「Happiness!」
山あり谷あり

山あり谷あり 7

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新譜と「welcome」のプロモーションは、レンさんの戦略もあって派手にはやらなかった。
その代わり、年明け一月からのドラマ主題歌だから、その番宣でガンガン流れてる。

実力派って言われてる人気俳優さんが主演で、レンさんの知り合いが脚本・プロデュース。
話題性は充分で、何かとネタにされやすい。

その中には、俺たちの曲が使われてるのを批判する意見もある。


『自分の子をネタにして稼ぎたいのか』


ネットで叩かれても、もうカオルは泣かなかった。
ツバサさんが言ってたように、スルーすることに決めたらしい。

第一、俺が作って、レンさんが主題歌の話を受けたんだから、カオルが気にすることじゃないもんね。





カナの一歳の誕生日。


たくさんの人が、お祝いに集まってくれた。

会場は、サムとカレンの家、つまり、ロウの実家だ。
一番、リビングが広いし、ロウとカオルの家からも近いからね。

REALはツアーが終了して、全員、夫婦で参加。
SMSは仕事で無理だったけど、レンさんとナツさんが来てくれた。

カオルのお父さんも、今年は休暇を取って来てくれた。
もうすぐ単身赴任が終わるから、こちらの家をついでに契約するそうだ。



みんな、オモチャや洋服なんかのプレゼントを渡してて。
最後に、こっそりとナツさんが、カオルにUSBメモリを渡してる。


「翼からだよ。できるだけ楽に作れるように改良したレシピ。
 途中までは同じで、取り分けたら、大人用に味付けるとかね。
 いろいろ研究してたみたい」


カオルのご両親が来るから、ツバサさんとカズヤさんは来ない。
サトシさんとシュウさんもだ。

せっかくのお祝いに、空気を悪くするのはイヤだからって、返事が来たんだ。

ご両親とも、俺とカンのことは知ってる。
バンドを組んだ時に、挨拶してカムアウトしてるから。

お母さんは、驚いてたけど、すぐに慣れたっぽい。
お父さんは、なかなか受け入れられなかったらしい。

それでも、海外で働くような人だからか、なんとか打ち解けてくれた。




ツバサさんもカズヤさんも、自分が偏見を持たれることは気にしない。
二人とも天涯孤独だから、哀しむ人もいない。
だからって、仲間に迷惑はかけたくないって、強く願ってる。

見た目は正反対でも、根っこが似てるところは、レンさんとナツさんみたいなんだ。



カズヤさんからは、綺麗な絵本が二冊。
字は読めなくても、眺めてるだけでワクワクするような感じの、日本語と英語の一冊ずつ。

サトシさんとシュウさんからは、昨日、ベビーカーが送られてきた。
今使ってるのより、少し大きめだけど、軽くて丈夫そう。

マサユキさんたちからも、ぬいぐるみや自社ブランドの服。

ああ、もうマサユキさんは社長じゃないから、自社ブランドじゃないのか。
今年に入って、それぞれのラインで、家族で着れるようにキッズサイズを展開したんだよね。

親子三人で着られる、わざとらしくないお揃いのファッション。
リョウとショウさんが選んだって、カードに書いてあった。

今日は、三人でそれを着てる。
照れくさそうにしてるけど、すっごく似合ってて、カナなんかキッズモデルみたい。




「あの子たちは、仲間のことがすごく大事なんだよ。
 だから、理解できない人がいるところには、出てこない。
 私や笙ちゃんみたいな人間ばかりじゃないって、身にしみてるんだ」


