「Crossroad」
secret party

secret party 8   誠

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斎藤さんの祝賀パーティまで、残り一週間ちょっと。
全員オフだったから、八木の提案で、軽く練習することにした。


練習場所は、八木の家。
単純な理由だけどな。

慣れてるとは言え、チェロを運ぶよりは、俺たちが移動した方がマシってのと。
八木もクラッシック一家出身で、がっちり防音した一軒家に住んでるから。


いつもなら、俺たちだけで練習することは、ほとんどない。
カルテット単独の仕事なら、クラッシックの定番が多いから直前に打ち合わせだけ。
ミュージシャンのバックなら、ミュージシャンのリクエストに合わせてリハをやる。

俺たちが、フリーで生き残ってこれたのは、臨機応変に対応できるからなんだ。
四人になっても、それは変わらない。


当然、毎日の個人練習は欠かさない。
いくら遊んでようと、チャラいと言われようと、最低限のことはやるっての。
じゃないと、メシは食っていけないしな。

それにさ、今は、自分一人じゃないからさ。

俺たちが潰れると、大樹も光も路頭に迷うんだ。

そういう意味では、事務所開いたのも、大樹にプロポーズしたのも、結果的によかったと思う。
すごくやる気が出たし、周りからも音が良くなったって言われてる。




ただ、今回だけは、ちょっとばかり、合同練習しないと厳しいんじゃないか。
そう思ってたところへ、八木が言い出した。
大下も梅野も、同じ考えだったみたいで、即座に乗った。



たぶん、俺同様、怜君の曲で悩んだんじゃないかな。


元スコア見て、あの曲にストリングスを入れてみるって、英一さんのアイデアは無謀だと思ったけど。
ストリングスのスコアもらって、さすがって唸ったもんな。

実際に違和感がないように弾きこなすには、四人で合わせてみた方がいいと思う。





起きて、シャワーを浴びてからダイニングに行くと、大樹が朝メシを用意してくれてた。

刻みネギを混ぜ込んだ納豆、玉子焼き、ほうれん草のおひたし、焼き茄子、わかめと豆腐の味噌汁。
食べやすいのに、しっかり腹にたまる献立。やっぱり、和食が一番。

大樹が作ってくれるから、余計に美味いってのはあるかな。
一口ずつ味わって食べてたら、大樹がお茶を淹れてくれる。


「車で行くんでしょ?全員分のお弁当、作ってあるから、持っていってね」

「あれ、お前は来ないのか?」

「言ったじゃん。光さんと一緒に、英一さんとこの事務所行くって。
 音響や衣装の最終確認するんだよ」


ああ、どう演るかで頭一杯になってたな、俺。
他のことは、全部、大樹と光に投げっぱなしだったっけ。

一緒にいられないのは、ちょっと残念だけど、しかたないな。
練習してれば、あっという間に時間は過ぎる。




「昨日、見せたでしょ?四人の意見を取りまとめて、報告書作ったの。
 あれを英一さんに見せて、最終調整してもらうんだよ。
 俺も、ちゃんと頑張るから、誠たちは練習頑張ってね」


キビキビと説明したと思ったら、ふわっと優しい笑い顔。
癒やしオーラ全開で、やる気が出るなんてもんじゃない。


俺、ネットゲーやっててよかったな。
じゃないと、大樹と出会うことなんかなかったもんな。



「あ、それとね、忘れないでね。
 今夜は、ギルドの解散式だよ」

「そうだな、俺たち三人の引退式でもあるし、必ずインしなきゃな」




DFも、サービス開始から十年を越えた。
シリーズの次作オープンβが開始間近だ。

拡張ディスクは、これ以上、発売しないと告知があった。
つまり、コンテンツが増えることは、もうない。

そこで、ギルドメンバーは、それぞれの今後を考え始めた。
今のを遊び尽くして、新シリーズへ移動するヤツ。
仕事が忙しくなって、まともにログインできなくなったヤツもいる。
結婚して、嫁さんに禁止されたヤツもいるしな。


珍しく、長続きしたギルドだったが、それも光がマスターをやってくれたから。
その光が引退すると言い出したのをきっかけに、俺と大樹も足を洗うことにした。
大樹も俺も、Crossroadに出入りするようになって、世界が広がったのも大きい。

大樹は、翼君って大親友もできたしな。


クロ君こと正章も、勤めてるレストランのシェフの勧めで、パリに修行へ行くことになった。
シーナちゃんに振られたらしいユエさんと、リアフレのジュピは、新シリーズへ。

そのシーナちゃんは、まだルドさんが当分はやるつもりだから、二人で残留。

ポンちゃんは......俺と大樹を見て、頑張ってみようと思ったらしくて。
今の彼氏と、もう一年半続いてる。

一緒に住むことにしたからと、彼氏がやってる別ゲームへ、完全に移動。
今まで両方やってたけど、さすがに仕事が忙しくて、ひとつに絞ることにした。





「淋しいのは淋しいけどさ。クロさんの壮行会もあるし、またオフ会もできるしね。
 それに、二人の邪魔はしたくないし......」


クスッと、大樹が思い出し笑い。

そう、シーナちゃんは、従兄のルドさんに片想い中。
大学こそ、やりたいことがあるからと、東京に来たけど、就職では地元に帰る。
来春には博士課程も終了で、地元の研究所に研究員として入所する。

そして、ルドさんにアタック開始するんだそうだ。


『ずーっと、憧れのお兄さんだったんですよね。
 子どもだからって、相手にしてもらえませんでしたけど。
 彼女ができても長続きしてないのは、仕事のせいみたいだし。
 サイッチさんを見習って、諦めずに頑張ります!』


はっきり言って、ルドさんは、憧れるほどの外見じゃないと思う。
でも、中身は、光も認めるくらい、器が大きくて賢い、男前。

シーナちゃん、見る目があるよな。




「光さんと大下さんも、上手くいくといいなぁ」

「この前も、空振りだったみたいだしなぁ」


二人で顔を見合わせて、つい、ため息を吐く。

最初に失敗したせいか、大下は小出しにしか、光へアプローチしていない。
あのくらいじゃ、光にはわかりっこないんだって、何度も忠告はしてるんだけどな。

ただ、当の光以外には、全員にバレバレのベタ惚れだ。


「自分のことだけは鈍いからなぁ。下手に口出すのも怖いしね」

「そうだなぁ。大下の愚痴聞いてやるくらいしかできないしな」



お喋りしながら後片付けをしていると、もう出発の時間。

商売道具を片手に車庫まで行くと、大樹が見送ってくれる。
弁当を後部座席の足元に固定させて、ドアをパタンと閉めた。



「いってらっしゃい。気をつけてね」

「ああ、行ってくる。お前も気をつけてな」


頬に軽くキスすると、外だからか焦った表情。
これ見るの、楽しみだったりするんだよ。

やりすぎると、本気で叱られるから、程々にしないとな。



「まーこーとー」


あ、ヤバい。声がもう怖くなってる。
そそくさと、エンジンをかけて、窓から挨拶。


「んじゃな。夕方には帰るから、晩メシは俺が作るな」

「......お願いね」


少しだけ、怖さがなくなった気がするから、これでOK。


さぁ、さっさと頭を切り替えて、練習しなきゃな。
いくら仲間内のパーティでも、大樹にカッコ良く思われたいじゃん?

だから、ビシっと決めなきゃさ。











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