「Crossroad」
secret party

secret party 6   駿

 ←secret party 5   完 →secret party 7   涼

今年、ラストの夏フェス。


まだ、出番まで時間がある。
気になる組を偵察に出ちまったから、戻ってくる頃には、水分補給させなきゃな。

あいつらも、トリがすっかり馴染んできて、余裕が出てきた。
まぁ、だからって、手抜きなんかできねぇとこが、らしいんだけどよ。




「失礼します」



聞き覚えのある声。
開けっ放しのドアを見ると、BANZAI-SANSHOのヤツらがいた。

太一郎と嫁の後ろには、海と完。
薫も育休から復帰して、頑張ってるのは、レンさん、奈津さんからも聞いてる。



「おう。今、あいつらは、他の組見に行ってんだ。
 そろそろ戻るはずだが、待ってるか?」

「あ、はい。時間には余裕を持たせてきたので、待たせていただきます」


クソ丁寧な返事は、太一郎らしくて、笑えてくる。

こいつの親父たちは、デビュー当時、散々、言葉遣いを注意されてたの思い出した。
康生以外の三人は、だけどな。

康生は、クラッシック育ちなのもあるし、実家が裕福なせいか、さすがに礼儀正しかった。
品さえ感じさせる立ち居振る舞いには、感心したもんだ。


...他の三人はなぁ。
そこそこの家で育ったお坊ちゃんのくせに、いっぱしにロッカー気取り。
特に、優児と長生は、口の利き方も礼儀もなってねぇ。

どうしたもんかと思ってたが、俺は英一たちについてたし。
ルイさんがプロデュースだって聞いて、静観してたんだよな。

ま、見事にルイさんに矯正されてたのは、笑っちまったけど。





そうこうするうちに、英一たちが帰ってきた。
口々に、見てきた組の感想を言い合ってて、それは昔から変わらねぇ。



「ああ、お前たち、来てたのか」


俺が口を開く前に、英一が太一郎たちに気がついた。
ここは任せて、スポーツドリンクをクーラーボックスから取り出して配る。


「はい、今日はよろしくお願いします。
 出番が終わったら、トリまで見学させていただきます」

「あ、ツバサとカズヤも来るぜ!チケット、送ったら、喜んでた」


対照的な太一郎と完に、ニヤッと笑って、英一が答えた。


「ああ、篠原が送るって聞いたから、俺からは送らなかったんだよ。
 ちゃんと、関係者IDも申請したか?」

「へ?なんでだよ?」

「マジかよ?!あいつら、遠慮して、自分からは絶対言わねぇからなぁ。
 今年も、俺から連絡すりゃあよかったな」



ブツブツ言ってんのは、翼の差し入れがないってことに、がっくりしちまったんだろう。
翼が作る、英一の大好物のフルーツパイは、辛党のスタッフにも評判がいい。



笑いながら、その光景を眺めてたら、スマホが鳴った。

噂をすれば何とやらで、翼からだ。


『すみません、関係者IDないから、入れないのわかってたんですけど。
 一応、今年もパイ作ってきたんで、受け取りだけお願いできませんか』

「今、迎えに行く。関係者出入り口近くだろ?
 ちょっとだけ、待ってろ」


キョトンとしてる完に、困り顔の海。
それをからかってる英一を横目に、翼と和哉を迎えに行った。



二人とも、デカいクーラーボックスを抱えてやがる。

俺の姿を見るなり、二人して頭を下げた。
その姿勢の良さに、いつもながら感心する。
すっと伸ばした背筋、均等に体重をかけた足元、肩から首すじのライン。
一見、正反対に見える二人だが、立ち姿に品の良さが出てやがるとこは共通してんだよな。



「ついてこい。ちょうど、BANZAI-SANSHOのヤツらも来てんだよ」

「マジすか?すっげタイミング!!
 今年はIDないんで、BANZAI-SANSHOの分、駿さんにお願いしようと思ってたんすよ!」


よく見ると、和哉が三つもボックス下げてやがった。
二組分だからって、倍作ってきたんだな。

思わず笑っちまうと、翼が恥ずかしそうに頬を染める。
こりゃあ、和哉も不安になるわけだ。
これだけの外見なら、あちこちから手が伸びてもおかしかねぇし。


聡志と修に拾われなきゃ、こいつ、どうなっちまってたかな。




情けねぇが、俺も英一に再会するまでは、そっち側の人間だった。
適当に遊ぶだけで、中身なんかどうでもよかった。

ゲイの世界では、綺麗なヤツってのは、よほどしっかり自分を持ってないと、おかしくなっちまう。
努力しなくてもモテる。あちこちから声がかかる。

そして、年食って、容姿が衰えてくると、見向きもされなくなって、焦って自滅する。
中身を磨くような努力もしてねぇから、まともな社会人としては生活できなくなんだよな。

