「Happiness!」
山あり谷あり

山あり谷あり 11

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「これからは、冷たいモンは禁止な。
 俺もつきあうから、ガマンしろよ」


病院から帰って、カンが冷蔵庫を覗いてる。
冷やしてたミネラルウォーターを、全部、取り出した。

そして、昨日作ってくれたラタトゥイユも。


「それ、どうするの?」

「ん、晩メシに使う。元々、そのつもりだったしな。
 冷たいまま、パスタと合わせるつもりだったけど、温めてからにする。
 それと、豚肉あるから、生姜焼き作るわ。
 組み合わせが変なのは、ガマンしろよ」



カンが、普通に、ごく自然に、俺のことを考えて、行動してくれてる。

ガマンどころの話じゃないよ。
俺より、ずっと暑がりなのに、つきあってくれるってさ。

大好きなアイスクリームも食べられなくなるんだよ?


カンへの感謝と、愛しさと、嬉しさ。
そんなのが、一気に、心の中に溢れてきて、キッチンで立ったまま、泣いちゃった。


いい年してみっともないと思う。

一番大事な、守りたいと思う相手の前で、すっごくカッコ悪いとも思う。

だけど、ガマンできなかった。



「......ありがと。嬉しい」

「お前、いきなり泣くなよ。デカイくせに」


デカいは余計だろ、そう思ったけど、言い返せない。
確かに、ボロボロ泣いてる姿は、カッコ悪いとしか言えないし。


「お前だけじゃねぇだろ?俺だって、何が起こるかわかんねぇもん。
 ギリギリまで、一緒にステージに立ってたいじゃん!
 ああ、もう泣くなってば!」


カンが手を止めて、前に立った。
俺の涙を手で拭ってる。


「お前が泣くと、俺まで泣きたくなるじゃん。
 ほんと、ガキの頃から涙もろいのは変わんねぇよな」

「だって、嬉しくてさ。安心したのもあると思う」

「ああ、俺もだよ。すっげぇ緊張してたかんな。
 変な病気だったらどうしようって。
 でも、カナと同じで、予防法があるって安心したぜ」


そう言って、カンは、俺の肩に顔を埋めた。


ああ、そうだった。


カンの言葉で、思ってたより余裕なかったんだって、気がついた。

カナは、食べたくても食べられないモノがたくさんある。
キンダーに通いだして、自分が普通とは違うって自覚してきたらしい。

カオルとロウや、周りのみんなで、一生懸命に説明してるから、ワガママは言わない。

カナの前では、大人も、カナが食べられないモノは食べない。
カナだけにガマンさせることは、しない。

それでも、時折、淋しそうにしてることがある。
そんな顔を見てると、俺でさえ心が痛むんだ。
カオルやロウは、もっともっとつらいよね。




「カナが頑張ってるのに、いい大人の俺ができないって言えないよね」


カンが、クスッと笑って、体を離した。
俺を見上げて、頬を撫でてくる。


「ああ、カナに負けてるような相棒なんて、カッコ悪すぎだろ?」

「うん、思ってたより、余裕なくしてたみたい。
 ワガママ言わずに、頑張るよ」


俺が泣き止むと、カンは晩御飯の支度を再開。
俺は、スマホの電源を切ったままだったのを思い出した。

病院をウロウロしてたから、切ったり入れたりが面倒で、ずっと落としっぱなしだった。
緊急の連絡があれば、カンに来ると思ってたし。



電源を入れて、ロック解除したら、SNSにメッセが来てる。
タップしてみると、エイチから。

イクヤをCrossroadに連れていきたいって、お願いしてたんだった。



『お前の友達なら信用できるだろ。ちょうど、今週末に笙たちが来る。
 聡志さんや修さんも空いてるらしいから、連れてこい。
 ただし、きちんと説明しとけよ』


即、「ありがとうございます」って入力して、イクヤにもメッセ。


イクヤは、今年、博士課程後期を修了して、今は非常勤講師を掛け持ちしてる。
修士課程の時点で、もっと深く研究したいって、普通に就職はしないって決めた。
そして、やっぱり留学したくなったらしくて、連絡してきたんだ。

イクヤのお兄さんは、ステイツで大学を卒業して、アメリカ資本の企業に就職した。
そして、日本支社に配属されて、行ったり来たりしてる。

それでも、結婚してご両親の近くに住んでるから、イクヤも留学しても大丈夫だって思ったって。
そのための資金も、コツコツ貯めてきた。


分野は違うけど、イクヤの志望校って、サトシさんやシュウさん、ショウさんが、留学した大学なんだよね。
だから、話をしてもらえたら、プラスになるんじゃないかと思ってさ。




「金曜日、イクヤと三人でCrossroadに行こう」


晩御飯を食べながら、カンに提案。


「ああ、イクヤなら大丈夫だもんな。サトシさんやシュウさんの都合ついたのか?」

「うん、それにショウさんもこっちに来るんだって」


俺がそう言うと、カンがビビってる。
可笑しいけど、笑うのはガマンガマン。


「何回も会ってんのに、まだ怖えんだよなぁ。
 なんでだろ......」

「最初が強烈だったからじゃないの?
 俺は、別に平気だよ。筋の通ったことしか言わないしさ」

「そうだよなぁ...エイチそっくりで、ヒステリーなわけでもないのにな」


パスタを巻きつけてた、カンが固まった。


「もしかして、ショウさんもコーネル行ってたわけ?」

「特別講座らしいけどね。一年間行ってたって聞いてるよ」



人の学歴とか、興味なくて覚えないのに珍しいなぁ。
ああ、インターの時、「コーネル」は調べてたっけ。

ロウの志望校のひとつだったから、一緒に資料見た記憶がある。




「エイチの周りって、いろいろだよなぁ」

「今さら、何を感心してるんだよ。
 前にも同じこと言ってなかった?」


俺のツッコミなんか聞いてなくて、ひたすら感心してる。


ああ、カンの世界が広がって、いろんな価値観を理解した結果かもしれない。
そう考えたら、嬉しくなっちゃって、顔が自然に笑っちゃう。


カンに気づかれたら、また機嫌が悪くなるから、さっさと晩御飯食べてしまおう。

それなら、笑ってても「美味しいね」で、済むもんね。



「あ、ロウたち誘わなくていいのかよ?
 この前、会えなくて残念がってたろ」

「そうだった!来れなくても、連絡しないのはマズいよね。
 食べ終わったら、メッセ入れとく。
 気づいてくれて、ありがと!」



今日は、検査漬けで疲れたけど...。
カンがたくさん嬉しいことをくれたから、すっごくいい一日だった!



ロウにメッセしながら、二人が来れたら、麻痺の話もしなきゃなって。
覚悟はしたけど、何の悲壮感もなくてさ。

これもカンのおかげだよなって、またニコニコしちゃった。











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