる気出るじゃん?

烈は、こっくり頷いて、じーっと要を見てる。
何か、観察でもしてる感じで。


「じゃあ、よろしくお願いします。
 昇平、俺、バイトの時間だから、帰るね。
 すみませんが、失礼します」

「ありがとな!次の練習日決まったら、寮のヤツに伝言頼むか電話するわ」


手際よく、ギターを片付けて、要はダッシュで帰ってった。



「言うてた通りやろ?学科の新歓コンパで、一年はカラオケ歌わされてん。
 あいつが歌った時、みんな、喋りもせんと聴き入っててな。
 即、口説いたんやけど、金ないし、バイトせんならんって、なかなか縦に首振らんし」

「何か奥の手でも使ったのかよ?」


あいつ、バンド経験者なのに、サークルには入るつもりはなかったってことだろ?
あれだけ歌えるヤツなら、絶対に演りたくなるはずなのにさ。
それぐらい、切羽詰まってる経済状態な上に、こいつらの専攻って出席とか厳しいって有名じゃん。


「ああ、時給のいいバイト、紹介したんや。
 俺がやろうと思ってたやつな。制服貸与やし、夜の賄いもあるし。
 あれなら、週三で入れば、なんとかなるんちゃうかな」

「お前、譲っちゃってよかったの?」

「うん、俺はいろんなツテあるし、生活のためちゃうし。
 新しいギター欲しいだけやから、焦らんでええねん」


こいつも、烈と同じでお坊ちゃん。
それでも、ギターはバイトして買うのか。


ま、俺だって、貧乏だったのは中学までだし。
やっかまれるのはマズいから言わないだけで、たっぷり仕送りもらってる。

昇平のこと言えた義理じゃないよな。

バイトしなくても、欲しいモノは兄貴に言えば、すぐに金振り込んでくれるし。
どっちって言うと、俺の方が甘ちゃんか。




「ほな、次の練習は、今度の日曜昼な。
 スタジオ代、安いとこに変えるで。ええよな?
 四人で割り勘やし、あいつが続けられんようになるの困るしな」

「機材の質落ちるのイヤだから、俺が出す」

「烈、それはあかん。誰か一人が出すんは、気ぃ遣うし、長続きせんで。
 所詮、学生の間のお遊びでも、やんねやったら、楽しぃにやろうや」


子どもを宥めるように、昇平が言い聞かせてる。
烈は、渋々だけど頷いた。

大阪弁って、こういう時に柔らかく聞こえるのが得だよな。

昇平も、烈の扱いに慣れてきたみたいで、巧く操縦してる感じ。
なんだかんだ言って、要も連れてきたし。


こいつ、見た目と違ってチャラいだけじゃないのかも。

少しだけど、昇平の中身がわかった気がした。 











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