そんなヤツを何人も見てきた。
山根も、事務所をクビになってから、聡志にも頼れなくなって、いつの間にか消えてった。

逆に、不細工だろうが、中身がしっかりしてりゃあ、幸せは掴めるもんだ。
一夜限りの相手じゃなく、人生をともに歩む相棒を見つける可能性もゼロじゃねぇ。


俺は、仕事が最優先っつうか、世話になった人が最優先だった。
だから、レンさんたちと片岡のオヤジさんの命令は、何でも一生懸命にこなしてきた。
精神的にすがるもんがあったから、欲さえ満たしてりゃあいい、そう思ってた。



英一に再会した時、動揺が顔に出ねぇようにするの、必死だったよ。
ポーカーフェイスにゃ慣れてたつもりだったが、あんだけ好みになってるって。


あん時は、まさか、隣にいてくれるようになるとは、思いもしなかったな。
英一に言われるまで、自分の好みの元が英一だとも気づいてなかったし。





「英一、お待ちかねの翼が来たぞ」


こっちを見るなり、間髪入れずに、英一が「やった!」と叫んだ。
その姿には、ベテランミュージシャンの威厳なんか、欠片もねぇ。


サブの長野にパイを切り分けるように頼んで、コーヒーを淹れることにした。
翼は、BANZAI-SANSHOのメンツを見て、ボックスを渡してる。


「これ、よかったら食ってくれ。
 BANZAI-SANSHOのは、斎藤さんバージョンで作ってきた」


ああ、リンゴ多めにしたってわけか。
こっちのは、笙のお袋さんレシピだしな。

やっと気づいたのか、完が質問してやがる。



「あ、もしかして、毎年、関係者パスだったわけ?」

「うん、最初は、斎藤さんたちに連れてきてもらった。
 野上は、ほとんどのフェスに協賛してっからさ。
 今年は、斎藤さんたち、忙しくて来れないから、フェス諦めてたんだよな。
 ほんっと、ありがと!!」



無邪気に礼を言ってるが、完と海が気まずそうなのは、スルーしてんな。
気づいてるはずだが、チケットが嬉しかったのは本音だろう。
関係者IDをねだるほど、厚かましい性格じゃないしよ。



「昌行たちが来れねぇ時は、俺に連絡しろっつってんじゃん。
 いっつも、遠慮ばっかしやがって。
 夏フェスもライブも、お前のパイがあると、すっげやる気出るんだ。
 堂々と言ってこいっての」


おいおい、そんな言い方してっと、翼には通じるが、海たちはマジに受け取るぞ。

お前がパイ目当てに、翼たちに来て欲しがってるってな。

ほんとは、パイがなかろうと、ID持たせることで「お前は仲間だ」って、表してんだけど。
まぁ、照れ屋のお前らしいよ。

他に人がいると、素直に言えねぇんだって、俺にはわかってる。
ったく、可愛らしいよ、俺の王子様は。



「そろそろ準備があるんで戻ります。お邪魔しました。
 ツバサさん、ごちそうさまでした」


太一郎が頭を下げて、BANZAI-SANSHOのメンツが出ていった。
その背中を見送って、英一が気を遣う。


「前に行かなくていいのか?あいつらのステージも見るんだろ?」


照れくさそうに笑って、翼がぴょこんとお辞儀した。
隣の和哉は、軽く頭を下げる。


「翼がウズウズしてるので、俺たちも失礼します。
 ステージ、楽しみにしてます」

「バッカ、ウズウズなんてしてねぇっての!」


いつものように、軽口を叩き合いながら、翼と和哉も部屋を出る。


途端に、英一がプロの顔になって、メンバーに声をかけた。



「あいつらのステージ、袖で見て、暑さ慣れすっか。
 チューニングは大丈夫か?」


三人が、一斉に返事をして、ステージ近くへと移動する。
全員、普段とは違う表情で、BANZAI-SANSHOの音とステージを観察してる。

それは、可愛がってる後輩バンドを見る目じゃねぇ。
自分らと同じ土俵に立ってる、ライバルを見る目だ。



お前らのマネージャーは、ほんとにやり甲斐がありまくりだ。
仕事人間の俺にとっては、これも大きな幸運に違いねぇ。



マジ、レンさんに感謝だな。

俺なんかを拾ってくれて、大事な宝モンを任せてくれて、息子にまでしてくれた。
どれだけのことができるかは、わかんねぇけど。

精一杯、親孝行させてもらいます。











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