「Happiness!」
二十四時間

二十四時間 2

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来年は親父たちの番だな、そう思ってたらキャシーから電話。
いつもメッセで済ますのに、直接かけてくるのは珍しい。


『明日の昼、サムの家に全員集合だって。
 慰労会らしいわよ』

「ん、わかった。カンにも言っとくね」

『.........』


こんなに歯切れの悪いキャシーは、さらに珍しい。
何か心配事でもあるんじゃないかと思って、質問するけど、答えずに電話は切れた。




カンに聞いてみると、スーからは何も言ってきてないらしい。
なんだかイヤな予感がする。



「親父たち、何かあったのかな?」

「俺は聞いてねぇよ。でも、みんな五十過ぎたし、何があってもおかしくはねぇよな」



俺、ほんとにバカだなぁ。
カンに言われないと気づかないって。


自分が年取ったんだから、親父たちだって年を取る。

そんな当然のこと、思いつきもしなかった。


ずっと、レンさんやエイチの背中を、ひたすら追っかけてる気分だったんだよね。
二人が年を感じさせないからって、年は同じように取ってるんだ。


合格って言われて、嬉しかった。
でも、それは、レンさんの引退が近づいたってことでもあるんだ。

相談には乗ってくれる。ライブDVDもチェックはしてもらえる。

だけど、今年のツアーには同行しなかった。
袖にレンさんがいないのが、最初のうちは不安だった。
でも、お客さんの盛り上がってるのを見て、不安は消えて、レンさんの不在に慣れていった。



「レンさんが、もうそろそろって言ってたね。
 よく考えたら、七十過ぎてるんだ......」

「まだ五十くらいにしか見えないしな。
 エイチだって、コウセイと三つしか変わんないのウソみてぇじゃん」



二人とも、なんとなく気分が落ちてるのを感じた。

いくら前向きなカンでも、親が老けるのは堪えるみたい。
すっきりしない顔のまま、その日は過ぎていった。





翌日、カンとサムの家へ行った。

カナの誕生日会や、二組のバンドがプライベートで集まる時は、いつもここ。
元々、サムの実家があったところを、今の家に建て直したんだ。


『俺の役目は、パートと同じく、縁の下の力持ちだからさ。
 何かあった時、全員が集まれるような家に建て直したんだ』


照れくさそうに、そう教えてくれたことがあった。

ソングライティングとアレンジは、親父。
社交的とは言えない親父のフォローとステージ演出は、コウセイ。
リズムの柱とツアーグッズのデザインは、ゴウ。

そして、全員にアドバイスしたり、スタッフとの橋渡しは、サム。


コウセイと同じく、デビュー当時は、見た目も売りにしてたけど。
独立してからは、裏方に徹してきた。

親父が、自分がいなくても三人がいればいい、そう思えるのも、サムの存在が大きい。




リビングに行くと、もう俺たち以外は集まってた。
カナは、カオルの実家に預けてきたらしい。

挨拶すると、それまでワイワイと話してたのが、シンと静まった。
変な緊張感に、冷や汗が出てくる。


「おう、来たか。これで全員集まったな」


親父の声が、場の空気を変えた。
緊張してるのは、どうやらBANZAI-SANSHOのメンバーだけらしい。


「まずは、全国ツアー、お疲れさん。
 ライブDVD出すのも、頑張れよ。
 来年は、俺たちの番...と言いたいところだがな」


キャシーの顔が曇った。
キャシーだけじゃない、スーもカレンもリョーコもだ。


「俺たち、来年のアリーナは無理そうだ。
 ゴウ、自分で話せ」


親父にバトンを渡されて、ゴウがヒゲの生えた顎をゴシゴシと擦る。
困った時のゴウの癖。



「夏フェスの後に、医者に行ったんだけどな。
 もう、これ以上は、保証しねぇってさ」



親父やコウセイと同様に、ゴウとサムも体調管理には気をつけてた。
それは、亡くなったルイを見習ったのが始まり。

それでも、長時間の練習やライブで、体のあちこちにガタが来てもおかしくはない。
特に、ゴウはパワーヒッターだから、肘や手首の腱鞘炎、腰痛に悩まされてきた。



「俺たちの音は、お前たちと違って重くて早い。
 ゴウには、申し訳ないけど、無理させちまった。
 だからな、ライブの回数は減らして、ツアーはやらねぇことにした」

「今さら、軽い音には変えられないからね。
 だからと言って、解散するわけじゃないから、安心して」


親父の言葉を、いつものようにコウセイが補足する。

とりあえず、解散じゃないことには、ホッとした。



子どもだって言われても仕方ないけど。
まだまだ、親父たちには現役でいて欲しいのが、本音なんだ。

解散した後、どうなるのか、考えたこともなかった。



「アルバムを出すペースを落とす。
 ライブは、東名阪でアリーナやイベントのみ。
 それも、ゴウの体調を見ながら、だ」

「ルイさんの年を追い越しちゃったしね、俺たちも。
 そろそろ、ソフトランディングって言うのかな。
 ずっと続けるために、今までとは違う形を取ることになっただけだよ」


コウセイが、懐かしむように、ルイの名前を口にした。

レンさんと話してると、ルイはまだ生きてるんじゃないかって錯覚するくらいなんだけど。
確か、二十年以上も前に亡くなってるんだよね。

独立した頃には、もう亡くなってたから、報告できなかったのが悔しかったって、親父が話してたよな。



「だから、お前らには頑張ってもらわねぇとよ。
 事務所を維持していくためにもな」


親父らしくない軽口が、さっきの話を、よりリアルに感じさせた。



「任せとけって」


カンが、よく通る声で、キッパリと言い切った。
そこで、俺も自分の立場を意識した。


「俺たちは、ジャンルは違うし、REALのファンは取り込めねぇ。
 それでも、今掴んでるファンの期待を裏切らねぇように、必死で努力する。
 新しいファンを獲得する努力もな」

「うん、だから、心配しないで。
 ゴウに無理させたくないのは、俺たちだって同じだよ」


カンと俺が言った後に、ロウとカオルが頷いた。


「うちの音の柱が言い切ってるんだから、父さんたちは安心して。
 俺もプロデュース、頑張るからね」

「カナも、来年には小学生です。みなさんのおかげで、これまで無事に成長してきました。
 今度は、私たちが事務所を支えていけるよう、頑張ります」



ちょっとだけ、親父たちの目が赤くなってたのは、気づかないふりをした。

たぶん、気づかれたくないだろうしさ。











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