「Crossroad」
secret party

secret party 2   怜

 ←secret party 1   英一 →secret party 3   大樹

「英兄と話し合った結果、防音のしっかりしたイベントスペースを押さえることにしました。
 演者が多いので、見合うステージの会場だと、客席が無駄に広くなりますし、飲食物持ち込みが難しいですから」


笙さんが、俺と涼と健太の三人相手に、淡々と報告してくれる。
仕事の時と同じモードのようでも、少し違う雰囲気。


「笙さん、嬉しいの抑えるために、わざと事務的に話してる!」


涼が天然炸裂して、笙さんが苦笑い。
健太もクスッと笑いを零す。


「まぁ、嬉しいてしゃあないんで、舞い上がらんようにしてるだけ。
 昌兄も英兄の説得が効き目あったみたいで、ほっとしたわ」


すっと大阪弁で自然に話して、プライベートモードにチェンジ。
最近は、俺たちの前でも大阪弁になってきたのは、それだけ気を許してくれたってことらしい。


大樹君が、言ってたんだ。


『俺相手に、笙さんが大阪弁喋ってくれたのは、退職なさってからです。
 仕事中は、ほぼ標準語でした。ライブで、旦那さんやお友達相手には喋ってましたけど。
 だから、俺の送別会で大阪弁聞いて、驚いたし嬉しくもありました』



父さんのことを兄貴だと思ってるから、その養子の俺たちは甥っ子みたいなもの。
そう言ってくれるけど、年を考えたら、叔母さんって言うより、お姉さんに近いかな。
父さん自身、俺たちと一周りしか違わないしね。




「セトリやけど、英兄から「ノーヒットノーラン」のリクエストが来てんの。
 あの曲に、キーボードとストリングスを加えてみたいんやって。
 それ以外は、怜さんのアレンジのままでOK。
 他の曲は、昌兄や怜さんたちで話し合って、英兄に連絡してくれる?」

「ああ、じゃあ、誠さんたちも参加してもらえるんだ。
 英一さんがキーボードに回って、笙さんとダブル。
 ベースも健太と父さんでダブルになるってこと?」

「うん、そんな感じになるんちゃうかな。
 決まり次第、演者全員に、英兄がセトリとスコアを送信するんで。
 PCメールのチェックは、忘れんといてね」

「言い出したのは俺なのに、ほとんど英一さんに仕切ってもらって、申し訳ないなぁ」


俺が困ってそう言うと、笙さんがクスクス笑ってる。
なんか、俺、変なこと言ったかな。


「英兄も、嬉しいてしゃあないん。
 昌兄とセッションするって約束してたのが、やっと実現するんやもん。
 それに、私も英兄も、もらい過ぎたギャラの使い途ができて、ほんまに良かったわ」



え、ちょっと待って。
もしかして、二人で全部出しちゃうつもりなの?!



「いやいや、それはないでしょ?俺と怜ちゃんだって、お金出すよ。
 父さんのお祝いなんだし、俺たちが言い出したんだしさ」

「えー、僕だって出したいよ!昌行のお祝いなんだよ?
 僕が、一番、権利あるよね?!」


涼も健太も、俺と同じように驚いてて、文句言ってる。
でも、笙さんは、華麗にスルーして平然とした顔。


まだ食い下がろうとしたら、冷静に淡々と、笙さんのマシンガン正論トークが炸裂した。



「所得税払っても、どれだけ残ったと思ってんの。
 あちこち寄付しようとしても、あまり多いと怪しまれて、受け取ってもらわれへんし。
 あんな分不相応な金額、私には必要ないって、何度も言うたのに。
 マンションもローン終わってるし、建設の給与で老後の資金も貯まったし。
 おかんの方も、お義姉さんがちゃーんとしてくれてはる。
 普段、みんなと行動する時は合わせてるけど、内心、ドキドキもんやねんで。
 元々、私も旦那も貧乏性なんやから、普通でええのん、普通で。
 それに、今度の経費かって、英兄と駿さんが口利いてくれて格安。
 全部、私が出す言うてんのに、英兄が先に済ましてしもて。
 無理矢理、半額振り込んだとこやの」



こういう時は、いくら大阪弁でも、無表情になるから、余計に怖かったりするんだ。
この口調で話されると、何言っても言い負かされるから、おとなしく白旗揚げるしかない。

しゅんとしてたのが可笑しかったのか、笙さんがいつものシニカルな笑い顔になった。
声のトーンも、元に戻った。


「三人の気持ちもわかるけど。お金出すより、目一杯、練習する方がええんちゃう?
 昌兄もびびってたけど、バリバリのプロとジョイントやで?
 忙しいのは、みんな同じやけど、私も旦那も頑張るし。
 当日、昌兄が楽しいのが一番やろ?」

