「Happiness!」
二十四時間

二十四時間 1

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ロウとカオルは先に帰った。
最後までいた俺は、カン、イクヤと三人、タクシーで帰る。

ほとんど飲んでないはずなのに、三人ともテンションが高い。
特にイクヤは、ものすごいスペックの人たちに出会ったせいか、ひっきりなしに感心してる。


「カイもカンも、視野が広くなったなぁと思ってたけど、理由がわかった!
 あんなにすごい人たちだったら、影響受けるに決まってるよね」


頷きながら言ってるけどさ。
その最初の一歩は、イクヤ、君なんだよ。

イクヤと出会えなかったら、俺もカンも今みたいにはなれなかった。
それは、断言できる。




「サトシさん、シュウさんとは、共通の知り合いがいたし、連絡先の交換もできた。
 ショウさんからは、向こうの友達も紹介してくれるって言ってもらえた。
 ほんと、引き合わせてくれて、ありがと!」


車を降りる時に、ニコニコとそう言った。
発車して振り返ると、家に入らずに手を振ってる。




「あいつは、強くて真っ直ぐなまんまだよな」


カンがポツリと呟いた。

イクヤだって苦労してないわけじゃない。

学部からの生え抜きと違うせいで、院生時代は結構つらかったらしい。
本人は絶対に愚痴らなかったけど、なんだかんだと伝わってきた。

ミキのことが尾を引いたのか、次の相手は現れてない。
正確には、モテてるけど、スルー。

それもやっかまれた理由のひとつらしいから、セコいやつ多いよね。

学費だって、奨学金を勝ち取って、フィールドワークのために海外へ行く資金も、全部バイトで賄った。
俺なんかより、ずっとずっと頑張ってきたんだよ。

それでも、真っ直ぐなままなのは、イクヤの強さ。
どこか、ツバサさんと似てるところがあると思ってた。





マンションへ帰り着いた時、ふっと思いついたことがあった。
そうなったら面白いなと笑ってたら、カンが俺の頭の中を、そのまま口にした!


「コウセイやユージみたいに、ステイツで運命の出会いがあるかもな」

「今、俺もそう思った!」


顔を見合わせて、声を上げて笑う。


親父とキャシーの出会いを、素敵だって言ってたもんね。
イクヤにだって、そんな出会いの可能性は十分にあるさ。

身長だって、カンと変わらないくらいあるんだし。
見た目は、KPOPスターより、よっぽどカッコいいんじゃないかな。
何より、あの優しくて強い性格や、回転の早い頭脳、コミュニケーションスキル。

ステイツでだって、評価されるに決まってる。

キャシーだってスーだって、イクヤをすごく褒めてるしさ。



「恋愛だけが全てじゃないんだろうけどよ。
 やっぱ、「一番のヤツ」がいることって、最高に幸せだもんな。
 イクヤにも、幸せになって欲しいって、思ってる」


ヤキモチ妬いてたのが信じられないくらい、カンはイクヤを大好きになってる。
それも嬉しくて、今夜はニコニコしっぱなしだ。





ゆっくりバスに浸かって、リラックス。
常温のミネラルウォーターで水分補給。

変更した生活習慣の後、二人でベッドに入る。
つい抱き寄せようとして、カンに叱られた。


「手が痺れたらどうすんだよ?早く、その癖直せよな」


少し淋しいけど、体のことを考えたらガマンガマン。
そう自分に言い聞かせてたら、カンがじっと俺を見てる。


「どしたの?」


質問すると、カンが優しく笑ってくれた。


「お前、強くなったよな。ラストの夜はどうなるかと思ってたけどさ。
 すぐに立ち直って、冷静になってたし、凹んだりもしなかった。
 空元気でもなかったろ?」

「まぁね。手じゃなかったのも大きいよ。
 ペダル踏むまで気づかなかったくらいだし」


俺の頬に、カンの手が伸びてくる。
そっと包まれて、俺の手とは違う、柔らかな感触を味わった。


「それでも、だよ。肚括れて、みんなにも堂々と話してた。
 お前がパートナーなのが、すげぇ誇らしかったぜ」


俺だって、そうだよ。
わかってるよね?


「カンがいてくれるから、落ち着くことができた。
 フォローしてくれるから、覚悟を決めることもできた。
 一緒のステージに上がれなくなるのは、そりゃ淋しいだろうけどさ。
 カンが歌ってくれるなら、曲を作るだけでも満足だって思える。
 最高のパートナーだと思ってるよ」


今度は何も言わずに頷くだけ。
その後、軽く頬にキスをくれた。


「明日は一日ゆっくりしようぜ。
 オフが明けたら、また忙しくなるんだからな」

「ん、おやすみ」



カンが腕の中にいない淋しさは、そのキスでどこかに行っちゃった。
俺の左手を握ってる力が、少しずつ弱くなる。

寝息が聞こえ始めた。
カンは、俺より寝つきがいいんだよね。

少し体を起こして、カンの頬を撫でる。

綺麗な額や、柔らかい頬。
薄闇の中でも、カンだけは、くっきりと見える。




『綺麗なだけの見た目なんて、年食ったら崩れるけどな。
 生き方がカッコいい人は、見た目にも出るんだぜ』


ツバサさんが、レイやリョウを例にして話してくれた。
確かに、SOLD OUTの画像より、今の方が何倍もカッコいいよね。

カンだって、変わってないようで、ずっとずっとカッコよくなってる。

俺も、少しはカッコよくなってるといいのにな。


カンの頬にもう一度触れて、体を元に戻す。
深呼吸して、目を閉じた。



ぐっすりと眠れたようで、夢も見なかった。
すっきりと目が覚めて、隣を見ると、カンがいない。

リビングに行くと、もうカンはトレーニングウェアに着替えてた。
俺にも渡してきて、着替えろって急かす。


「軽くジョギングしてから、メシにしようぜ。
 帰ったらすぐに食べられるようにしてあるから」

「ん、わかった。でも、その前にトイレ行って、水飲んでいい?」


あ、って聞こえたかと思うと、カンがダッシュしてミネラルウォーターを持ってきた。
その姿を見て、笑いながらトイレに向かう。


「悪い、俺が焦ってもしかたねぇのにな」


ドアの向こうで謝ってるのが、また笑えてきてさ。
せっかちなとこは、変わらないよね。


「顔洗うのも、待ってくれるとありがたいな」

「わかってるって!」



トイレのドア越しに話してるのが、ザ・日常って感じがして。

こんなことが、ずっと続くといい。

心の底から、そう願った。











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