「Happiness!」
山あり谷あり

山あり谷あり 6

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不安いっぱいで、カンの帰りを待ってた。
いくら上手な医者でも、やっぱり痛いだろうしさ。
とにかく範囲が広いんだよ。横20cm、縦25cmは軽くあるはず。


晩御飯は食べやすくて、カンの好きなモノにしよう。
食欲がなくても、ちゃんと食べてもらわないと、回復も遅くなっちゃうし。

寒いから、ミートボール入りのポトフを作った。
味付けは、スーから教えてもらった通り。

カンが体調が悪い時、ずっとスーが作ってたからさ。
これなら、カンも食べられるよね。





「ただいま」


思ってたより元気な声で、安心した。

付き添いたかったけど、俺が行くとどうしても目立っちゃうからさ。
カンが、「絶対に来るな」って言うし、ガマンしたんだよね。



「御飯、食べれる?カンの好きなポトフにしたよ」

「病人扱いすんなって!大丈夫だっての。
 でも、晩メシ作ってくれて、ありがとな」



あれ、そんなに痛くなかったのかな?
顔色も悪くないし、空元気じゃないっぽい。



「最新の機械だから、時間も痛みも少ないんだってよ。
 モニター料金にしてくれて、すげぇ助かった。
 塗り薬とガーゼもらってきたから、明日、シャワーの後に手伝ってくれ」

「範囲が広いから、それは助かったね。
 マンション買っちゃったから、貯金なくなったって節約してたしさ」

「ああ、ほんとにありがてぇよ。
 サトシさんの紹介だからって、特別だって」




カンの場合は、ツバサさんとは違って、自分の意志でやったこと。
それでも、サトシさんは、カンの頼みを聞いてくれた。


カンは下手に取り繕いもできないから、真正面から頼んだんだろうな。
悩んで考えて、真剣に頼んだから、サトシさんも話を聞く気になったんだと思う。


突っ走る性格なのは、もうバレバレだし。
納得してもらうために、タトゥーを入れた経緯は話しただろうから、すっごく勇気が必要だったはず。
普段のカンなら、絶対に恥ずかしくて話せなかったんじゃないかな。

それでも、俺がいると話せなかったのがカンらしいよ。
サトシさんにアポ取って、Crossroadにひとりで会いに行ったみたい。





「麻酔塗ってたからか、んなに痛くはなかったんだけどよ。
 やっぱ、麻酔切れたら、ピリピリしてさ。
 それで、ちゃんとクールダウンの時間取ってくれたし、アフターケアもしっかりだったぜ。
 まだ赤いけど、たった一回でかなり薄くなってて驚いた。
 あと二回で、ほとんど消えるって」


いつもより、うつむき加減で、ボソボソと説明してくれる。
まだ、俺に悪いと思ってるのかな。


「俺に悪いとか思ってる?
 もう気にしてないから、大丈夫だよ」


安心させようと、笑って言うと、上目遣いで悔しそう。
いや、悔しそうって言うより、複雑そうな顔してる。



「完全に元通りになるわけじゃねぇ。
 お前が好きだった姿は、見せてやれねぇんだ。
 ほんと、ゴメンな」

「あのさぁ......」



もしかして、あの時のこと、まだ気にしてたわけ?
見た目も込みって言っちゃったの、失敗だったなぁ。

受け入れるために、イクヤに勧められて、散々、タトゥーのことは調べたからさ。
もし消すことがあっても、元通りにはならないくらい、知ってたってば。



どう説明すれば、カンは納得するんだろう。
言葉が見つからなくて、ため息吐いたら、カンが泣きそうな顔して、こっち見てる。

ああ、ちゃんと言わなきゃ、カンがまた暴走するかなぁ。
こういうとこだけは、感情的になっちゃうのは、つきあいだしてから変わらないよね。



「確かに、俺はカンの肌が好きだったよ。
 羨ましかったんだ。俺にはないものだからね。
 でも、一緒にいるって決めたのは、カン自身が好きだからだよ。
 それくらいは、わかってもらってると思ったのに、俺の勘違いだったの?」

「...うん、わかってる。でも、なるべくマイナスはなくしてぇんだ。
 俺、ただでさえ、問題多いし、振り回してばっかだしよ」


言いながら、少しずつうつむき加減になりだした。


カンの顔を両手で包んで、じっと目を見つめた。
照れくさそうに横を向こうとするのを、がっしりとデカい手で押さえる。



「欠点を直そうとするのはいいことだけどさ。
 俺が気にしてないことで、気を回してグズグズ言うのは、カンらしくなくない?
 それに、何度も言ってるけど、俺は「好きで振り回されてる」んだってば。
 それがイヤだったら、一緒に住んだりしてないよ」


カンの顔が真っ赤になった。
自分らしくないって言われて、恥ずかしいのか悔しいのか。
あ、どっちもかな。


「深く考えずに突っ走って、お前傷つけてるなって。
 後になって気づいて、許してもらってばっかだったろ?
 ......なんでだろ、お前のことだけは、なんか後悔したりすんだよなぁ」



カンは、正直に話してるだけなんだけど、俺は最高に嬉しかった。

もしかしたら、「好きだ」「愛してる」より、嬉しいかも。
だって、「俺だけは特別」なんだって、ポロッと溢れたわけじゃん?

それって、本音っていうかさ。
無意識なところが、余計に嬉しいんだよね。




俺が、ニコニコしだしたから、カンが不思議そう。
それでも、少し考えて、自爆したって気づいたらしい。

また、顔が真っ赤になった。


「ああっ、もう。恥ずかしいこと、考えるなってば!」

「恥ずかしいことって、何?俺は、単純に喜んでるだけだよ。
 カンにとって、俺だけは特別なんだなぁって、さ」


俺の両手を振りほどいて、スタジオに逃げ込んでった。
中から鍵かけて、俺が入れないようにしてる。


こういうとこも、可愛いからいいんだけどさ。

落ち着くまでは、俺も晩御飯はおあずけかなぁ。
カンが無事に帰ってきたら、安心して、俺、すっごくお腹空いてるんだよね。


たぶん、カンもお腹空いてるはずだから、十五分も待てばいいか。
その頃に食べられるように、温めておこうっと。 




『お腹空いたよー。晩御飯食べようよ!』


十五分後、メッセしたら、カンがダイニングへやってきた。
まだ悔しそうだけど、空腹には勝てなかったらしい。


下手に喋ると、また籠城しそうだよね。
さっさと晩御飯食べなきゃ。

あ、抗生物質とかも飲むのかな?


「飲み薬も処方されてる?」

「いや、クリームとガーゼだけ」


普通の顔して質問したら、食べるのに夢中になって、カンも普通に返事してる。



さっきのを思い出して、つい、ニヤつきそうになっちゃう。
でも、ここはガマンガマン。



意識する分には平気なのに、無意識に愛情表現するのは、カンにとっては「負け」らしい。
俺は、すっごく嬉しいけど、負けず嫌いのカンには、屈辱なんだよね。


そういう意味なら、俺なんか、ずっと負けてるんだから、気にしなくていいって言ったら怒られた。
俺に負けるっていうより、自分自身に負けた気がするらしいんだ。



「知らねぇヤツの前で、ポロッと出したらマズいだろ?
 頑張って直してるとこなんだから、嬉しがったりすんなっての!」



...わかったよ。
俺も気をつけるから、機嫌直してくれないかなぁ。











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