「あ、そうか。SMSも全員で来てくれるんだもんね。
 吾市さんと並んで演るのは、いくら俺でもちょっと怖いかな。
 そう言えば、海と完は?」


涼が、納得って感じで頷いた。


「海と完は、今回はお客さんやって。
 弦屋の四人も入って、演者だけで十四人もいるんで充分過ぎやし。
 メインは、昌兄のお祝いやから、見学しとけって、英兄が言うてるはず」

「アコギで演った時、真剣に聴いてたから、悔しがるだろうね。
 僕さ、悪いけど、あの時、すっごく鼻が高かったんだ」


ああ、健太たちの誕生祝いに、涼と二人でミニライブ演ったよな。
三人もプロのミュージシャンいるのにって、恥ずかしかったけど。
珍しい健太のワガママだったし、涼がすぐに「いいよー」って言っちゃったから、断れなかったんだ。


後で聞いたら、昔の俺たちの映像見たらしくてさ。
それが刺激になったとか言ってて、英一さん、何してくれるんだ?って焦ったなぁ。




「ああ、それと、翼の店長就任祝いと、和哉の出版記念も兼ねてるからね。
 東京と大阪で離れてるし、一回にまとめてしまえって、英兄が言い出したわ」

「ちょうど、パーティの直前だよね、発売日。
 翼も、店長になって一ヶ月だから、いい頃合いかな」

「本は、版が大きくて分厚いから、当日に配布はせぇへんよ。
 関係者には、発売日に届くように、ゆうパックで手配済み」


さすが!
もうここまで来ると、それしか言葉がないよ、本当に。
和哉が戸惑ってる間に、英一さんと笙さんが、話進めたんだろうって、簡単に想像できるな。




「たっのしみ~!!」


涼が能天気に喜んでて、俺まで浮かれそうになったけど、ここは踏ん張らないと。
笙さんと英一さんに、任せっぱなしはマズいよ。


「俺は、竹井家への連絡と、警護課の手配でいいのかな?」

「警護課は、もう話通してる。竹井さんとこも、招待状は発送済み」


え?藤原、何も言ってこなかったけど??
あいつなら、絶対にはしゃいで連絡してくると思うけどな。


「ああ、今日、一斉に発送やから、まだ到着してないとこもあるんちゃうかな。
 もらったリストの漏れはないはずやし、出欠の返事が来たら、集計だけお願いしよかな」

「事前にスケジュール聞いて、日程決めてるから、ほとんど出席でしょ?
 仕事でドタキャンが出ても、特に問題ないように手配してるんだろうし」

「お見通しやね。さすが、怜センセ。
 ま、一応は、出欠確認はしといた方がええやろ?
 返事は、建設宛に来ることになってるから、私が預かって健太さんに順次渡す、でいい?」

「そうだね。毎日、晩御飯は家で食べてるから、その時に渡すようにする」



話し合ってるうちに、いつの間にか父さんが部屋に来てて、照れくさそうな顔してる。

俺たちが話し合う間は、自分のマンションにいるって言ってたのに、どうしたんだろう?



「お前ら、時間忘れてるだろ?メールしても、電話しても、出やしねぇし。
 とっくに、晩メシの時間だっての。
 笙、お前は、帰って作るんじゃなかったのか?」

「うわ、もうこんな時間?!あかん!帰るわ」



笙さんが焦りまくってるのは、本当に珍しい。

食事作りは一応当番制にしてるけど、社会人だから突発的なことは起こりやすい。
だから、遅くなる時は、連絡しあって、早く帰り着いた方が作るってルールらしいんだ。
仕事じゃないのに、作らせるわけにはいかない、くらいに思ってそうだよね。



「送ろうか?」

「いや、バイクやから、大丈夫。ほな、またね」


ぱっぱとiPadを片付けて、デイパックを背負う。
ああ、バイクだからメッセンジャーバッグじゃなかったんだ。
見送りに行けば、玄関にメットも置いてある。



「気をつけて帰れよ」

「ん、大丈夫!」


メットを片手に、風のように帰っていった。

ベランダから覗いたら、もう来客用の駐車場まで移動してて、その素早さに驚く。


「持久力ねぇくせに、瞬発力は相変わらずだな、おい」


大きなバイクを平然と乗りこなして去っていく。
笙さんの背中に向かって、父さんが笑いながら話しかけてた。











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Re: 笙ちゃ・・いえ、笙さーんっ!!

笙については...やはり、英一と昌行は別格なんだと思います。

宗次郎のとばっちりで、父親からは厳しさ通り越して、虐待に近い躾けをされてましたし。
母親は、元々がおっとりしたおとなしい性格な上に、宗次郎のこともあって、夫には逆らえず。

それでもグレたりしなかったのは、二人の兄貴分の存在があったからで。

ここだけの話ですが、ちょこっとだけ、自分を投影してたりもします(笑)
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