「Crossroad」
secret party

secret party 11   健太

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とうとう、昌行のお祝いパーティの日がやってきた!


僕たちは、一昨日から東京に来てた。
そのために、全員、仕事を前倒しで頑張ったんだよ。
練習も、必死にやったしね。

特に、笙さんと要さんには、すっごく頑張ってもらった。

笙さんには、練習や仕事だけじゃなく、パーティの準備。
要さんは、仕事だけじゃなく、二週間前にソウルで学会発表があった。

すっごく大変だったと思うのに、ニコニコと二人とも協力してくれる。
ほんとに、ありがたいよね。




リハーサルをやるから、僕たちは、早めに集合しなきゃいけない。
二台の車を、怜ちゃんと涼ちゃんが、それぞれ運転して、マンションを出発。

ドキドキとワクワクがまぜこぜになって、足元がふわふわしてる。
昌行がそっと手を握ってくれて、落ち着かせようとしてくれた。


「俺だって他人の前で演るのは、久しぶりすぎて緊張してるけどな。
 ラッキーと言っちまえばおかしいが、俺たちはベースだから、ミスっても目立たねぇよ。
 新治さんが、しっかりキープしてくださるんだ。
 大船に乗った気持ちでいればいい」

「そうそう、父さんの言う通り。
 それにさ、俺たちはプロじゃないんだから、楽しんでればいいんだよ」


昌行に続いて、怜ちゃんも宥めてくれて、なんとなく緊張は解けてきた。

うん、そうだよね。

逆を言えばさ、こんなにラッキーなことはないんだ。
ただのアマチュアなのに、英一さんのご厚意で一緒に演らせてもらえるんだからさ。





会場に到着したら、笙さんがテキパキと指示を出してくれる。

音響や機材のことは、英一さんと二人で打ち合わせしてくれてた。
全部、頭に入ってるのも、どんなパートも演れるからなんだよね。

今回は、英一さんと二人でキーボード。
四歳からピアノを習ってて、先生に音大受験を勧められたくらいだから、バンドでもよく演ってたみたい。

ただ、一番好きなのは、ベースなんだって。
小学生の時から昌行が教えてくれたって、笑って話してくれた。



笙さんが話してくれる、中学生や高校生の昌行は、今より、ずっと気弱でほわんとしてる。
でも、本質的に優しくて、周りによく気遣いするところは、全然変わってないんだ。

昌行も、すっごく笙さんのことを可愛がっててさ。
僕、最初は、ちょっとだけ、ヤキモチ妬いちゃったんだよね。

恋愛感情云々じゃなくて、僕が知らない頃の昌行を知ってるのが、すごく羨ましかったんだ。

でも、すぐに反省した。


小学生の頃からずっと懐いてて、いきなり会えなくなった。
一生懸命に探し回って、消息が掴めたと思ったら、僕の家に住んでた。

だから、直接は会うことができない。
僕と二人でいるところを、遠くから見てるだけ。
たまに、短いメールや電話ができるようになったのは、昌行が立ち直った後からだ。

昌行がカタギに戻って、笙さんも公務員を辞めたから、やっと再会できたんだよね。

その間は、ずっと僕が独り占めしてたんだもの。
でも、そう言ったら、笙さんに笑い飛ばされちゃったけどね。


『健太さんがいてはらへんかったら、昌兄は立ち直ってへん。
 英兄と二人で、健太さんに、めっちゃ感謝してたんよ』


だって。




「おう、もう来てたのか。機材は問題ないか?」


英一さんたちが到着して、自分たちの機材をチェックし始める。
ローディーさんは来ないから、自分でやるしかないもんね。


「今日は、エンジニアもいねぇし、マジでアマの頃と変わんねぇな。
 誤魔化しは効かねぇから、気をつけろよ」

「わかってるよ。アコギは俺だけだし、ミスると悪目立ちするよな」

「わかってんなら、いいんだよ。わかってんなら、な」


英一さんと宗次郎さんが、いつものようにやり取りしてて、つい笑っちゃう。
でも、僕だけじゃなくて、近くにいた人は、みんな笑ってるんだ。



ドラムとキーボードのセッティングが終了して、英一さんが声を上げた。


「さて、軽く一度だけ合わせてみるか。
 特に、怜の曲は、弦屋のヤツらもビビってるしな」



今日のセトリは、SMSのインディーズ時代の曲が中心。
ただ、英一さんの提案で、僕たちのも一曲だけ入る。
最初に事務所に招待された時、新治さんに叩いてもらって演った、怜ちゃんの曲。


