「Crossroad」
secret party

secret party 1   英一

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『あのな、英兄、頼みがあんねんけど...』


笙が、電話してきた。

滅多に頼み事なんかしねぇもんだから、言いにくそうでやんの。
でも、こいつのことだから、絶対に無理な話じゃないのは、わかってんだ。


あー、遠慮なんかすんなっつーの!



「さっさと言えよ。お前、できねぇことなんか言い出さねぇだろ。
 変な遠慮すんなってばよ」

『......んとね、昌兄が無事に社長交代できたやん?
 そんで、仲間内でお祝いしたいねん。
 昌兄は、絶対に遠慮するやろから、英兄に説得と協力、お願いしたいん』


ああ、そんなことだろうよ。
お前が、俺に頼んでくるのは、まず昌行のことだもんな。


「そんなもん、遠慮すんな。いくらでも、協力するから。
 で、俺は、何すりゃいいんだ?」

『昌兄たち四人、英兄、うちとこ夫婦で、ライブ演ろうって、怜さんたちと話してるん。
 プロの英兄にタダで演ってもらうのは、申し訳ないけど。
 怜さんたちやうちとこは、演ったの聴いたことあるやん?やっぱ、あかんかな?』




昌行からの電話を思い出した。

カタギに戻れたって報告の電話。

あの時、セッションやろうって約束して、ずっとそのまんまだったよな。




「おう、吾市と新治にも話するぞ。宗次郎は、我慢できるか?」

『そりゃ、SMSが全員参加してくれたら、めっちゃ、ありがたいわ。
 アホのことは、私は嫌いやけど、昌兄は尊敬してるし。
 ほんで、大阪やと大々的になりすぎるし、昌兄も気ぃ抜かれへんやろ。
 せやから、そっちでやりたいんよ。
 二百人くらいの小箱でいいから、押さえられへんかな?
 機材やハコの予算は、後でメールするし』

「スケジュールさえ合わせてくれれば、ハコも機材も俺が用意するって。
 招待するのは、Crossroadのメンツとかか?」

『うん、あそこの仲間内とか、怜さんたちの友達とか、二百人は軽く行く。
 昼間やったら、英駿と智香ちゃんかって来れるやろ?』

「任せとけ。準備期間も必要だろうから、こっちのスケジュール、メールする。
 すり合わせて日程が決まったら、ハコ押さえて、セトリとパート決めだな」

『ありがとう!めっちゃ、助かる!!』



いつものクールさは、どこにやったんだよ。
思わず、笑っちまったら、向こうは苦笑いの気配。


「しっかし、クソ忙しかったのに、お前ら、指動くのかよ?
 特に、涼。あいつ、まだ弾いてんのか?」

『ああ、それは、大丈夫。ストレス溜まったら、みんなでスタジオ篭ってるん。
 うちの旦那と怜さんのツインヴォーカルは、アホと吾市さんにも負けてないで』



言われて、折島と怜の歌を思い出す。


確かに、折島はプロでも通用する実力があった。
怜なんか、とーちゃんといい勝負だった、つまり天才って部類に入る。


笙は、身びいきや大言壮語は絶対にしないヤツだ。
言い切るってことは、最低でもレベルキープはしてるんだろう。
こりゃ、気合入れないと恥かくのはこっちの方かも。





作業が一区切りついたんで、リビングへ行くと、駿が帰ってきてた。
コーヒーの香りが漂ってきたから、すぐにわかる。


「声かけようと思ってた。お前の好物もあるぞ。
 今日、和哉が事務所に持ってきた」

「お、翼がとうとう、オリジナルを持ってきたか」

「ああ、出さねぇようにしてたけど、和哉のヤツ、自慢気だっだぜ」



最初に会った頃には、考えらんなかったよな。
あのサイボーグみてぇなヤツが、彼氏自慢、なんてよ。

出されたフルーツパイは、笙が作る昌行用のリンゴ多めでもなく、おばさんが作るのとも違う。
よく見たら、小豆や黒豆の甘く煮たのが入ってて、ちょい和風。
おばさんの元レシピと笙のアレンジは、完璧に作れるようになったから、オリジナルに挑戦してるって頑張ってたよな。



「これ、完全に和哉向きだよな」


駿は気づかなかったのか、一口食ってみてから感心してやがる。


「あいつらも、なんだかんだ言って、もう大丈夫だな」


優しく笑ってるのを見て、惚れ直しそうになったけど、忘れないうちに笙からの依頼、話さねぇとな。

少しずつ、翼のパイを食べながら、駿に説明してみるか。




「おう、スケジュールすり合わせたら、すぐにハコ押さえる。
 んで、聡志に根回ししなきゃな。弦屋の連中にも声かけるか」

「お、いいな。カルテットがいれば、それはそれで盛り上がるし」


ひとしきり、ライブの計画の話をしてから、駿が懐かしそうな顔をした。
怜たちが遊びに来た時のことでも思い出してんだろう。



もう、あれから何年経つんだろうな。


あの時の大学生が、今じゃ、バリバリに社会人やってて、それもでかい仕事を切り回してる。
今度の祝いも、涼がすっげ頑張ったから早まったんだ。

涼は、すっかり大人になって、他人を寄せつけない鋭い目は、もう見せてない。




「あいつら、頑張ったよなぁ」


目尻に皺を寄せた優しい顔で、駿が微笑んだ。
昌行たちのこれまでと、翼のことか。


「散々、危ない橋渡って、それでも乗り越えてきた。
 健太の交代までは、まだかかるだろうが、それも、もう目処はついてるらしいじゃねぇか。
 翼との巡り合わせも、運が良かったんだろう。
 翼自身が、自分の足で歩こうとした瞬間だったもんな」

「ああ、あいつらの努力と運を引き寄せる強さ。
 どっちも揃ってるところが、すげぇよな」



感心してると、何かを駿が思いついたみてぇだ。
俺の顔を見て、提案っぽく言ってきた。


「海たちも呼ぶか?あいつらも、世話になってるだろ?」


俺、当然、メンツに入れてたんだけど、駿が言ってるのは、楽器持たすかってことか?


「メンツには考えてたけど、セッションにはカウントできねぇな。
 俺たちと昌行たち、弦屋の四人で、もう十四人だろ?
 ステージには乗り切れねぇしよ」

「ああ、そうだな。完辺りが文句言いそうだが、指くわえて見ててもらうか」


あのデッカイ海が指くわえてるのを想像して、つい笑っちまった。




「楽しみだな。アコギのミニライブも良かったけどよ。
 やっぱ、あいつらはガリガリにギター弾いて、腹の底から歌い上げるのが似合ってる」

「駿もそう思うか?俺もそう思ったんだよな」

「ああ、それくらい強烈だったからな、あいつらの音は」



ジャムったりも楽しいだろうけど、何曲かはまともに演るのもいいよな。

どの曲演るか、メンバーとも話し合わなゃ。

あいつら、どんな顔するだろうな。

特に、宗次郎は、怜たちのことお気に入りだったし。



なんか、いい年してんのに、すっげワクワクしてきた。


それに、やっと約束が果たせるんだもんな。


嬉しくて、年のせいか、なんか目頭熱い。
意地でも、あいつらの前では泣いたりしねぇけどよ。











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