「Happiness!」
山あり谷あり

山あり谷あり 10

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「マジ、一日かかるんだな」


カンが驚いてたけど、今回は特別扱いもいいところだと思う。
こんなに一度にやってもらえたのは、西浦先生の同期だって先生が偉い人だかららしい。

大学病院で、一日中、あちこちの検査室を回って、結果待ち。

尿や血液で、糖尿だとか腫瘍マーカー検査までやったんだよ。
前にもやった電流を流すのも痛かったなぁ。

一番驚いたのは、脳の血管CT検査。

点滴で薬剤を入れてから撮影するって聞いて、どんなんだろと思ってた。
刺された腕から、頭の中までが、一気に熱くなってさ。
どこに血管があるのかわかるくらいで、怖くなっちゃった。





『受付番号5011番の石田さん、第一診察室にお入りください』


呼び出されて、心配そうな顔のカンに笑って見せてから、診察室へ入る。


西浦先生とは違って、すっごく偉い感じの人が座ってて、怖い顔でモニタを見てた。
看護師さんに座るように促されて、そろそろとイスに座った。

何言われるんだろうって、急に怖くなっちゃってさ。
それくらい、先生の顔が深刻そうだったんだよ。



「んー、石田さんねぇ...」


こっちを向いて、先生が苦虫を噛み潰したような顔で話しだした。

異常があったのかと思って、俺の緊張はマックス。
ドキドキしながら、次の言葉を待った。


「心臓に比べて、大きすぎるんだよねぇ、体が」

「は?」


後から考えたら失礼だと思ったけど、この時はそれしか言葉が出なかった。
だって、体がデカいことが原因、なんて、思いつきもしなかったから。


「脳にも骨にも代謝にも、今のところ、異常はないんだよ。
 ひとつ考えられるのは、体の割には心臓が小さくて、血流量が少ないこと。
 それで、末梢神経障害が起きやすいんじゃないかなぁ。
 ちゃんと、トレーニングやストレッチやってる?食生活は偏ってない?」

「食生活は気をつけてますけど...」


うう、言われてみれば、トレーニング不足かもしれない。
ツアー中だから、運動量は十分だと思ってたし。


「仕事が仕事だから、生活が不規則になりがちでしょう。
 それに、姿勢も良くない。
 今は良くても、この先、腰や肩に支障が出るよ。
 全身をまんべんなく使うような、トレーニングやストレッチをすること。
 加えて、入浴方法や食事に気をつければ、血流量はかなり改善されるはずだ。
 ただし、いくら気をつけてても、突発的に麻痺が起こる可能性はゼロじゃないからね」

「はい、わかりました」


頭を下げると、薄いパンフレットを渡された。
中には、「血行を良くするために、日常生活で気をつけること」が、項目別に書いてある。


「これ読んでね。経済的に余裕があるなら、専属でトレーナーつけるのもいいよ」


どうやら、そこで診察は終了ぽい。

先生が、端末に入力をしだしたら、看護師さんに立つように言われた。




「どうだった?」


待合室に戻ると、カンが寄ってきた。

先生から言われたことを、そのまま説明すると、少し考えた後に頷いてる。
俺は意外だったのに、カンは納得してるっぽい。

どうしてだろうと思ってたら、カンが歩き出した。


「会計済まさねぇとな。また、どうせ待たされるんだろ?」

「カンは、驚かないんだね。俺、よくわかんなかったのに」


人にぶつからないように気をつけて、廊下を歩きながら話す。


「お前、すぐ、手足が冷たくなるじゃん。
 寝てる時にぶつかって、冷たいなって、よく思ってた。
 寒がりってわけじゃないのに、不思議だったんだよな」


周りに聞こえないように、小声で言ってきて、すっごく感心した。
確かに、カンの手とか足って、温かく感じる!




「朝にシャワーじゃなくて、夜に湯を溜めてバスに変更だな。
 食事も気をつけて作る。
 ああ、コウセイに、トレーナー、紹介してもらうか?」


パラパラとパンフをめくりながら、会計待ちの時間にカンが提案してくる。
すっごく嬉しそうな顔してて、それだけ心配かけたのかと思うと申し訳なくなる。


「トレーナーは、親父に頼んでみるよ。
 ロウとカオルには、今度のミーティングで話さないとね。
 可能性はゼロじゃないんだから、一応はさ」

「ゼロに近づけるために、努力すんだろ?
 バックアップは任せとけ。
 万が一の時は、俺だって覚悟してんだからな」


さっきの嬉しそうな表情が消えた。
真顔になって、カンがすぐに返してくる。



「ま、ロウたちに話すのは、お前の自由だ。
 つーか、話しとくのが筋だろうしな」


マジ顔したのが照れくさかったのか、すぐに正面を向いた。

計算窓口近くのモニタに、番号が表示されたから、自動支払機へと進んだ。
診察券を差し込むと、予想はしてたけど、かなりの金額。
カンが覗き込んできて、「ぐぇっ」とか、変な声出してる。


「お前、金足りる?」

「ああ、クレカ使えるから大丈夫だよ」


支払ってると、ブツブツ言ってるのが聞こえてくる。


「変な病気じゃなかったって、安心料だと思えば、安いもんか」


いや、支払うのは俺なんだけどさ。

そう思って言い返そうとしたけど、カンが安心したんなら、それでいいかな。




「あ!」


駐車場に行く途中、自販機でコーヒーを買おうとしたら、カンに止められた。


「お前、コーヒー飲み過ぎなんだって!
 カフェインの摂り過ぎは良くないって、ここに書いてあるじゃん!」


さっきのパンフ、しっかり読み込んでるんだ。
俺、気づいてなかったな。


「麦茶かスポーツ飲料にしとけ」


さっさとボタン押されて、コーヒーは取り上げられちゃった。
一日ガマンしてたから、すっごく飲みたかったんだけど......。


カンは真剣に心配してくれてるんだから、言うこと聞かなきゃね。
逆の立場だったら、俺、胃が痛くなるもん。



「完全にカットするのはつらいだろうから、一日一杯だけな。
 その代わり、ネルで挽きたてのヤツ、淹れてやるからさ」


小さい子どもをなだめるみたいに、カンが言い聞かせてくる。
それも、くすぐったいけど、なんか嬉しくて、ついニヤニヤしそうになる。


カンの機嫌が悪くなるから、ここでニヤつくのはガマンした。
車の中から、周りを見回して、人がいないことを確認。


「ありがと。愛してるよ」


耳元で囁いたら、カンは真っ赤になって黙り込んだ。
てっきり、怒ると思ってたのに、予想外の反応で、俺も照れくさくなって。



「バーカ、自分で言っといて、何、赤くなってんだよ」


しばらくして、カンが呆れた顔でツッコんできた。











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