「あの曲に、ストリングスが入るなんて、考えもしませんでしたから。
 英一さんじゃないと、そんなこと考えつきませんよ」


怜ちゃんは苦笑いしてるけど、英一さんがアレンジしてみたかったんだろうな
遊びのつもりだったのに、しっかり録画されてたって聞いて、後で焦った記憶がある。


実は、僕、最初に楽譜もらった時、弾けるかどうか自信なかったんだよね。

でも、怜ちゃんが言ったんだ。


『この曲は、涼のギターと健太のベースが、目一杯に活きるように作った。
 二人のテクも考えてるから、絶対に練習すれば弾けるはず』


そこまで言ってもらったら、「頑張らなきゃ」って気合入った。
それに、二人と違って、家でも練習できる環境だったしさ。
昌行って先生もいたし、恵まれてたから甘えてられないよ。

これを最後に、怜ちゃんは曲作りをキッパリと辞めて、目標に向かって猛ダッシュを始めたんだ。
つまり、僕の伴走に専念してくれたってこと。

何度でも思い出しては、感謝で胸がいっぱいになるんだ。



怜ちゃんのシャウトから始まって、すぐに涼ちゃんのリフが始まる。
相変わらずの、正確で切れの良いピッキング。
そこへ、僕と新治さんが、かぶせていくと、キーボードが絡んでくる。

Bメロからは、弦屋のみなさんも一人ずつ被さってきて、音の広がりが凄くなった。
本番じゃないから、怜ちゃんも涼ちゃんも抑えめにしてるけど、僕は必死。
でも、隣に昌行がいて、余裕な顔してるから、悔しくってさ。


一曲通しなのは、この曲だけで、後は軽く流しただけ。
それだけ難しいって、みんな思ってたってことかぁ。

笙さんと要さんは、軽々と演ってたから、プロなら楽勝なんだと思ってた。
まぁ、この二人もプロで通用するって、駿さんのお墨付きがあったりするんだけどさ。




「おっし、これならなんとかなりそうだな。
 そろそろ、客が来始める時間だろ?」

「うん、あ、最終確認!今日の司会進行は、基本は英兄やんな?
 そんで、ライブ前から終了後しばらくは、修さんがやってくれはるんやろ?」

「ああ。それと、聡志さんが友達に頼んでくれて、受付と飲食物管理はやってもらえる。
 駿が懇意にしてる店だから、味も安全も保証するって。
 お前、ほんっとチェック魔だよなぁ。何度目だよ?」

「アホのせいで、慎重な性格になっただけですー」


二人が本当の兄妹みたいに言い合ってるのを、宗次郎さんが遠巻きに見てる。
笙さんに捕まるとお説教されるから、なるべく近寄らないようにしてるんだ。

ちょっと離れて立ってた駿さんが、ニヤッと笑って、僕たちに軽くウィンクしてみせた。
いつ見ても昌行によく似てると思うけど、こういう仕草は、照れ屋の昌行には無理かな。



「着替えるなら、早くしろよ。
 そろそろ、客が入場するぞ」


ビシっとした駿さんの声で、みんなが背筋を伸ばす。

涼ちゃんが嬉しそうに、怜ちゃんの手を取って、控室へ移動を始めた。
慌てて、僕と昌行も移動開始。

笙さんと要さんは、ライブが終わったら着替えるらしくって、そのまま打ち合わせし始めた。


控室で、涼ちゃんが選んでくれた衣装に着替える。
昔のまんま、Tシャツにデニムのボトム、足はスニーカー。
ただ、Tシャツは、アデルのだったりするんだけど。

髪の毛は、普段通りのプライベートモード。
仕事では、みんなすっきりと前髪を上げて、額を出してるけど、今日は何もなし。

アクセも、お揃いのピアスに、ペアリングだけ。



「決めのジャンプはできないけど、それ以外は心配しなくていいからな」


怜ちゃんが気を遣って言ってくれたけど、心配なんかしてないよ。

だって、怜ちゃんだもの。

ね、涼ちゃん?  











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Re: NoTitle

Mさん、問題ないと思いましたけど、押し忘れとのことなので、前のは削除しときました。

健太、小心者のくせに開き直ると一番強かったり(笑)
昌行が、指でもピックでも弾くタイプ(=英一と同じ)なので、二人ともピックは嬉しかったはずです。
さて、残り一話となりました。
楽しんでいただけるといいのですが。
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