俺が思ってたことを、ナツさんがカオルたちに説明してる。
カオルが、少し泣きそうになってる。


「泣いちゃダメだ。みんなに変に思われるでしょ?
 ツバサさんたちの心遣いが無駄になっちゃうよ」

「うん、そうだね。カイとカンのことも、お父さんは完全には理解できてないし。
 海外赴任して、少しは理解できるようにはなったみたいだけど......」


悔しそうなカオルに、どう慰めていいのかわからなくて、口ごもった。
隣のカンが、カオルの肩を叩く。


「無理に理解してもらおうとは、みんな思ってねぇよ。
 俺たちは、そういう人種だって、みんなわかってる。
 俺とカイのことだけでも、受け入れてくれただけ、ありがてぇんだ。
 カオルが気にすることじゃねぇって」


カンが小声だけど、キッパリと言ったことで、カオルも気が楽になったのかな。
泣きそうな顔が、少し明るくなって、俺もほっとした。






「三月からのツアーは、カオルちゃんも行けそうだね」


翌日のミーティングで、レンさんが切り出した。
スケジュールも会場も決まってはいたけど、カオルが参加するかどうかで機材が変わる。
それに、サポートミュージシャンの人数も。


「はい、キーボードもギターも練習してました。
 カナの世話は、母と蓮丘のお義母さんがサポートしてくれることになってます」

「うちの奥さんも地方の時は、大阪以外は来てくれるからね。
 大阪は、笙ちゃんのコネクションで、充分だってさ」


レンさんは、仕事の話なのに、珍しく目が怖くない。
もしかして、と思ってたら、本人がケロッと白状した。


「奈津が一緒に来てくれるなんて、ほんと嬉しい!
 俺、張り切って音響やるからね!!」


ほんっと、ナツさんラブだよなぁ。
現役の時は、どうしてたんだろう......。
不思議そうな顔しちゃったみたいで、レンさんの表情が少し変わった。


「売れてなかった頃は、奈津が出版社で正社員やって食べさせてくれてた。
 売れだしても、英一が小学校に入ってから、高校卒業までは、離れてたからさ。
 ツアー先に同行って、これが初めてなんだよね。
 カオルちゃんには申し訳ないけど、喜んじゃった。ゴメンね」

「いえ、それは構わないんですけど...ひとつ質問してもいいですか?」

「何でも、どうぞー!」


カオルが、おずおずと聞いてみる。
たぶん、俺と同じ疑問が湧いたんだろうな。

確か、再婚相手の人ってヒトミみたいなアイドルじゃなかったっけ...。
できちゃった略奪婚?ってヤツだよね。
で、こっそり親父たちの話を聞いちゃったんだけど。

レンさんは、ナツさんに未練タラタラで、仕事に逃げてたっぽいんだよね。
トーイみたいに、浮気しまくってたわけじゃないのは、レンさんらしいけど。



「離れてる間、どなたがレンさんのお世話してたんですか?」

「ん、ルイだよ」


即答されて、みんな、納得。
エイチから、何度も聞いてたからさ。


『とーちゃんは、仕事以外の実務能力はゼロに近い』


って、しみじみ言うんだよ。
お金のことや契約のことも、今は、完全にナツさんがやってるから、いない間はどうしてたのか、不思議だったんだよね。



親父たち、エイチやゴイチ、シュンにナツさん。
レンさん以外からも、ルイのことは、いろいろ聞いてる。

エイチが目標としてたくらいだから、レンさんのフォロー、完璧にやったんだろうな。



「ケンとキースもそうだけどさ。
 ルイと奈津がいなかったら、俺、とっくに野垂れ死んでると思う」


ケロッと当然みたいに言うのが、ほんと可笑しくて。

思わず吹き出して、篠原さんに叱られた。


「篠原君、叱らなくていいよ。事実だもん」


マルティプルな才能を持った人もいれば、レンさんみたいに特化した人もいる。
前者はレイとリョウ、エイチもそうだよね。


そう思いついたら、つい考え込んじゃった。


俺は、どっちなのかなぁ。

まだまだ、自力でプロデュースまではできないけど...。
せめて、レンさんの半分でいい。
音楽スキルだけは、しっかりと身につけなきゃ。


最後の弟子に選んでくれた、この音楽仙人の期待に応えられるように。











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